心に決めた人がいた。
彼と私は、赤ちゃんの頃から一緒にいた幼馴染。
幼い頃は大きくなったら結婚しよーなんて約束もした仲だ。
だが、彼は私たちが小学3年生の頃に転校してしまった。
「必ず、迎えに来るから」
そう約束して、彼は遠くへ引っ越して行った。
ある時までは手紙や年賀状でやり取りしていたが、いつの間にか連絡を取り合うこともなくなってしまった。
彼は私のことも忘れてしまっただろう。
そう思いながら日々を過ごしていた。
高校生になって彼氏を作ってみたりして。
でもやっぱり幼馴染のことが忘れられず、長続きはしなかった。
大学進学をきっかけに、私は上京した。
新しい環境での新生活。
私はいつしか彼のことを忘れてしまっていた。
毎日勉強して、バイトして、友達と遊んで、時が来てからは就活して…
お陰で、いい就職先も見つかった。
忙しくも充実した大学生活は一瞬で終わったように感じた。
卒業式の帰り、駅に向かって歩いていると、懐かしい姿が見えた。
「迎えに来たよ、卒業おめでとう」
そういう彼の手には大きな花束。
「もう…遅いよ…」
私は泣いていたと思う。
私の心は、やっぱり彼のことを忘れられずにいたんだ。
私と彼は手を繋いで駅のホームへ向かった。
「My Heart」
友達が羨ましい。
友達の旦那はよく稼いできてくれるみたい。
うちの旦那の稼ぎは低いから、私も働かなきゃいけない。
友達は専業主婦。
私も専業主婦がしたくて結婚したのに。
旦那はよく家事もしてくれて、仕事が終わったらまっすぐ帰ってきたり、私が行きたいと言った場所も覚えてくれてて連れて行ってくれるし、誕生日や結婚記念日も忘れずに一途に愛してくれている。
でも、友達が羨ましい。
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友人が羨ましい。
私は結婚しても仕事したかったのに、旦那に頼まれて仕方なく主婦をしている。
稼ぎはいい夫だから、生活には困らない。
夫は主婦なんだからって家事育児は全て私任せ。
そして何より、私の稼ぎがなくて簡単に出ていけないのを良いことに不倫をしているようだ。もう何年も一緒に夕食を食べていない。結婚記念日はおろか、誕生日もずっとお祝いしてくれていない。
だから、友人が羨ましい。
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私たちって、ないものねだりね。
なんて、会話をしながらカフェでコーヒーを飲んだ休日の午後。
「ないものねだり」
私はすぐ周りの人に合わせてしまう。
私の周りは、いわゆるギャルの子が多くて、変わったメイクをするのが私たちの間での流行り。
変わったメイクをしてみんなで街へ遊びに行くのだ。
私は変わったメイクが好きではないし、なんでもシンプルなものが好きなのに、ハブられるのが怖くてつい周りに合わせてしまう。
「ほら、何見てるの?新色出てるよ!早く買って行こう?」
友達にそう声かけられ、また好きでもない変な色の口紅を買ってしまった。
なんてお金の無駄遣いなんだろう。
ハッキリ好きじゃないって言えれば、楽なのにな…。
それでハブられるなら、それまでの関係だったと思えばいいって言われればそうだし、そんなこと分かってるけど、独りは怖い。
もう、あんな思いはしたくないから。
私は独りで過ごした幼い頃を思い出し、友達と遊びに行く為に変わったメイクをするのだった。
「好きじゃないのに」
「本日の天気予報です。今日は全国的に晴れるでしょう。ところにより雨が降るでしょう」
天気予報がそう伝えている。
ところによりってどこよとツッコミつつ、天気予報を見て安心する。
私の住む地域は一日中晴れるみたい。
今日は、幼稚園児の頃から付き合いのある親友とピクニック。晴れてくれなきゃ困るのだ。
私はお弁当を作って、レジャーシート持って…など必要なものをお気に入りのリュックに詰め込む。
持っていくものは全部揃った。
親友との待ち合わせ。彼女はいつも私より少しだけ後に来る。
「ごめ〜ん!待ったぁー?」
彼女のいつものお決まりの言葉。
「ううん、全然待ってないよ。早く行こー!」
こっちは私のいつものお決まりの言葉。
私と彼女は性格は正反対で、好きな人のタイプや趣味も違うから、好きな人や彼氏が被ったこともないし、趣味の話もできないけど、一緒にいると落ち着くのは彼女なのだ。
目的地の公園に着き、レジャーシートを広げる。
ちょうど桜が咲き始めたようで、桜がポツポツと咲いているのが見える。
彼女は桜を見てはしゃぎ、私はそれを見て一緒に笑う。
「ほんと、いつまでも子どもだね(笑)」と言うと
「だって、綺麗なんだもーんっ!」とニコニコしながら言う。
そんな話をしていると、予報外の雨が降り始めた。
「いやー、今日は降らないって予報だったのに」
そう言う私に対して彼女は、
「いいじゃん!たまの雨も楽しもうよ〜!晴れたら、虹見れるかも知れないよ?!」と言う。
私は彼女のこういう明るいところが一緒にいて楽しいのだと、また実感させられた。
「ところにより雨」
長かったけど、ようやく会えた。
君の声を聞いた時は感動して泣いてしまった。
これからどんな子になるのかな。
どんな未来を歩むのかな。
十月十日は長かったよ。
ずっと彼と2人で待ってたんだから。
私と彼にとって、特別な存在。
どんなことがあっても、君を守るから。
私もまだ未熟だけど、一緒に成長していこうね。
大好きな娘へ。
「特別な存在」