「……ふふっ、好きだよ。」
微かな灯りに照らされた君は笑みを浮かべる。
僕は知っている。それが本物ではないということも、刹那的なものであるということも。
僕の肩に添えられたしなやかな手も、溢れる吐息も、僕のものだと信じていたい。
君は知っている。
自分に向けられる熱を帯びた僕の視線も、その奥に隠された不安定で黒い想いも。
君はいつもそう。
甘ったるい言葉を吐く唇とは裏腹に、君の瞳は目の前に居るはずの僕を捉えてはいないんだ。
「好きだよ。」
ほら、また言う。君はそうやっていつも。
「……僕も好きだよ。」
ほら、また言う。僕はその度にいつも。
〝暗がりの中で〟
扉にかかったアンティークなベルが身体を揺らす。
心地のいい音と共に、紅茶の深い香りがお出迎えしてくれた。
「いらっしゃいませ。」
お待ちしておりました、と柔らかい表情を浮かべるマスター。
森の中の秘密の紅茶屋さん、そんな雰囲気を纏う素敵なお店だ。
まるで童話の世界に飛び込んだみたい。
「今日はどれにいたしましょう?」
本当はわかっているのに尋ねるなんて、マスターもなかなかの曲者である。
「おまかせで。」
今日は少し悪戯に返してみた。
「ふふっ、かしこまりました。」
マスターは目を細め、解けたエプロンの紐を結い直しながら、キッチンに戻って行った。
何か良いことでもあったのだろうか、陽気な鼻歌が聞こえてくる。
そうこれは、紅茶の香りが彩ってくれる、そんな素敵なひとときの話。
〝紅茶の香り〟
君と僕のあい言葉。
合言葉は「おはよう」
哀言葉は「またね」
愛言葉を交わせる日は来るのかな、来てほしいな。
〝愛言葉〟
本当におバカで、見ていて飽きない君。
一緒にいると、まるであの頃のように全力で笑える。
いつも私の分の飲み物まで持って来てくれたり、ゴミを捨ててくれたり……そんなさりげない優しさに感謝しています。
こちらが心配になるくらい抜けている君だけど、実は根はしっかりしているんだよ。
何事にも恐れず挑戦するその勇気、本当に素敵だと思う。
おっちょこちょいだけど、いざという時に頼れる君。
素敵な友を持ったよ、本当にありがとう。
大好きです。
〝友達〟
じゃあね、と告げる君。
その君の瞳に僕は映っていない。
それを知っているから、わかっているから。
情けない期待を隠した「またね」を僕は返すんだ。
〝行かないで〟