「今を生きる」よく聞くセリフだが、皆は果たして「今を生きている」だろうか。
「今を大事にする」そんな簡単なこと、と思うかもしれないがそんな簡単なことが我々にはできていない。
今を大事にするのが簡単なら、この世界はこんな風にはなっていないのだ。
私が疑問に思うのはなぜ皆は今という一瞬に生きているのに、大事にできないのかだ。
頭が悪いのか、私たちはこの「今」を理解することが出来ていない。
この文を読んでいる今、この内容を理解しようとしている今、目や手を動かしている今。
私たちは、この今を本当に一つ一つ理解できているのだろうか。
いいや、できていない。
なぜなら、一つ一つの行動に意味が無いと思っているからだ。意味を見出せていない私たちはこの「今」を、一瞬を、理解できない。
さあ、貴方は本当に「今を生きる」「今を大事にする」これができるのか。
"簡単なこと"です
私が病院で死ぬ頃、雨が降ってた。
私は昔から人気者だった。
いつもクラスの中心にいて、いつも笑ってて。
けど、そんな人生にももう疲れた。
限界だった。ずっと
私が出会った友達の中で、一人面白い子が居た。
小学四年生の時だった。
「私は藍音!よろしく」
律儀に挨拶を交わしてくれたその子は藍音といって、よく喋る女の子だった。
藍音は、私のことをしっかり見ていてくれた。
他の人とは違って。
皆みんな、私の周りに集まっては私と話をしたがる。
けど、それが本当に私に対しての仲良くなりたい気持ちなのか、私には分からなかった。
けど藍音は私の奥底の気持ちに気づいてくれていたと思う。そう信じてる。
藍音と海で馬鹿みたいにはしゃいだとき、私は初めて自分を偽らずに笑顔で人の目を見て話せた。
藍音が本当の私を引き出してくれた。
誰も気づかない、気づくはずのない私の本音を理解しようとしてくれてた。
私は小学二年生の頃にこっちに転校してきた。
昔から好かれるタイプではあった。
誰からも可愛がられて、大事にされる。
前の学校でもそうだった。皆の中心の的だった。
けど
昔から患う心臓の病気のせいで、皆から常に見られることが怖かった。
皆から触れられたり、近くに寄ってこられたりすると脈拍がどんどん上がる感覚がしてた。
誰にも理解されないこの病のおかげで私は何度も苦しめられた。
もし私が「心臓が弱い」なんて伝えてしまったら皆離れるかもしれない。
「それはそれでいいんじゃない」?「病の方が重要」?そんなの、偽りでしかない。
私は人気者だ。
私は、皆から好かれている。
それは事実が証明してる。
そんな浅はかな考えだった。
だけど、藍音が私を変えてくれた。
藍音と海の中で遊んだときの私がそう言ってる。
私はきっと、藍音の前では病を気にせずに過ごせる。
藍音にもしさっきの私の考えを話したら、笑いながら
「皆が離れるわけないじゃん。凛のことが皆好きなんだから」って言ってくれると思う。
私は、藍音と居たらもしかしたら病気が治ってその内本当の私として元気に生きれるかもしれない。
翌年の6月6日、私は死んだ。
前日は、藍音の誕生日だ。
「おめでとう」すらも送れなかった。
梅雨でどんよりとした空気の中私は入院していた。
治療も、順調なはずだった。
上手くいけば、本当に私は病気が完治して生きていたかもしれない。
けど私は生きなかった。そんな選択肢、私にはなかった
「もしよければ、お見舞いに来てくれない?」
点滴が刺さった腕で必死に文字を打った。
『ごめん』
それが、藍音の返事だった。
別にそれが私の死因なわけじゃない。
けど、そうか。
やっぱり私を1番として考える人は誰1人いない、居ないんだ。
皆には皆の1番がいて。
私は、誰の一番にもなれない。
藍音なら私に会いに来てくれるかも、と、勝手に期待してた。
私の中にいる本当の私を理解してくれてる藍音なら、私からの誘いにものってくれると思ってた。
そのとき、私は混乱していた。
完全に頭がごちゃごちゃだった。
藍音の1番じゃないこと
病気が治ったら生きれるかもしれないこと
でも、病気が突然悪化するかもしれないこと
だれもお見舞いに来たいと思わないこと
母と父はもう病気の娘にきっと興味が無いこと
全てがもう、嫌になってた。
終わりにしたかった。
だから私は病院で首を吊った。
夜、雨は土砂降りだった。
けれど、何故か優しくそしてどこか冷たい雨音だった。
今なら私が泣いても雨で誤魔化せられるかもしれない。
そんな馬鹿なことを考えながら私は
自分を自分の手で
殺した。
もし私が死んだら、
誰かの一番に──────
※このお話は、去年の12/18の作品のもう一つのお話です。もし良ければそちらの方も読んでみてくださると嬉しいです。
まってと言ったところで、まってくれないのは知っている
あれは、いつやったけ 。?
騒がしかった
音が賑やかで、弾んでて
人が居て
あれ、あの人なんか見た事ある、
思い出せんさ
なんか、
変や感じや。
ピーッピーッ───
ああ、そうや
わたし、死んどるんや 。
もう周りの音すらきこえてこんし、
わたしあほみたいに寝とるんやろな
はよ起きんと
もう遅いんか。
今、気づいても
。
記憶
あの子がまだ小学二年生の夏、私は娘を亡くした。
暑かった。
まだセミが鳴いてる頃で、風鈴が鳴ってた。
『一応捜査は進めているんですが、、どうしてもまだ…』
「…そうですか、」
娘は、事故として警察に判断された。
だけどその根拠となるものは一切見つからなかった。
娘がいつものように学校に向かう途中、車に跳ねられたように道路の真ん中に倒れ込んでいる姿で発見された。
朝は人が通らないような路だったから、警察に通報が入ったのは昼間だった。
「小さな女の子が倒れています!」
そう連絡をしたのは通りすがりの男性。
その頃にはもう娘の体は冷たかった。
けれどまだ、娘の身体中から血が溢れ出ていた。
私は、娘のランドセルが赤く染っていくのをただ見届けることしかできなかった。
近くの防犯カメラや発見者の男性、周りにある店の人に話を聞いたり見たりしても全てが水の泡で終わった。
『ニュースに取り上げられることを許可…ですか』
「はい。もう落ち着いてご飯も食べてられないんです。」
『ニュースに取り上げられたからと言って犯人がわかったりするとは決して言い切れないんですよ?大事になったり、もしかしたらお宅に報道関係者が訪れたりなんてことも…』
「別にいいんです。もう既に街中にポスターや貼り紙を貼って犯人を早く捕まえれるようにしているので」
『……分かりました。』
〈速報です。今月の22日に小学二年生の少女が原因不明の状態で死体で発見されました。警察は事故とみて捜査を進めております。〉
《やだ、原因不明だって、あんたも気をつけなきゃね》
《まあお気の毒に…原因不明で事故って一体なんなのかしら。 。》
〈そして、亡くなった娘さんのお母様に取材をさせていただきました。その様子がこちらです。〉
〈原因不明ということですが一体、、〉
「私も分かりません。わからないんです。車に跳ねられたのか、でも防犯カメラには何も映ってないし、、もう何がなんだか、、」
〈お気持ちお察し致します。お悔やみ申し上げます。〉
「ありがとうございます。この報道を通してより多くの方に知ってもらい、そして子供たちに注意喚起をどうか…」
《本当に辛いでしょうに、、大変ねえ》
《可哀想よね本当。。はやく解決しないかしら》
《お母さんはきっと立ち直れないわよね…》
4年後───
〈速報が入りました。20✕△年の○月22日、少女殺害事件について現在犯人が発覚したとのことです。〉
『何故こんなことをした!』
【……】
『応えろ!!何故こんな世間を巻き込んでまでお前はっ…!!!』
【……だって、】
「あの子が悪いんです!!!全部、全部……テストでは100点を取らないし、女手一つで育ててるのに余計なことしかしない!!私が殺して何が悪い!!!」
『お前…お前は、あの子が死んで悲しくないのか!!一人の若者の命を犠牲にしてまで自分を救いたいか!!世間を、全国民を荒らしたいか!!!』
「あんただって!!随分協力してくれたじゃない(笑)気づきもせずに、隣の犯人を置いて長いことお遊びの推理をしてたじゃない!それなのに今になって私を責めて何がしたいのよ!(笑)」
『……俺は、信じたかった。
俺は長いことこの職をしているが、原因不明でまるで事故のように少女が倒れてるのは初めてだった。
そりゃお前のことだって疑ったさ!何度も何度もな。
だが、お前が泣きながら寝る間も惜しんで街中にポスターを貼って、ニュースの取材1つも断らずに娘のいた頃の話をするのを1番近くで見て、信じたいと思った。』
「っ、、」
『誰が母親だと思う?誰が自分の娘を殺す?事故に見立てた原因不明の事件の犯人が、母親だと真っ先に疑う奴がどこにいる?あの涙はなんだ?お前の俺にみせた、あの子にみせた、全世界にみせた涙はなんだ??』
「信じたあんたが悪いんじゃな…」
『ああそうだ。だけど今こうしてお前がしたことが明らかになった。お遊びの推理も、捜査も、もうお終いだ』
「……」
『近くの店の防犯カメラを予め違うものに偽造したのも、わざと通行人が居ない道、時間帯を狙ったのも、泣いて同情を誘おうとニュースに取り上げられたのも、全てお前の作戦だな?』
「…ええ、」
『思惑通りだったよ。お前の手のひらで馬鹿みたいに転がされてた。だがもう芝居は終わりだ。』
「、、そうね」
〈犯人は、懲役12年の判決が下されました。〉
〈もう二度と、この事件を風化させてはいけません。〉
『もう二度と、この事件を風化させるなよ』
この時、あの頃と同じ、風鈴の音が聞こえた気がした。