扉にかかったアンティークなベルが身体を揺らす。
心地のいい音と共に、紅茶の深い香りがお出迎えしてくれた。
「いらっしゃいませ。」
お待ちしておりました、と柔らかい表情を浮かべるマスター。
森の中の秘密の紅茶屋さん、そんな雰囲気を纏う素敵なお店だ。
まるで童話の世界に飛び込んだみたい。
「今日はどれにいたしましょう?」
本当はわかっているのに尋ねるなんて、マスターもなかなかの曲者である。
「おまかせで。」
今日は少し悪戯に返してみた。
「ふふっ、かしこまりました。」
マスターは目を細め、解けたエプロンの紐を結い直しながら、キッチンに戻って行った。
何か良いことでもあったのだろうか、陽気な鼻歌が聞こえてくる。
そうこれは、紅茶の香りが彩ってくれる、そんな素敵なひとときの話。
〝紅茶の香り〟
10/27/2023, 10:34:37 AM