彗星

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2/13/2026, 4:46:36 PM

※一つ前のお題です

伝えたい。
俺はアイツが嫌いだってことを。
小学校中学校高校と散々俺をいじってきて、かと思えば俺のことを好きだとか言い出して。
俺は嫌いだってのに、何故かそのときはOKしてしまった。今思えば若いが故のノリで付き合ったんだと思う。
だけど、俺はあの時も今もアイツが嫌いだ。

「熱出たの?」
「うん」
「はーーちゃんと体調管理しないからでしょ」
「うるせーよ、関係ないだろ」
「心配してあげてるのになにその言い方ー!!」
「別に心配なんていらねーよ」
「うざ。てかもう帰るの?」
「保健室の先生が帰れって」
「そう、じゃあまあまた来週」
「おう」


ピーンポン───
「はーい…って」
「やっほー」
「お前なんでここにいるんだよ」
「お見舞い来てあげたんでしょ!ほらほら」
「なんだよこれ」
「ゼリーと今日の授業のノート!一応全部の授業分書いといたから。ゼリーで元気だしなよ〜」
「え、やってくれたの」
「まあね笑どう?うれしい?」
「…まあ」
「笑笑ツンデレすぎー!じゃ、お大事にね」
「ああ、うん」

アイツは俺が熱を出したら必ずお見舞いに来るし勝手にノートをとってきたり賞味期限ギリギリのゼリーやプリンを渡してきたりする。
まあ、ノートは正直ありがたかった。


『好きです、付き合ってください』
「あーごめん私彼氏いるんだ」


「わ!びっくりした、なに、居たの?」
「別に。通りかかっただけ」
「本当は嫉妬してるくせに笑」
「……うるさ」
「…えっ?」
「はあ、早く帰るぞ」
「もー!素直に言えば〜??笑」

アイツはよくモテたし俺もよくアイツと付き合ってるのが羨ましいとか言われてた。
どこが?とずっと思ってたし言ってた。
お人好しだし、可愛げないし、すぐ怒るし、煽ってくるし、小さい頃のミスを大人になってもイジってくるし。
だけど真面目で、意外と繊細で、顔に出やすくて、泣き虫なくせに努力家で、無理しやすくて。



そんなところが、好きだった。






アイツの火葬が終わってからずいぶん日が経ったとき、アイツの父親が家に押しかけてきた。
アイツの遺書が見つかった、と。
そこには俺のことを書いているものもあって、アイツとは昔からの幼馴染である俺にはすぐに渡さないとと思ったらしい。
紙には、俺が知らないアイツの一面や俺が知りすぎているアイツの姿があった。
昔から病を患っていることは知っていた。
だから、他人の体調不良には人一倍敏感だったのも知っている。
俺がアイツにお見舞いにくるなと言っていたのは、単に照れ隠しだけが理由じゃない。
ただでさえ自分の病の治療で忙しいのに、他人の体調なんか気にするなと、そう思っていたからだ。
俺が知らないところでアイツはこんなにも悩んで、こんなにも絶望していたんだ。
それが、アイツの遺書でわかった。遺書の中でも時に無理して俺に笑いかけてくる。
アイツは、遺書を用意するくらい病が悪化していることを自分で理解していたのに幼馴染である、彼氏である俺にまで気を遣ってくれている。
本当に馬鹿なヤツだ。心底そう思った。
アイツが他の男から告白されているのを見て、俺は嫉妬してた。子供っぽすぎるそんな感情、アイツには絶対表向きにしたくなかった。
なのに、気づいてたんだな。
いや、俺が分かりやすすぎただけかもしれない。
アイツの遺書には、俺の名前が何度も出てきた。
『海が嫉妬していることも、私にはお見通しです。それに、海が私のお見舞いを本当は嫌に思っていないことも。私を心配してくれてたんだよね。』

その通りだった。

『わたしは正直、この昔からの病のせいでずっと苦しかったししんどかった。だけど海がいるおかげでなんだか少しだけ長生きできるような、しているような、そんな浮ついた気持ちでいられた。』

知っていた。アイツがよく俺が居ないところで咳き込んでいるのも、薬を飲んでいるのも。
アイツが俺といることで楽な気持ちになっているのは、気づけなかったけど。

『でも、私はもう生きられないみたいなの。海と一緒にまだまだ色んなとこ行きたかったな笑こんなこと言ったらまた気持ち悪いとか海に言われちゃうのかな〜笑
私は、海と少しでも長い間一緒にいれてよかった』

俺も、と思わず声が出た。返事は無い。

『あいしてるよ、大好きだよ。海、長生きしてね』

長生きするのはお前の方だろ。
俺はアイツが病で苦しんでいるのを知ってるはずなのに、しょーもない照れ隠しでアイツの"好き"にも返せてなかった。俺は、アイツが嫌いだったんだ。
無理ばかりする、馬鹿なアイツが。
でも馬鹿なのは俺の方だった。
アイツに好きだとか無理するなとか心配してるとかそんな言葉をかけてやれなかった。
アイツがいない世界はまだ朝なのに静かすぎて夜みたいだった。
あの時に、伝えられなかった。もう遅いかもしれないけど、でも、
伝えたい。
俺はアイツ、涼華が好きだってことを。


"伝えたい"

2/6/2026, 7:21:45 PM

カチ カチ───
時計の針が進む。
『開始っ!』
張り切りのある先生の声で皆一斉に答案用紙を捲る。
スラスラと書き始める周りの音に、気を取られる。
教室に足を踏み入れたとき、周りの皆が頭の良いまるで天才のように見えた。
その天才と今、私は戦っている。
数学──。
この問題、なんだったけと頭を張り巡らせる。
公式、代入の仕方、途中式、図形の描き方全てがわからなくなってくるような気がした。
答えがあっているか、回答がズレてないか何度も見返した。
英語は単語帳をあんなにボロボロになるまで使い古したのに、それが無意味だったかのように感じるくらい単語やその意味を思い出せなくなった。
時計の針の音、隣に座っている人の咳、ペンの音、次々と問題用紙を捲る音、全てに気を取られていた。
その後もあの今までの努力が全て嘘のように結果に対しての手応えが感じられなかった。
面接も、せっかく用意してきた回答が頭が真っ白になってできなかった。
自分でも解っていた。
落ちた、と。
あの時もっと時間配分に気をつければ、周りに気を取られなければ、確実に受かったのに。
あの日は何故かお腹が空いていたのに、今は食欲が湧かない。あの日の方が絶対に緊張していたはずなのに。
時計の針を巻き戻したくても、もうあの瞬間には戻ることはできない。
だからこそ、あの時、あの瞬間に1秒でも問題を理解して解いていれば努力していれば今笑えていたのかもしれない。
後悔先に立たず、とはまさにこの事だと思った。
時計の針は巻き戻せない。それは、自分の受験番号がまぐれで書かれていてもきっとそう思うはず。

だから今、頑張れ受験生──頑張れ、私──

1/26/2026, 3:37:06 PM

ヴーッ───
スマホが光る。

『今から来て』
たったそれだけのメッセージが送信されている。
「今から来てって…ほんと、、」
呆れたようにスマホを手に取り、私は考える。
今は深夜2時。今日は朝から仕事で、帰ってきてからも色々な作業をして、やっと今から眠りにつくところだった。
本当だったら、行くべきでは無いと思う。
疲れてるとか面倒くさいとかそれ以前に
彼の"都合のいい女"になりたくはなかった。
けれど、もう既に私は何度も彼とそういう事をしてきたし彼からの呼び出しに結局応えてしまっていた。
そして今も。

『ちょっとだけね』

そう彼に送り、私は軽いメイクと身支度を終え家を出た。香水とリップは一応つけておいた。


真夜中、暗い道を一人で歩く。
「迎えくらい来てよね」
彼が車を持っていないことを分かっていながらもそう思ってしまう。

ガチャ───
「おじゃまします」
「おーおつかれぇー、」
「ちょっと、なんか臭いんだけど」
「えぇ〜?そんなことないよ笑」
明らかに酔っ払っていた。
私が前に片付けたはずの部屋がもう既にお酒の缶やタバコの灰皿が散乱していた。
「もう、せっかく綺麗にしたのに」
「いいじゃん、きにしなくて」
「ダメだよ。ほら綺麗にするよ」
「待って。」
「?」
「それより先にさ、ほら」
彼が少し含みを持たせた言い方をしてきた。何を思っているのかは分かる。私だって、それを理解した上でこの家まで足を運びに来た。
「はあ…ほんとにちょっとだから」
「ん、はやく。自分からしてみて」
彼のそういう不意な発言にはいつもドキッとさせられる。
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私たちは事を終えてから、すぐに解散した。
正確に言えば事を終えた後に彼が寝てしまったから、解散せざるを得なかった。
ちょっと、と自分で言っていたものの、私の方がもっと一緒に居たがっていたし彼の方がもう満足といった態度だった。
私は、彼の寝顔を見ると毎回思う。
"都合のいい女"に自分がなっているのは彼のためになるならそこまで嫌なことじゃないんじゃないかって。
二人繋がってるときも、彼は私の香水の変化やリップの色の変化にも気づいてくれる。
私はいつも嘘をついて変えてないとか、つけてないとか言うけれど彼の全て見透かしてるようなその目が好きだった。
また明日も明後日も彼から真夜中に呼び出されることを少し期待してしまう。この世界に二人きりかと錯覚するような、そんな時が好きでもあり嫌いでもある。
私にとって一番幸せで辛い時間はこのミッドナイトだ。


ミッドナイト

1/16/2026, 6:34:08 PM

※長編です。誤字脱字があればすみません。

「おはようございます女王陛下。」
「ええ、おはよう。」

朝は挨拶から始まる。
純白に包まれた大きい城で目を覚ます。
煌びやかな内装に沢山の花や絵画。
豪華で華やかでなんともまあ美しすぎる城。
私は、この国の女王として生まれてきた。
皆が私を慕い、私を敬う、そんな生活だった。

「アメリア王女、本日の予定は───」


身支度を終え、部屋の外に出る。
身支度だけで一時間は当たり前にかかる。
美しく、なるために。

「おはようございます皆さん。」
「おはようございます女王陛下!本日もお美しい。あちらに朝食のご準備が出来ております。さあ、お召し上がりください。」
「ありがとう」

食事を済ましたら、謁見をして国の状況や政治に関わる詳しい話を聞く。
午後になると、他国の王や王女に書簡を書く。裁判状況の確認や直接裁判を見守る事もよくある。
夕方は庭園をしたり散歩をしたり、読書、音楽、ダンス、絵画、詩等教養とされるものを行う。
夜は晩餐会として外交をして仲を深め、政治について詳しい情報を知る。その後は舞踏会などを開いて一日をやっと終える。
寝る前に侍女や執事に挨拶をして、一日の日記をつけて就寝する。
城の外には護衛も居て私は完全に守られた生活をしている。美しさと華やかな生活を大切にするために。
また次の日も、同じような日々が始まる。
そう、思っていた───



「女王陛下大変です!」
「〜…なによこんな時間に、まだ朝じゃないでしょう」
「不法侵入者を発見致しました。現在は近衛兵により玉座の間に取り押さえられております。どうか、女王陛下の方から判断を。」
「……分かった。ありがとう。」

コツコツ──

「!女王陛下!お休みのところ、大変申し訳ございません。早急にこの不法侵入者への判断をお願い致します」
「だからっ私は不法侵入なんかじゃっ……」
「黙れ!!女王陛下が目の前にいらっしゃるんだぞ!!余計な言葉は慎め!」
「……貴方、名前は?」
「私?わたしは、、メアリー。」
「…メアリー、貴方はこの城の中へ親の手も借りずに不法侵入をしたのかしら」
「だから!私は不法侵入なんかじゃなくって」
「なら、帰してあげなさい。」
「!?女王陛下!なにを仰っておられるのですか」
「当然の事よ。貴方、見たところまだ12といったところかしら。まだまだ子供じゃない。こんなの、判断を下すまでもないわね」
「ですがっ…不法侵入者に変わりはありません。年齢だけで決めてしまえば、今までの犯罪者だって…話だけでも聞く必要はあります!」
「はあ、、メアリー、不法侵入したわけじゃないなら貴方はどうしてここに居るのかしら」
「それは…迷ったからよ、この城に!たまたまね!」
「たまたま、、メアリーが持ってる物をさっき見せてもらったけれど貴方、地図を持ってたわよね」
「うっ…それはっ」
「それと、まだバレていないと思ってるのかもしれないけれど貴方のポケットに入ってるそれは、電子機器でしょう?この会話を録音して、何に使う気かしら」
「……」
「お前っ…!!隠し持っていたのか!!さっさと出せ!」
「………わたしは、羨ましかっただけだもん」
「羨ましかった?何が、かしら…?」
「こんな贅沢な暮らしをして、自分が幸せだと気づいてないんでしょおばさん!!!!」
「…!!!」
「おいっ!!!お前っ相手が誰かわかってるのか!!この国の王女様だぞ!!陛下、もうこの者は処刑した方がよろしいのでは…」
「待って。」
「ですが!!」
「待てと言ったら待ちなさい。これは命令よ。
メアリー貴方、本当に子供なのね」
「おばさんには庶民の子供の気持ちなんてわからないでしょう!!」
「確かにそうね。私は、生まれたときからこの城で美しい王女として育たれてきたし若くして結婚相手を見つけ、この国を守ってきた。」
「守る?この国を?笑馬鹿げたこと言わないでよ!私たち庶民はあんたらの贅沢な暮らしのせいでどれだけ苦しい生活をしてるか!!わかんないんでしょう!!!」
「分からないわ。ごめんなさい。考えたことは何度もあるけれど、体験をしてみない限りは分からないのよ。」
「…おばさんはみんなから慕われてると勘違いしてるから気づいてないだけ。本当は庶民のみんなはこの国の王女は変えるべきだとか王女や王のせいでこうなってるって言ってる!!」
「ええ、知ってるわ。普段から他国との外交を重ねているし今のこの国の現状がどれだけ貧しく、経済的な格差が酷いかも分かってる。」
「ならどうして変えてくれないの!!!こんな変な城、捨てちゃえばいいのに!!」
「ごめんなさい。それは出来ないの。どれだけコストを削減したり労力を減らしても貴方達が住む貧しい街には行き届かないの。だからと言って、貴方達の生活を放っておこうなんて誰も思ってない。私たちも必死に考えているのよ」
「嘘!!嘘つき!!もうこんな国出て行ってやる!!」
「おいっ!!!暴れるな!!!陛下、どう致しますか」
「…メアリー、貴方は羨ましくてここに来たのよね」
「………だったら何」
「なら、少しだけ、私達と一緒に暮らしましょう。」






翌朝───
「女王陛下、と…えっと」
「メアリーよ」
「メアリー、様、おはようございます。」
「おはよう。ほら、メアリーも」
「…」
「ゴホンッそれでは本日の予定は───」




「ちょっとおばさん、今日の予定なにあれ!!多すぎるわよ!」
メアリーが着替えながら言う。
「ふふ、そうね。まあでも、すぐにこなせるようになるわ。」
「あ!その服!」
「?どうかしたの?」
「おばあちゃんが言ってた服だ」
「なんて言ってたのかしら」
「この国の王女が生まれたときに初めて作られた記念のドレスだって」
「あら、よく知ってるのね。そうよ。とっても美しくて豪華でしょう、この服。」
「当たり前でしょ。私のおばあちゃん、すごく物知りだったんだから」
「…貴方、ご両親は居るのかしら」
「いる。でも、お父さんは昔お母さんと喧嘩してから家にはいないしお母さんも最近は帰ってこなくなっちゃった。おばあちゃんも少し前に亡くなっちゃったの。だから、私がこんな生活を変えればお母さんもきっと帰ってくるって思って、この城に…あっ、」
「やっぱり迷い込んではなかったのね。笑まあ、私は正直なんでもいいんだけど」

「陛下、そろそろお時間です」
「今行くわ!さあ、メアリー行きましょう」
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「ええそうですね、やはりここの地域での産業の発達により地域格差が生まれています。」
「ならやはりこの地域での取り組みを中止して……」
「ですが、それだと国全体の利益が…」
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「ルミナリア王国の王は、鉱物と食料の調達不足に悩んでいるそうですね」
「なら書簡の内容はそれに沿った物がいいわね。ペンと紙を用意して頂戴。なるべく早く」
「かしこまりました女王陛下」
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「メアリー、次はダンスのレッスンへ行くわよ」
「メアリー早く。次は絵画よ」
「メアリー!散歩が終わったら読書の時間よ!」
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「いやあ本当にアメリア王女には日々助かっています」
「そんな。有り難きお言葉ですわ。セレナード王国との貿易のおかげですから」
「さあさあ、遠慮なく王女も沢山食べて踊りましょう」
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「はあ………つかれた、、」
「ふふ、メアリーだいぶ疲れているみたいね」
「当たり前でしょ毎回堅い話題ばっかでさ」
「でも絵画の時間はすごく楽しそうだったわね」
「べつに。少し休めたってだけ」
「そうかしら。絵がすごく上手だったけれど」
「き、気のせいだよ!もう寝よう」
「笑、そうね」

それから私とメアリーは、毎日のように一緒に過ごした。初めはメアリーとの会話は寝る前と朝だけで特に目立った話をしてなかったけれど時間が経つにつれお互いに一日の出来事を語り合ったりした。
最初は執事や侍女も慣れない様子だったし私とメアリーが一緒にいる事に心配をしていた。
けど段々と、メアリーの純粋さと無垢さに惹かれ皆不法侵入のことなんて無かったことにしていた。

「メアリー今日もお疲れ様」
「うん、アメリアもね」
「今日も日記をつけたら寝ましょうか」
「うん!ねえねえ、今日の朝のおじさんのやつ見た?」
「ああ、マーシャル国王のこと?」
「そうそう笑あのおじさん、転けそうになってたよね」
「ふふ、もうメアリーったら笑でも確かに、あの時は私も笑いそうになっちゃったわ」
「わたしもだよ!笑ほんと面白かった」

「…ねえアメリア」
「ん?どうかしたの?」
「なんでさ、私と一緒に暮らすなんて言い出したの」
「それは…」
「だってさ私はここに不法侵入してたし護衛の人も私を処刑しようとしてたのに、、」
「私は、メアリーが悪くないの初めから知っていたの」
「え?」

私は、メアリーと会ったことがある。
遠い昔の話だ。メアリーは覚えてるわけない。
私がまだ9歳だった頃、私よりも小さな子供が城の庭で泣いていた。
私は、不法侵入者だと騒ぎ立てる護衛を止め、その少女に話を聞いた。
家族が喧嘩をしていること、おばあちゃんしか味方が居ないこと、この豪華で、美しくて、綺麗な世界に憧れがあること。
彼女はメアリーといって、6歳というまだ小さな体で一人でこの憧れの城に足を運んだ。
9歳でありながら私は、彼女をそのまま家に帰した。
護衛も執事も皆、私が無事かどうかを第一に考え、この件は国全体には知らせず城だけの秘密となった。私はこの出来事を一瞬も忘た時はなかった。
何故か、それは自分にも分からない。ただひたすらに、彼女の口から話された壮絶な暮らしを、生活を私は忘れるべきではないと思っていた。

あの夜、執事に不法侵入者が居ると起こされた夜、私の記憶は点と点を繋ぐように鮮明になった。
私は気づいた。玉の間に出向く前から誰が来ているかはわかっていた。
案の定、その正体はメアリーだった。
6年後のメアリーの姿は、身長や髪型は変わっていてもあの素直さや純粋さは変わっていなかった。
私と3つしか変わらないと、そう思うかもしれない。
だけれど私は、彼女の壮絶な過去を知っている限り、守るべき人間だとわかっていた。
彼女はあの頃の記憶はもうないみたいだけど、私は覚えている。ハッキリと。


「メアリー、貴方は」
「アメリア…」
「私に守るべき美しき宝を教えてくれたのは、メアリーなの。」
「…」
「メアリーに会ったとき、私がこの国の王女としていつか貴方達の生活を豊かにしてみせる。そう、あの日から誓った。」
「アメリア、わたしも、思い出したよ」
「メアリー、、」
「アメリア、あのとき私の話を真剣に聞いてくれたのはアメリアだったんだね」
「ええ、会えてよかった」
「うん、アメリア…」


その日から私とメアリーは、共に暮らす日々をやめた。
メアリーは自分の街に帰り、いつも通りの生活をしている。私は、アメリア王女としていつものように豪華でキラキラとした城に囲まれて生きている。
けれど、これより大事な本当の美しさを、私は知っている。そして、辛い現実も。
この信念は、きっとこの先も一度も揺らぐことはない。

1/13/2026, 5:14:46 PM

「かわいいね」
そう言いながら優しく私の頭を撫でる彼。
彼の手は温かくて、ふわふわしていてそしてなにより安心する。ゆっくり話すその言葉一つひとつが、溶けてしまいそうなくらい、落ち着く。

「おれはロングの方が好きだよ」
ロング、と言いながら髪を撫でる。たしかに彼はサラサラの黒髪ストレートが好きだと前にも言ってた気がする。
彼の私を撫でる手が段々と私の唇に近づいてくる。
「…緊張してるの?」
わたしの目をじっと見つめる。
緊張、というかこんな幸せな時間を現実だと思えない。
「目瞑って」
彼がゆっくりと近づいてくる。そのまま、彼の唇と私の唇が重なり合う。
柔らかくて、ふんわりといい匂いもする。
「、かわいい。」
そういって私の頬を指で撫でながら、また唇を重ねる。
優しくて、あたたかくて、こんなに幸せでいいのかと何度も自分に問いただす。
普段の彼は冷たい態度を取ることもあってわたしと話してくれない時もある。
なのに、こんなに好きで、愛していて、幸せ。
彼の声が遠くなっている気がする。
だんだん肌寒い風が唇を震えさす。
眩しい光が刺して

ああ、もっとこのまま、夢を見てたいのに。

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