※センシティブな表現が含まれています。激しい内容にはしていないので見たい方だけ見てくれると嬉しいです。
「じじゃーん!」
サンタのコスプレをしてはしゃいで彼に見せる私。
「…買ったの?」
そんな彼はいつものように平然としていて、私のこの格好を見て一緒に楽しんでくれるかと思っていた私は完全に唖然としていた。
「え!?ちょっと、せっかくクリスマス衣装着たのにそれだけ!?」
「まあ、イブだけど別に普通の平日と変わんないからね」
相変わらず冷めた彼に、私はこう言い返す。
「涼私の格好見てさ、なんか、ほら!ないの?」
「えー、まあ可愛いは可愛いけど、それはいつもだし」
「ちがくて!!なんか、なったりはしないの、?」
「笑え?」
私が恥ずかしそうに聞くと涼はニヤニヤしながら私にこう言った。
「なに、俺がそんなんで興奮すると思ってんの?笑」
「ち、ちがうし!!単純に男の子はなんないのかなーって気になっただけ!」
「ごめんだけど俺、それで興奮してたら夜街歩けないから」
「そうじゃなくてさ、彼女がサンタコスしてるんだからちょっとはなんかあってもいいじゃん!」
私が少し拗ねたように言うと、涼は私の耳元で言った。
「なに、笑なんかって、なんかしたいの?」
「っ…」
一気に耳が赤くなる私を、笑いながら見る彼。
「耳も身体も熱くなってるね。暑いの?笑」
「ち、ちがう!ちょっとびっくりしただけ、離れて」
「なんでよ、せっかく可愛い格好してるんだから近くで見たいじゃん。ね?」
「ーー!いいから!」
彼の思惑通りな気がして、嫌気がさす。
「もうこんなんなってるよ?おまえ」
「やめて、」
「俺の、当ててんのわかる?」
「、、わかんないから」
「えー笑こんなに当てまくってんのに」
「ねえ、涼興奮してる?」
「してるよ、めっちゃ」
そう言いながら彼は私と唇を重ねる。
「…涼っ、」
「なに今更恥ずかしがってんの笑キスくらい普通でしょ」
完全にそういう雰囲気になった私たちは、またいつもと同じ行為を繰り返す。
「涼、もう腰痛い、」
「えー、俺はもっとしたかったのにな。こんな可愛いサンタさんにめちゃくちゃできるんだもん」
「やめてよ」
「照れんなって」
「涼さ、もうすぐイブ終わっちゃうけどだれからも誘われてないの?明日笑」
「うるさ。おまえのために空けてたんだよ」
「うそつけ」
「ほんと」
涼のまっすぐな目を見て、私はまた好きになる。
「涼」
「ん?」
「好きだよ」
「なに急に笑」
「クリスマスイブだから特別」
「おまえしてるとき毎回好き好きうるさいけどな」
「もう!いわないでよいちいち!」
「はいはい笑俺も好きだよ」
彼からの「好き」をもらったとき、時計がちょうど0時になった。
"イブの夜"
私は、人を愛すことができないんだと思う。
どうしてかって、うーん。長くなるな
けど簡単には言えないこと。
私って仲良くなった子をすぐに切り捨てたりするし、新しくできた彼にも優しくなんてできなかった。
小学校4年生の頃、仲良くなった女の子がいた。
その子は明るくて優しかったし太陽みたいな子だなあって最初は思ってた。
けど、知っていくうちにどこか儚くて、切ない子だと思った。
悩みとかそういうものを打ち明けたりは決してしなかったけど、幼いながらに私も「ああ、何か抱え込んでるな。この子は。」って思った。
そのくらい、その女の子はいい意味で分かりやすかったしいい意味で大人だった。
私にきっと相談したくなかったんだろうなって。
けど本当は助けて欲しいのかなーって。
でもそれに気づいた頃には、もう遅かった。
彼女は、病院で自殺した。
理由は今でも分からない。
けど、その子の両親から聞いた話では彼女、凛は元々心臓が弱くて病気だったらしい。
そんな中、小学2年生の頃にこっちに転校してきて、慣れない環境と自分の患う病のせいで心のタンクから不安が溢れてしまった。
けどそれを伝える勇気が凛には無かった。
私から見た凛は皆の前では明るくてクラスの中心のように思えた存在だったけど、心の奥底では自由になりたかったんだろうなと今では思う。
昔馬鹿みたいに海の中ではしゃいだとき、凛の表情が凄く眩しかったのを覚えてる。
それは、クラスの真ん中で笑顔で話してるときの凛とは違って。
本当にやりたかったことはあれなんじゃないのかな。
凛が本当にしたかったことってああいうことだったんじゃないのかな。
なんて、今考えても遅いけど。
海で服もびしゃびしゃだし、髪も濡れてたけど、凛が心から笑いかけてくれたのはあの日が最初で最後だった。
凛が病院で自殺をする前の日に、私は凛からのお見舞いの誘いを断った。
今でも覚えてる。まだ小さな携帯に「そっか」と悲しそうに送られてきたメッセージを。
あの日は私の誕生日だった。
仕方ないといえば仕方なかった。
両親からお祝いをされて、ケーキを買いに行くところだった。
幼い私には、病気を患っている友人のお見舞いがどれだけ重要かだなんて分からなかった。
私は、親友より自分を優先した。
さっき仕方ないと言ったけれど、あれは嘘だ。
もし私が彼女のお見舞いに行っていたら?
「今すぐ行く」と送っていたら?
次の日に、凛は自分で自分を傷つけることは無かったかもしれない。
私がもっと凛の存在の大切さに気づいていたら。
凛と出逢ったのがあと少しでも大人だったら。
彼女は、生きる道を選んだかもしれないのに。
私はその後悔でいっぱいになった。
凛の両親からの話なんて、そのときは右から左だった。
凛が死んだ悲しさと悔しさで頭がいっぱいだった。
凛の悩みに気づいていたのに
心の底の気持ちに私だけは気づいてあげれていたのに
どうして私は凛を選ばなかったんだろう。
今考えても、もう遅い。
彼女の火葬は、とっくの昔に終えたのだから。
私はそこから、仲良くなった子をすぐに捨てたり関係を切ったりしてきた。
中学生になって彼氏が出来ても、そのときの恋愛なんて所詮子供の遊び。なんて大人な考えをしてた。
だから、自分から彼に別れを告げたり急に連絡を断ったりした。
高校、大学と生きてきたけど、私の心の中から凛が消えたことは一度もない。
けどその代わり、私は人を愛すということができなくなった。
でもそれって悪いことでも良いことでもない。
だって人はいつか裏切るし、あの時みたいに、急に目の前から居なくなったりする。
だから人を愛してしまったらもう最後なんじゃないかって私は思う。
だけど、人を愛さないこともまた悲痛だったりする。
結局、この話に結論なんてない。
きっと私が死んだとしてもこの話にピリオドがつくことはないと思う。
いつまで経っても、とりとめもない話だ。
眠れないほど彼を思い出す。
「君が一番」
「好き」
「一生そばにいて」
「幸せにする」
色々な言葉がありますが、私はこの言葉がきっと1番の愛言葉だ思います。
そしてこの言葉は、全国誰が聞いても必ず分かります。
「愛してる」
隣からふわりと香る甘い匂い
ゴツゴツした細い指
全部好きだった。
声も、話し方も、態度も。
でも私は知ってる。
あなたが来年教師をやめることも
あなたが薬指に指輪を嵌めていることも。
だからこうしてわざと悪い点をとってるの。
放課後教室に二人きりで居れるから。
けどもう、明日からあなたの顔を見ることはできない。
なら別に無理に追いかけたりしない。
「高木待てっ、、」
「……」
カーテンが揺れて二人が影になる。
「全部先生のせいだから」
先生の目を見つめて私は言う。
唇を指で撫でる仕草をしながら私を見つめる先生の姿は、今までで1番悲しそうな顔をしていた。
「先生、待ってるから」
先生の薬指が光った。
「…それ、次は外してきてね」
私は教室を出た。
私が教室から出るまで先生は一度も声をかけなかった。
なんだか少しだけ目の奥が痛む気がした。