自鳴琴

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7/15/2025, 2:19:17 PM

子供の頃、転入先の友達と帰り道
倒れていた雀を埋葬したことを思い出した。

近くの動物病院にも駆け込んだが、手遅れだった。

勿論誰にも言わなかった。

言葉にせずとも
お互いに二人だけの秘密だったから。

とても心優しい子で、再び土に埋めた後を見ては 
長い間手を合わせていた。

生まれて初めて自らの真心と向き合った瞬間だった。


あの時の雀は、どんな思いで旅立ったのだろうか。


『二人だけの。』

7/14/2025, 2:21:58 PM

幼い頃は、夏の扉が近づく度に胸が高鳴った。

夕暮れのなか伸びた影

盛り切った真っ白な雲

見るもの全てが新たな季節への合図のようだった。

瞬く間に過ぎたあの日の夏から、全てが変わった。

年々酷くなる暑さは目を逸らしたくなるほど鬱陶しい。

流れるように過ぎる日々をただひたすら待つだけ。


今日この日もまた

あどけない私がいた瞬間に帰りたいと強く願った。



『夏』

7/13/2025, 4:42:25 AM

風鈴の音が好きだ。

風鈴とは、言い換えれば夏の風物詩である。

風に吹かれて爽やかに音を鳴らすそれは、いつだって私を物語の主人公気分にさせる。

重々しくなく、軽やかに美しい音を響かせるのだ。

どれほど小さな存在であっても、私にはそれが広い空間を通じて脳内で響き渡っている。


嗚呼、今年も私を呼ぶ夏の声が聴こえる。