長かったけど、ようやく会えた。
君の声を聞いた時は感動して泣いてしまった。
これからどんな子になるのかな。
どんな未来を歩むのかな。
十月十日は長かったよ。
ずっと彼と2人で待ってたんだから。
私と彼にとって、特別な存在。
どんなことがあっても、君を守るから。
私もまだ未熟だけど、一緒に成長していこうね。
大好きな娘へ。
「特別な存在」
どれだけ頑張っても認めてもらえなかった。
褒めてほしくて100点取ったテストを見せても、当たり前だと言って褒めてくれない。
作文で優秀賞だった時も、絵のコンクールで入賞した時も、運動会で1等賞だった時も。
私はただ、お母さんに褒めてもらいたかった。
認めてほしかった。それだけなのに。
ずっと頑張ってきたのが、バカみたい。
なんで出来の悪い弟ばかり褒めるの?
やっぱり同性の私より異性の弟の方がお母さんにとっては可愛いものなのだろうか。
私はもう、認めてもらうのも褒めてもらおうとするのもやめた。
なのに、どうして?
社会人になって、家を出てから私を急に褒め出すの?
弟が引きこもりになったから?
いまさら、もう遅いよ。
私はもう二度と、実家には帰りません。
「バカみたい」
周りに誰もいない。世界は終わってしまったのか。
辺りを見回すと、荒廃した世界が広がっている。
周りに人や動物はおろか、それらの死体すらない。
そんな中、前方に見知らぬ男が倒れているのが見えた。
僅かな望みをかけて、声をかけてみる。
どうやら意識はあるようで、これといった怪我もしてないらしい。
「ん……ここは…どこだ…?」
男はぼーっとしながら周りを見渡している。
私もここがどこなのか、さっぱり分からない。
でも一つ分かっているのは、私はこの見知らぬ男と二人ぼっちってこと。
これからどうしていこうか…なんて、考えながら、私と男は歩き始めた。
数日間一緒にいて、お互い色々なことを話した。
自分がどこの生まれで、自分の好きな物の話や嫌いな物の話、これまでどんな人生を歩んできたのか、など。
話していくうちに、少しずつではあったが、お互いに心を通わせるようになった。
男なんて生き物は嫌いだったのに、不思議な気分だ。
二人で一からこの世界を作り上げていくのも悪くないのかも知れない。
「二人ぼっち」
私は今、夢を見ている。
ここは、オモチャの国。
子どもの頃から憧れだった、シルバニアの世界にいる!
色々な動物たちがいて、色々なお店があって、ずっと歩いてても飽きないし、疲れない!
私はうさぎの女の子と仲が良いみたいで、今はうさぎちゃんとブティックに来てるよ。
可愛い服たくさんあって迷っちゃうなぁ…
その次は、海辺のすてきなレストランでご飯。
海辺だからやっぱり海鮮が有名なのかな?
食べ終わったら今度はパン屋さん!
甘いものは別腹だもんね。
パン買ったら今度は〜!
…あ……れ………?
なんかだんだん意識が……
あぁ…夢が醒める前に、うさぎちゃんの住むあかりの灯る大きなおうちに行きた…い……な………
「夢が醒める前に」
「今月末、会えるかな?」
遠距離恋愛中の彼からLINEがきた。
久し振りに会える。約3ヶ月ぶりに会えるんだ。
私は、「もちろん!」と返信した。
どんな服にしようか?
どこへ行こうか?
まだ半月はある。
今からたくさん考えよう。
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約束の日、とびっきりのオシャレをし、彼と待ち合わせしている駅に着いた。
あと10分で彼が来る。
彼と私は付き合って3年、出会った当初から遠距離恋愛をしているので、物理的距離が離れていることに慣れてはいるが、やはり会えるのは嬉しいものだ。
インターネット上で知り合った私たちが初めて会ったのは3年半前だった。
共通の趣味のオフ会が開催され、そこで初めて顔を合わせた。
私は話していくうちに惹かれていったが、彼は一目惚れだったようで、告白していいものか随分迷ったと後から聞かされた。
そんなこと考えないで、告白してくれても良かったのにね。なんて。
そんなことを考えていると、彼が乗る電車が見えてきた。
もうすぐ、彼が降りてくる。
いつもすぐに私を見つけて、ワンコのように駆け寄ってくる。
そんな姿を想像して、私はクスッと笑ってしまった。
「胸が高鳴る」