Open App
5/13/2025, 9:59:32 AM

「……家、かな?」

君はしばらく悩んでから、真面目な顔でそう答えた。僕らは顔を見合わせて、それから「ズルじゃん」とケラケラ笑った。
季節は夏だった。

遅くなった帰り道、何人かの友達に手を振ったあと、たまたま同じ方向。いくつかの偶然が重なって、僕は今、君の隣を歩いている。
夏でも夜はすこしひんやりとして、吹く風が頬に心地よかった。
家に帰って布団に潜ったら、君は忘れてしまうような他愛もない話をいくつかして、そのなかの話のひとつだった。

「無人島にひとつ持っていくなら?」

よくある話題に君は真剣に悩んでくれて、その回答にふたりで笑い合う。
こんなことで、こんなに笑っちゃう。ちょっと悔しいのに、ずるいよ。息があがって空を仰ぐ。ああもう、月がきれいだ。

「無人島にひとつ持っていくなら?」

僕は言えなかった。
ずるいのは僕のほうさ。

すこし湿った夜の空気も、風に揺れてた草のにおいも、虫かカエルかわからない音色も、君の笑顔も、この熱も。
きっとずっと忘れないよ。
意気地がないから今日の思い出を切り取って、きっとずっと大事にして、いつか答えの代わりに持っていくよ。



「ただ君だけ」

4/20/2025, 2:48:21 PM

生まれたときから続いてるこの煌めきが
今もわたしを導いていて

特別じゃない
でも、この道の先に
わたしを特別と呼ぶあなたがいるから

行こう 行こう

願わくば、
その道すがらわたしも
誰かの夜闇を照らせたならば

「星明かり」

3/19/2025, 5:36:56 AM

右上にちょん、こっそり書き足す
頭の先からしっぽの先まで

「大好き」

12/29/2024, 8:30:10 AM

こどもの頃は大人のまねして、
「良いお年を」なんて言ってみた

大人になったらこどものふりして、
「またね」って言いたくなった

年を越える瞬間、
ぼくはきっと地球にいないよ
跳ねる心のままきみに手を振る

もういくつ言えるかな
またきみに会えるかな

またね またね

「冬休み」

11/5/2024, 10:47:15 PM

途方に暮れて立ち尽くすことしか
できなかったのに
隠した本音もごめんなさいも
言えなかったのに

僕の耳は、隔てた壁の壊れる音を聞いた
ひび割れた隙間からのぞいたら
君の笑う顔が見えた

「一筋の光」

Next