ふと、告白をしてみようと思った。
部活で知り合ったあの先輩。
ハッキリ好きという感情が湧いているわけではなかったけど、なんとなくで告白してみようと思ったので、した。
「好き、です」
パッと相手の顔を見ると、先輩は顔を赤らめて隠す。
「…ありがとう」
特にこれといった特別な言葉では無かったけど、私までなんだか顔が赤くなった。
あ、大好きだ。
好きだ、先輩。
今になって湧き上がる。
顔、見れない……
しゃく、しゃくしゃく、しゃく。
鮮やかな黄が足元にひかれている。
イチョウ並木のこの道は、この時期になると葉を沢山落として、何の変哲もないコンクリートを黄色の絨毯へと変貌させる。
そして、私はその道をゆっくり踏みしめて音を楽しみながら歩く。さながら気分は女王様だ。
いつものようにゆっくり、ゆっくり歩を進めていると、ふと銀杏が目に入った。
「イチョウは臭くて、大キライ。あなたの言ってることは分からないわ。」
はて?この言葉は誰から聞いただろう。その言葉を聞いて、幼かった自分は憤慨した、ような気はする。
こんな高飛車風な話し方、いたら覚えているような気がするのに、一向に言葉の主を思い出せない。
うーん。そんなに私にとって重要な人物でなかったのかもしれない。忘れよう。
「そういうところ、あなたも含めて嫌いって言ったの。まさか、私のこと忘れてるの?」
え?
『銀杏』
しんと静まる住宅街。
雪がひらひらと舞う。
どうせ、積もらないんだろう。
肩に徐々に染みができていくのも気にせず、道のど真ん中立ち止まった。
耳を澄ます。
自動車、自転車、人の声、鳥の声すら聞こえない。
私は一人だ。
誰も今の私は侵せない。
2人で珈琲を飲む。
飲み終わる。
食べ物を頼む。
食べ終わる。
「ねえ、お腹空いてるでしょ?」
「……さっき食べたよ」
「もう一品頼まない?」
「お腹いっぱい」
「なら、私が食べるまで付き合って」
食べ物を頼む。
食べ終わる。
飲み物を飲む。
日が暮れる。
相手は私を見ていない。
それでも、いい。
まだここにいて。
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『カフェ』
私は、セーターが嫌いだ。
モノにもよるけど、ちょっとカバンにかすっただけでビヨンと毛が伸びる。そして、それを誤魔化そうとすると毛玉ができる。毛玉を取ると、周辺の毛がモワッと広がる。その広がったところにカバンが……の繰り返しで気づけばボロボロ。私の心もボロボロ。
デザインや、あのゆったりとしたシルエットが好きだから買ってしまうけど、来年の冬まで持ち越せない。だから、毎年このシーズンに必ず一着買っている。
金の無駄、なんて友達にも言われた。
確かに、セーターは私には向かなかったんだーって諦めて、違う服着回ししたほうが得。絶対、得。
でもなあ、なんか諦められないというか。
私の"かわいい"と疼いた心に抗えないんだよねえ。
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『かわいいの魔力』