こかぴ

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3/17/2024, 10:13:20 AM

「…ごめん、別れよう」

久し振りに会った彼女が、涙目でそう告げた。

「…わかった、五年間ありがとうな」

俺はただそう伝えた。

「うん、今までありがとう。またね」

そう言って少し小走りで去っていく彼女の後ろ姿を眺める。
俺は絶対泣かない。

だてに五年も君の隣にいたわけじゃない。君のことは何でも知ってる。
君は嘘をつくのと隠し事が下手で、泣き虫で、甘えん坊で、笑顔が可愛くて、優しくて…
俺にはもったいない彼女だ。


どんな姿の君も愛する自信がある。
例え痩せ細って、黒髪のロングヘアーが全部抜け落ちても。

だから、近いうちお見舞いに行くから、また笑顔を見せてくれよな。



「泣かないよ」

3/17/2024, 9:40:49 AM

音がする。

新居に入居してから半月。
ピッタリ1時になると、変な音が聞こえるのだ。

ここは5階建マンションの2階。
もちろん、他の住民も生活している。
周りの住民の発する音の可能性もある。

ただ、違うのだ。
他の部屋から聞こえるという感覚ではなく、私が暮らしている部屋の中から聞こえる。

ワンルームなのだが、浴室の方から音がする。
浴室には窓があり、風の可能性もある。
だが毎日ピッタリ1時にのみ、変な音が聞こえるのはおかしいし、明らかに単純な風の音ではない。

怖いと思いながら、音が聞こえる時間に浴室を覗いてみた。
窓を叩く手が見えた気がする。

「えっ」

思わず、声を出してしまった。
その手はスーッと消えた。

それ以降もあの音はまだ聞こえるが、もう見に行く勇気はない。
ここは2Fで、浴室の窓がある位置に人が立てるスペースはない。

アレを見てしまってから、音の鳴る時間が少し長くなった気がする。

私はただの、怖がりなのだろうか。



「怖がり」