彗星

Open App
5/25/2025, 6:18:20 PM

私が病院で死ぬ頃、雨が降ってた。

私は昔から人気者だった。
いつもクラスの中心にいて、いつも笑ってて。
けど、そんな人生にももう疲れた。
限界だった。ずっと

私が出会った友達の中で、一人面白い子が居た。
小学四年生の時だった。
「私は藍音!よろしく」
律儀に挨拶を交わしてくれたその子は藍音といって、よく喋る女の子だった。
藍音は、私のことをしっかり見ていてくれた。
他の人とは違って。

皆みんな、私の周りに集まっては私と話をしたがる。
けど、それが本当に私に対しての仲良くなりたい気持ちなのか、私には分からなかった。
けど藍音は私の奥底の気持ちに気づいてくれていたと思う。そう信じてる。
藍音と海で馬鹿みたいにはしゃいだとき、私は初めて自分を偽らずに笑顔で人の目を見て話せた。
藍音が本当の私を引き出してくれた。
誰も気づかない、気づくはずのない私の本音を理解しようとしてくれてた。
私は小学二年生の頃にこっちに転校してきた。
昔から好かれるタイプではあった。
誰からも可愛がられて、大事にされる。
前の学校でもそうだった。皆の中心の的だった。

けど

昔から患う心臓の病気のせいで、皆から常に見られることが怖かった。
皆から触れられたり、近くに寄ってこられたりすると脈拍がどんどん上がる感覚がしてた。
誰にも理解されないこの病のおかげで私は何度も苦しめられた。
もし私が「心臓が弱い」なんて伝えてしまったら皆離れるかもしれない。
「それはそれでいいんじゃない」?「病の方が重要」?そんなの、偽りでしかない。
私は人気者だ。
私は、皆から好かれている。
それは事実が証明してる。
そんな浅はかな考えだった。
だけど、藍音が私を変えてくれた。
藍音と海の中で遊んだときの私がそう言ってる。
私はきっと、藍音の前では病を気にせずに過ごせる。
藍音にもしさっきの私の考えを話したら、笑いながら
「皆が離れるわけないじゃん。凛のことが皆好きなんだから」って言ってくれると思う。
私は、藍音と居たらもしかしたら病気が治ってその内本当の私として元気に生きれるかもしれない。


翌年の6月6日、私は死んだ。
前日は、藍音の誕生日だ。
「おめでとう」すらも送れなかった。
梅雨でどんよりとした空気の中私は入院していた。
治療も、順調なはずだった。
上手くいけば、本当に私は病気が完治して生きていたかもしれない。
けど私は生きなかった。そんな選択肢、私にはなかった

「もしよければ、お見舞いに来てくれない?」
点滴が刺さった腕で必死に文字を打った。
『ごめん』
それが、藍音の返事だった。

別にそれが私の死因なわけじゃない。
けど、そうか。
やっぱり私を1番として考える人は誰1人いない、居ないんだ。
皆には皆の1番がいて。
私は、誰の一番にもなれない。
藍音なら私に会いに来てくれるかも、と、勝手に期待してた。
私の中にいる本当の私を理解してくれてる藍音なら、私からの誘いにものってくれると思ってた。

そのとき、私は混乱していた。
完全に頭がごちゃごちゃだった。
藍音の1番じゃないこと
病気が治ったら生きれるかもしれないこと
でも、病気が突然悪化するかもしれないこと
だれもお見舞いに来たいと思わないこと
母と父はもう病気の娘にきっと興味が無いこと

全てがもう、嫌になってた。
終わりにしたかった。

だから私は病院で首を吊った。
夜、雨は土砂降りだった。
けれど、何故か優しくそしてどこか冷たい雨音だった。
今なら私が泣いても雨で誤魔化せられるかもしれない。
そんな馬鹿なことを考えながら私は
自分を自分の手で
殺した。
もし私が死んだら、

誰かの一番に──────



※このお話は、去年の12/18の作品のもう一つのお話です。もし良ければそちらの方も読んでみてくださると嬉しいです。

5/18/2025, 6:01:06 PM

まってと言ったところで、まってくれないのは知っている

3/25/2025, 8:22:25 PM

あれは、いつやったけ 。?

騒がしかった
音が賑やかで、弾んでて
人が居て
あれ、あの人なんか見た事ある、
思い出せんさ
なんか、

変や感じや。



ピーッピーッ───





ああ、そうや
わたし、死んどるんや 。
もう周りの音すらきこえてこんし、
わたしあほみたいに寝とるんやろな
はよ起きんと



もう遅いんか。
今、気づいても










記憶

3/24/2025, 8:17:41 PM

あの子がまだ小学二年生の夏、私は娘を亡くした。

暑かった。
まだセミが鳴いてる頃で、風鈴が鳴ってた。

『一応捜査は進めているんですが、、どうしてもまだ…』
「…そうですか、」

娘は、事故として警察に判断された。
だけどその根拠となるものは一切見つからなかった。
娘がいつものように学校に向かう途中、車に跳ねられたように道路の真ん中に倒れ込んでいる姿で発見された。
朝は人が通らないような路だったから、警察に通報が入ったのは昼間だった。
「小さな女の子が倒れています!」
そう連絡をしたのは通りすがりの男性。
その頃にはもう娘の体は冷たかった。
けれどまだ、娘の身体中から血が溢れ出ていた。

私は、娘のランドセルが赤く染っていくのをただ見届けることしかできなかった。

近くの防犯カメラや発見者の男性、周りにある店の人に話を聞いたり見たりしても全てが水の泡で終わった。
『ニュースに取り上げられることを許可…ですか』
「はい。もう落ち着いてご飯も食べてられないんです。」
『ニュースに取り上げられたからと言って犯人がわかったりするとは決して言い切れないんですよ?大事になったり、もしかしたらお宅に報道関係者が訪れたりなんてことも…』
「別にいいんです。もう既に街中にポスターや貼り紙を貼って犯人を早く捕まえれるようにしているので」
『……分かりました。』

〈速報です。今月の22日に小学二年生の少女が原因不明の状態で死体で発見されました。警察は事故とみて捜査を進めております。〉
《やだ、原因不明だって、あんたも気をつけなきゃね》
《まあお気の毒に…原因不明で事故って一体なんなのかしら。 。》
〈そして、亡くなった娘さんのお母様に取材をさせていただきました。その様子がこちらです。〉

〈原因不明ということですが一体、、〉
「私も分かりません。わからないんです。車に跳ねられたのか、でも防犯カメラには何も映ってないし、、もう何がなんだか、、」
〈お気持ちお察し致します。お悔やみ申し上げます。〉
「ありがとうございます。この報道を通してより多くの方に知ってもらい、そして子供たちに注意喚起をどうか…」

《本当に辛いでしょうに、、大変ねえ》
《可哀想よね本当。。はやく解決しないかしら》
《お母さんはきっと立ち直れないわよね…》


4年後───

〈速報が入りました。20‪✕‬△年の○月22日、少女殺害事件について現在犯人が発覚したとのことです。〉



『何故こんなことをした!』
【……】
『応えろ!!何故こんな世間を巻き込んでまでお前はっ…!!!』
【……だって、】
「あの子が悪いんです!!!全部、全部……テストでは100点を取らないし、女手一つで育ててるのに余計なことしかしない!!私が殺して何が悪い!!!」
『お前…お前は、あの子が死んで悲しくないのか!!一人の若者の命を犠牲にしてまで自分を救いたいか!!世間を、全国民を荒らしたいか!!!』
「あんただって!!随分協力してくれたじゃない(笑)気づきもせずに、隣の犯人を置いて長いことお遊びの推理をしてたじゃない!それなのに今になって私を責めて何がしたいのよ!(笑)」
『……俺は、信じたかった。
俺は長いことこの職をしているが、原因不明でまるで事故のように少女が倒れてるのは初めてだった。
そりゃお前のことだって疑ったさ!何度も何度もな。
だが、お前が泣きながら寝る間も惜しんで街中にポスターを貼って、ニュースの取材1つも断らずに娘のいた頃の話をするのを1番近くで見て、信じたいと思った。』
「っ、、」
『誰が母親だと思う?誰が自分の娘を殺す?事故に見立てた原因不明の事件の犯人が、母親だと真っ先に疑う奴がどこにいる?あの涙はなんだ?お前の俺にみせた、あの子にみせた、全世界にみせた涙はなんだ??』
「信じたあんたが悪いんじゃな…」
『ああそうだ。だけど今こうしてお前がしたことが明らかになった。お遊びの推理も、捜査も、もうお終いだ』
「……」
『近くの店の防犯カメラを予め違うものに偽造したのも、わざと通行人が居ない道、時間帯を狙ったのも、泣いて同情を誘おうとニュースに取り上げられたのも、全てお前の作戦だな?』
「…ええ、」
『思惑通りだったよ。お前の手のひらで馬鹿みたいに転がされてた。だがもう芝居は終わりだ。』
「、、そうね」



〈犯人は、懲役12年の判決が下されました。〉

〈もう二度と、この事件を風化させてはいけません。〉
『もう二度と、この事件を風化させるなよ』




この時、あの頃と同じ、風鈴の音が聞こえた気がした。

3/6/2025, 7:34:53 PM

一通の手紙が届いた。
「お元気してますか?」
たったそれだけだった。

「なに、この手紙…」

私が神社の掃除をしているとき、風にのせて、ある手紙が届いた。
いつもだったらそのままゴミとして捨てるところを、私は躊躇った。
綺麗に折りたたまれていて、達筆な字で「あなた宛」と書かれた紙に興味を引かれたからだ。

「あなた宛…?」
不自然な文章に疑問を抱きながらも、紙を開いてみた。
すると、中には
『お元気してますか?』
というたったそれだけの文字が丁寧に書かれていた。
「なにこれ、、」
手紙というのは、普通文章が連なって書かれているものでは無いのか。
私は、その手紙を閉じた。
「どこから送られてきたんだろう」
今日はいつもより風が強く、紅葉の枯葉も一段と音を鳴らして落ちていた。
そんな中で、たまたま神社に届いてしまった不思議な手紙がなんだか怖くも思えてきた。
一瞬、小学生が友達とふざけて「あなた宛」という手紙を紙飛行機のように風にのせて送ったのかと思った。
けど、小学生にしてはあまりにも綺麗でブレのない字だったことから、大人の人が書いている途中に窓でも開けて飛んでいってしまったのではないかと考えた。

「そろそろ終わりにしなきゃ」
神社の掃除を終わらせ、神主に挨拶を終えてから私は支度をして家に帰った。
その日はなんとなく、頭の中にあの手紙のことが残っていた。

翌日、私が神社について一礼をしたとき、足元に一枚の丁寧に折りたたまれた紙が目についた。
「これ、、」
昨日見た「あなた宛」の手紙が頭に過った。
中を確かめてみると、それは間違いなく「私宛」の物だった。
昨日と変わらない達筆な字で書かれた手紙に私は驚きながらも内容を見た。
『おかえりなさい。』
この文章だけが書かれていた。
私は、大人が窓を開けて紙を飛ばしてしまったわけではないことを確信した。
中央に綺麗に書かれたその文字は、少し不気味でもあった。
「一体なんなの」
私は思いきって空を見渡し、近くから誰かが見ている可能性を探した。
すると、近くの家の窓から人がこちらを覗いてるように見えた。
「あの人なのね」
私はこれ以上無駄なゴミを増やしたくないという気持ちで巫女の服を着替え、その家へ向かった。

家の前に立ったとき、私はふと気づいた。
「これ…」
私が普通の家だと思い近づいた場所は、まるで今は使われてないかのように廃墟化した1つの屋敷だった。
「どういうこと!?」
私が屋敷から神社の方へ向くと、そこには神社は存在していなかった。
「一体…夢なの?」
私は現実だと思えなかった。
すると、私の後ろから何かが落ちた音がした。
「紙…」
見覚えのある達筆な字と「私宛」であることが見て取れる文章に私は戸惑った。
恐る恐る紙を拾い、開いてみるとそこには
「全部夢だよ」
と書かれていた。
けどそれは、いつものように丁寧に書かれた字ではなく、血のような赤い液体で弱く書かれた文字だった。
私は恐怖でその手紙を地面にたたきつけた。
その瞬間、視界が一瞬でぼやけた。


気がつけば、私は布団の上にいた。
私の家だ。
急いで日付を確認すると、2回目の手紙が届く前日になっていた。
「どうして、、夢だったのね…」
私が唖然としていると、枕元に紙が置いてあることに気づいた。
「なんで、、!!なんでここに、!どういうことなの!!」
私は自然と紙に手を伸ばして手紙を開いていた。
そこには、信じられないほどの異臭を放つ濃厚な血で、こう書かれていた。


『おはよう』

Next