「今日は大量の流星群が降り注ぐ日です。皆さん、願い事を星に届けましょう!」
ピッ───
朝からそんなニュースが耳に入る。
「おばあちゃん、ほんとに流星群降るんかな」
「…昔もよくあったのう、星に願いを伝える日が。」
「それ、流星群じゃなくて普通の星じゃないん」
「ちゃうと思うがな、」
「ふーん。てかもう学校行かんと!いってきまーす!」
田舎で育った私は、普段から星をよく見ていた。
夏は特に蒸し暑くて蝉の鳴き声と一緒に星が輝いてたのをよく覚えてる。
〈皆ー静かにしろー。
今日はな、転校生が来ている。入ってこい〉
「転校生!?」
「どんな子なんやろ」
「女子!?男子!?」
ガラガラッ___
その瞬間、綺麗な顔立ちをした生徒が教室に足を踏み入れた。
『神奈川県から転校してきた春風龍輝です。よろしくお願いします。』
「何だよ男かよー」
「まって、超イケメンじゃない!?」
「やばーい!私席隣がいい!」
「男はお呼びじゃねえっつの」
皆がざわつく中、私は密かに心を奪われていた。
あんなにかっこいい人、見た事ない…
そう思いながら、私は彼をじっと見ることしかできなかった。
〈はい静かに。じゃあ春風くんの席は…あそこかな〉
先生があそこ、と指を指した先には、私の隣の席が……ではなく私の前の席だった。
「よろしく、イケメンさんよ」
『よろしくね。ありがと笑』
前二人の会話が微笑ましく聞こえてくる。
「おい、夏那。お前の隣空いてるからって期待したべ」
そう喋りかけてきたのは春風くんの隣の席の矢沢だ。
幼稚園からの幼馴染で普段からよく話していた。
「はぁっ!?うるさいなー、お前だって桜ちゃんと隣なれなくて悔しがってたくせにー笑」
「だから俺はもう桜ちゃんのこと好きちゃうって…!」
「じゃあ前言ってた好きな人って誰なんですかー?」
「お前なっ…!言うわけないやろ!!」
『笑笑、2人は仲良しなの?』
「っえ、」
優しく笑いかけてくれた春風くんに戸惑う私。
「あー春風くんは知らんと思うけど俺ら幼稚園から一緒やねんよ。腐れ縁てきな」
「矢沢とクラス離れたことないよね、いい加減ついてくんなよほんま!」
『へー笑じゃあ仲良いんだ?』
「いや!仲良くないよ全然。こいつが変なちょっかいばっかかけてくるだけー、」
「はあ?お前だろ夏那!かまちょなくせに」
「違うしー!ごめんね春風くん、気にせんといて!」
『わかったよ笑…というか、君名前なんて言うの?』
春風くんが自然と私の名前を聞く。
「あーえっと、恋夏那!苗字珍しいってよく言われるからそれで覚えて笑」
『へー、"夏那さん"ね。』
「え、!?ああ、無理して名前で呼ばんくても大丈夫やけど、、」
※センシティブな表現が含まれています。激しい内容にはしていないので見たい方だけ見てくれると嬉しいです。
「じじゃーん!」
サンタのコスプレをしてはしゃいで彼に見せる私。
「…買ったの?」
そんな彼はいつものように平然としていて、私のこの格好を見て一緒に楽しんでくれるかと思っていた私は完全に唖然としていた。
「え!?ちょっと、せっかくクリスマス衣装着たのにそれだけ!?」
「まあ、イブだけど別に普通の平日と変わんないからね」
相変わらず冷めた彼に、私はこう言い返す。
「涼私の格好見てさ、なんか、ほら!ないの?」
「えー、まあ可愛いは可愛いけど、それはいつもだし」
「ちがくて!!なんか、なったりはしないの、?」
「笑え?」
私が恥ずかしそうに聞くと涼はニヤニヤしながら私にこう言った。
「なに、俺がそんなんで興奮すると思ってんの?笑」
「ち、ちがうし!!単純に男の子はなんないのかなーって気になっただけ!」
「ごめんだけど俺、それで興奮してたら夜街歩けないから」
「そうじゃなくてさ、彼女がサンタコスしてるんだからちょっとはなんかあってもいいじゃん!」
私が少し拗ねたように言うと、涼は私の耳元で言った。
「なに、笑なんかって、なんかしたいの?」
「っ…」
一気に耳が赤くなる私を、笑いながら見る彼。
「耳も身体も熱くなってるね。暑いの?笑」
「ち、ちがう!ちょっとびっくりしただけ、離れて」
「なんでよ、せっかく可愛い格好してるんだから近くで見たいじゃん。ね?」
「ーー!いいから!」
彼の思惑通りな気がして、嫌気がさす。
「もうこんなんなってるよ?おまえ」
「やめて、」
「俺の、当ててんのわかる?」
「、、わかんないから」
「えー笑こんなに当てまくってんのに」
「ねえ、涼興奮してる?」
「してるよ、めっちゃ」
そう言いながら彼は私と唇を重ねる。
「…涼っ、」
「なに今更恥ずかしがってんの笑キスくらい普通でしょ」
完全にそういう雰囲気になった私たちは、またいつもと同じ行為を繰り返す。
「涼、もう腰痛い、」
「えー、俺はもっとしたかったのにな。こんな可愛いサンタさんにめちゃくちゃできるんだもん」
「やめてよ」
「照れんなって」
「涼さ、もうすぐイブ終わっちゃうけどだれからも誘われてないの?明日笑」
「うるさ。おまえのために空けてたんだよ」
「うそつけ」
「ほんと」
涼のまっすぐな目を見て、私はまた好きになる。
「涼」
「ん?」
「好きだよ」
「なに急に笑」
「クリスマスイブだから特別」
「おまえしてるとき毎回好き好きうるさいけどな」
「もう!いわないでよいちいち!」
「はいはい笑俺も好きだよ」
彼からの「好き」をもらったとき、時計がちょうど0時になった。
"イブの夜"
私は、人を愛すことができないんだと思う。
どうしてかって、うーん。長くなるな
けど簡単には言えないこと。
私って仲良くなった子をすぐに切り捨てたりするし、新しくできた彼にも優しくなんてできなかった。
小学校4年生の頃、仲良くなった女の子がいた。
その子は明るくて優しかったし太陽みたいな子だなあって最初は思ってた。
けど、知っていくうちにどこか儚くて、切ない子だと思った。
悩みとかそういうものを打ち明けたりは決してしなかったけど、幼いながらに私も「ああ、何か抱え込んでるな。この子は。」って思った。
そのくらい、その女の子はいい意味で分かりやすかったしいい意味で大人だった。
私にきっと相談したくなかったんだろうなって。
けど本当は助けて欲しいのかなーって。
でもそれに気づいた頃には、もう遅かった。
彼女は、病院で自殺した。
理由は今でも分からない。
けど、その子の両親から聞いた話では彼女、凛は元々心臓が弱くて病気だったらしい。
そんな中、小学2年生の頃にこっちに転校してきて、慣れない環境と自分の患う病のせいで心のタンクから不安が溢れてしまった。
けどそれを伝える勇気が凛には無かった。
私から見た凛は皆の前では明るくてクラスの中心のように思えた存在だったけど、心の奥底では自由になりたかったんだろうなと今では思う。
昔馬鹿みたいに海の中ではしゃいだとき、凛の表情が凄く眩しかったのを覚えてる。
それは、クラスの真ん中で笑顔で話してるときの凛とは違って。
本当にやりたかったことはあれなんじゃないのかな。
凛が本当にしたかったことってああいうことだったんじゃないのかな。
なんて、今考えても遅いけど。
海で服もびしゃびしゃだし、髪も濡れてたけど、凛が心から笑いかけてくれたのはあの日が最初で最後だった。
凛が病院で自殺をする前の日に、私は凛からのお見舞いの誘いを断った。
今でも覚えてる。まだ小さな携帯に「そっか」と悲しそうに送られてきたメッセージを。
あの日は私の誕生日だった。
仕方ないといえば仕方なかった。
両親からお祝いをされて、ケーキを買いに行くところだった。
幼い私には、病気を患っている友人のお見舞いがどれだけ重要かだなんて分からなかった。
私は、親友より自分を優先した。
さっき仕方ないと言ったけれど、あれは嘘だ。
もし私が彼女のお見舞いに行っていたら?
「今すぐ行く」と送っていたら?
次の日に、凛は自分で自分を傷つけることは無かったかもしれない。
私がもっと凛の存在の大切さに気づいていたら。
凛と出逢ったのがあと少しでも大人だったら。
彼女は、生きる道を選んだかもしれないのに。
私はその後悔でいっぱいになった。
凛の両親からの話なんて、そのときは右から左だった。
凛が死んだ悲しさと悔しさで頭がいっぱいだった。
凛の悩みに気づいていたのに
心の底の気持ちに私だけは気づいてあげれていたのに
どうして私は凛を選ばなかったんだろう。
今考えても、もう遅い。
彼女の火葬は、とっくの昔に終えたのだから。
私はそこから、仲良くなった子をすぐに捨てたり関係を切ったりしてきた。
中学生になって彼氏が出来ても、そのときの恋愛なんて所詮子供の遊び。なんて大人な考えをしてた。
だから、自分から彼に別れを告げたり急に連絡を断ったりした。
高校、大学と生きてきたけど、私の心の中から凛が消えたことは一度もない。
けどその代わり、私は人を愛すということができなくなった。
でもそれって悪いことでも良いことでもない。
だって人はいつか裏切るし、あの時みたいに、急に目の前から居なくなったりする。
だから人を愛してしまったらもう最後なんじゃないかって私は思う。
だけど、人を愛さないこともまた悲痛だったりする。
結局、この話に結論なんてない。
きっと私が死んだとしてもこの話にピリオドがつくことはないと思う。
いつまで経っても、とりとめもない話だ。
眠れないほど彼を思い出す。
「君が一番」
「好き」
「一生そばにいて」
「幸せにする」
色々な言葉がありますが、私はこの言葉がきっと1番の愛言葉だ思います。
そしてこの言葉は、全国誰が聞いても必ず分かります。
「愛してる」