しんと静まる住宅街。
雪がひらひらと舞う。
どうせ、積もらないんだろう。
肩に徐々に染みができていくのも気にせず、道のど真ん中立ち止まった。
耳を澄ます。
自動車、自転車、人の声、鳥の声すら聞こえない。
私は一人だ。
誰も今の私は侵せない。
2人で珈琲を飲む。
飲み終わる。
食べ物を頼む。
食べ終わる。
「ねえ、お腹空いてるでしょ?」
「……さっき食べたよ」
「もう一品頼まない?」
「お腹いっぱい」
「なら、私が食べるまで付き合って」
食べ物を頼む。
食べ終わる。
飲み物を飲む。
日が暮れる。
相手は私を見ていない。
それでも、いい。
まだここにいて。
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『カフェ』
私は、セーターが嫌いだ。
モノにもよるけど、ちょっとカバンにかすっただけでビヨンと毛が伸びる。そして、それを誤魔化そうとすると毛玉ができる。毛玉を取ると、周辺の毛がモワッと広がる。その広がったところにカバンが……の繰り返しで気づけばボロボロ。私の心もボロボロ。
デザインや、あのゆったりとしたシルエットが好きだから買ってしまうけど、来年の冬まで持ち越せない。だから、毎年このシーズンに必ず一着買っている。
金の無駄、なんて友達にも言われた。
確かに、セーターは私には向かなかったんだーって諦めて、違う服着回ししたほうが得。絶対、得。
でもなあ、なんか諦められないというか。
私の"かわいい"と疼いた心に抗えないんだよねえ。
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『かわいいの魔力』
体育の後に言語文化とかダメだって……
おじいちゃん先生ゆったり静かすぎでむり…
古文単語テストとか静かじゃん
寝るじゃんほんとむり……
うわやばい今寝てた
あ、やばい頭回んない
とりま空欄埋めないと……
あり、をりはべり…いま、いませ、違ういまそ……
違う何だっけ
ありをりはべりいま……
眠い…むり…
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『赤点ぴーす!!』
I think …
A.…it is better to get married early.
B.…it is better to get married late.
C.…it is better not to get married.
英語の授業で出されたこの質問。
結婚、つまり将来。将来なんて考えることが出来ないのに、この質問は「取り敢えず将来設計の一部として結婚を考えていると思うので聞きますね」という雰囲気をビシビシ醸し出しているので、私が異物になったかのような孤独感を味合わせる。
歩き回って他の人に意見を聞くという時間だから、聞き耳をたててみると、口で聞くよりも早く結果を知れる。
クラスの女子の殆どはAを選んでいるようだった。そんな予想の範疇を超えない答えに意識を飛ばしていると、ALTの教員が声をかけてきた。
「I think……it is better to get married late!」
定型文の質問を彼にしたら、ニコニコしながらそういった。定型文の質問が私にも返ってきて、私は思わずCを選んだ。私の答えを聞いて彼は大げさに驚き、
「why?」
と聞いてくる。スピーキングなんて苦手だ。そもそも、日本語でもなんて言えばいいか分からないのに、英語でものを言える訳が無い。ああ、無難にAにするべきだったと後悔していると、ALTが苦笑いをして会話は終了した。
なんだか、お前は人間じゃないと突き放されたような気がしたので、もっと嘘をつかないと馴染めないなと思う。
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『裏面を見よ。』