しゃく、しゃくしゃく、しゃく。
鮮やかな黄が足元にひかれている。
イチョウ並木のこの道は、この時期になると葉を沢山落として、何の変哲もないコンクリートを黄色の絨毯へと変貌させる。
そして、私はその道をゆっくり踏みしめて音を楽しみながら歩く。さながら気分は女王様だ。
いつものようにゆっくり、ゆっくり歩を進めていると、ふと銀杏が目に入った。
「イチョウは臭くて、大キライ。あなたの言ってることは分からないわ。」
はて?この言葉は誰から聞いただろう。その言葉を聞いて、幼かった自分は憤慨した、ような気はする。
こんな高飛車風な話し方、いたら覚えているような気がするのに、一向に言葉の主を思い出せない。
うーん。そんなに私にとって重要な人物でなかったのかもしれない。忘れよう。
「そういうところ、あなたも含めて嫌いって言ったの。まさか、私のこと忘れてるの?」
え?
『銀杏』
2/19/2024, 7:21:40 PM