彗星

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1/16/2026, 6:34:08 PM

※長編です。誤字脱字があればすみません。

「おはようございます女王陛下。」
「ええ、おはよう。」

朝は挨拶から始まる。
純白に包まれた大きい城で目を覚ます。
煌びやかな内装に沢山の花や絵画。
豪華で華やかでなんともまあ美しすぎる城。
私は、この国の女王として生まれてきた。
皆が私を慕い、私を敬う、そんな生活だった。

「アメリア王女、本日の予定は───」


身支度を終え、部屋の外に出る。
身支度だけで一時間は当たり前にかかる。
美しく、なるために。

「おはようございます皆さん。」
「おはようございます女王陛下!本日もお美しい。あちらに朝食のご準備が出来ております。さあ、お召し上がりください。」
「ありがとう」

食事を済ましたら、謁見をして国の状況や政治に関わる詳しい話を聞く。
午後になると、他国の王や王女に書簡を書く。裁判状況の確認や直接裁判を見守る事もよくある。
夕方は庭園をしたり散歩をしたり、読書、音楽、ダンス、絵画、詩等教養とされるものを行う。
夜は晩餐会として外交をして仲を深め、政治について詳しい情報を知る。その後は舞踏会などを開いて一日をやっと終える。
寝る前に侍女や執事に挨拶をして、一日の日記をつけて就寝する。
城の外には護衛も居て私は完全に守られた生活をしている。美しさと華やかな生活を大切にするために。
また次の日も、同じような日々が始まる。
そう、思っていた───



「女王陛下大変です!」
「〜…なによこんな時間に、まだ朝じゃないでしょう」
「不法侵入者を発見致しました。現在は近衛兵により玉座の間に取り押さえられております。どうか、女王陛下の方から判断を。」
「……分かった。ありがとう。」

コツコツ──

「!女王陛下!お休みのところ、大変申し訳ございません。早急にこの不法侵入者への判断をお願い致します」
「だからっ私は不法侵入なんかじゃっ……」
「黙れ!!女王陛下が目の前にいらっしゃるんだぞ!!余計な言葉は慎め!」
「……貴方、名前は?」
「私?わたしは、、メアリー。」
「…メアリー、貴方はこの城の中へ親の手も借りずに不法侵入をしたのかしら」
「だから!私は不法侵入なんかじゃなくって」
「なら、帰してあげなさい。」
「!?女王陛下!なにを仰っておられるのですか」
「当然の事よ。貴方、見たところまだ12といったところかしら。まだまだ子供じゃない。こんなの、判断を下すまでもないわね」
「ですがっ…不法侵入者に変わりはありません。年齢だけで決めてしまえば、今までの犯罪者だって…話だけでも聞く必要はあります!」
「はあ、、メアリー、不法侵入したわけじゃないなら貴方はどうしてここに居るのかしら」
「それは…迷ったからよ、この城に!たまたまね!」
「たまたま、、メアリーが持ってる物をさっき見せてもらったけれど貴方、地図を持ってたわよね」
「うっ…それはっ」
「それと、まだバレていないと思ってるのかもしれないけれど貴方のポケットに入ってるそれは、電子機器でしょう?この会話を録音して、何に使う気かしら」
「……」
「お前っ…!!隠し持っていたのか!!さっさと出せ!」
「………わたしは、羨ましかっただけだもん」
「羨ましかった?何が、かしら…?」
「こんな贅沢な暮らしをして、自分が幸せだと気づいてないんでしょおばさん!!!!」
「…!!!」
「おいっ!!!お前っ相手が誰かわかってるのか!!この国の王女様だぞ!!陛下、もうこの者は処刑した方がよろしいのでは…」
「待って。」
「ですが!!」
「待てと言ったら待ちなさい。これは命令よ。
メアリー貴方、本当に子供なのね」
「おばさんには庶民の子供の気持ちなんてわからないでしょう!!」
「確かにそうね。私は、生まれたときからこの城で美しい王女として育たれてきたし若くして結婚相手を見つけ、この国を守ってきた。」
「守る?この国を?笑馬鹿げたこと言わないでよ!私たち庶民はあんたらの贅沢な暮らしのせいでどれだけ苦しい生活をしてるか!!わかんないんでしょう!!!」
「分からないわ。ごめんなさい。考えたことは何度もあるけれど、体験をしてみない限りは分からないのよ。」
「…おばさんはみんなから慕われてると勘違いしてるから気づいてないだけ。本当は庶民のみんなはこの国の王女は変えるべきだとか王女や王のせいでこうなってるって言ってる!!」
「ええ、知ってるわ。普段から他国との外交を重ねているし今のこの国の現状がどれだけ貧しく、経済的な格差が酷いかも分かってる。」
「ならどうして変えてくれないの!!!こんな変な城、捨てちゃえばいいのに!!」
「ごめんなさい。それは出来ないの。どれだけコストを削減したり労力を減らしても貴方達が住む貧しい街には行き届かないの。だからと言って、貴方達の生活を放っておこうなんて誰も思ってない。私たちも必死に考えているのよ」
「嘘!!嘘つき!!もうこんな国出て行ってやる!!」
「おいっ!!!暴れるな!!!陛下、どう致しますか」
「…メアリー、貴方は羨ましくてここに来たのよね」
「………だったら何」
「なら、少しだけ、私達と一緒に暮らしましょう。」






翌朝───
「女王陛下、と…えっと」
「メアリーよ」
「メアリー、様、おはようございます。」
「おはよう。ほら、メアリーも」
「…」
「ゴホンッそれでは本日の予定は───」




「ちょっとおばさん、今日の予定なにあれ!!多すぎるわよ!」
メアリーが着替えながら言う。
「ふふ、そうね。まあでも、すぐにこなせるようになるわ。」
「あ!その服!」
「?どうかしたの?」
「おばあちゃんが言ってた服だ」
「なんて言ってたのかしら」
「この国の王女が生まれたときに初めて作られた記念のドレスだって」
「あら、よく知ってるのね。そうよ。とっても美しくて豪華でしょう、この服。」
「当たり前でしょ。私のおばあちゃん、すごく物知りだったんだから」
「…貴方、ご両親は居るのかしら」
「いる。でも、お父さんは昔お母さんと喧嘩してから家にはいないしお母さんも最近は帰ってこなくなっちゃった。おばあちゃんも少し前に亡くなっちゃったの。だから、私がこんな生活を変えればお母さんもきっと帰ってくるって思って、この城に…あっ、」
「やっぱり迷い込んではなかったのね。笑まあ、私は正直なんでもいいんだけど」

「陛下、そろそろお時間です」
「今行くわ!さあ、メアリー行きましょう」
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「ええそうですね、やはりここの地域での産業の発達により地域格差が生まれています。」
「ならやはりこの地域での取り組みを中止して……」
「ですが、それだと国全体の利益が…」
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「ルミナリア王国の王は、鉱物と食料の調達不足に悩んでいるそうですね」
「なら書簡の内容はそれに沿った物がいいわね。ペンと紙を用意して頂戴。なるべく早く」
「かしこまりました女王陛下」
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「メアリー、次はダンスのレッスンへ行くわよ」
「メアリー早く。次は絵画よ」
「メアリー!散歩が終わったら読書の時間よ!」
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「いやあ本当にアメリア王女には日々助かっています」
「そんな。有り難きお言葉ですわ。セレナード王国との貿易のおかげですから」
「さあさあ、遠慮なく王女も沢山食べて踊りましょう」
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「はあ………つかれた、、」
「ふふ、メアリーだいぶ疲れているみたいね」
「当たり前でしょ毎回堅い話題ばっかでさ」
「でも絵画の時間はすごく楽しそうだったわね」
「べつに。少し休めたってだけ」
「そうかしら。絵がすごく上手だったけれど」
「き、気のせいだよ!もう寝よう」
「笑、そうね」

それから私とメアリーは、毎日のように一緒に過ごした。初めはメアリーとの会話は寝る前と朝だけで特に目立った話をしてなかったけれど時間が経つにつれお互いに一日の出来事を語り合ったりした。
最初は執事や侍女も慣れない様子だったし私とメアリーが一緒にいる事に心配をしていた。
けど段々と、メアリーの純粋さと無垢さに惹かれ皆不法侵入のことなんて無かったことにしていた。

「メアリー今日もお疲れ様」
「うん、アメリアもね」
「今日も日記をつけたら寝ましょうか」
「うん!ねえねえ、今日の朝のおじさんのやつ見た?」
「ああ、マーシャル国王のこと?」
「そうそう笑あのおじさん、転けそうになってたよね」
「ふふ、もうメアリーったら笑でも確かに、あの時は私も笑いそうになっちゃったわ」
「わたしもだよ!笑ほんと面白かった」

「…ねえアメリア」
「ん?どうかしたの?」
「なんでさ、私と一緒に暮らすなんて言い出したの」
「それは…」
「だってさ私はここに不法侵入してたし護衛の人も私を処刑しようとしてたのに、、」
「私は、メアリーが悪くないの初めから知っていたの」
「え?」

私は、メアリーと会ったことがある。
遠い昔の話だ。メアリーは覚えてるわけない。
私がまだ9歳だった頃、私よりも小さな子供が城の庭で泣いていた。
私は、不法侵入者だと騒ぎ立てる護衛を止め、その少女に話を聞いた。
家族が喧嘩をしていること、おばあちゃんしか味方が居ないこと、この豪華で、美しくて、綺麗な世界に憧れがあること。
彼女はメアリーといって、6歳というまだ小さな体で一人でこの憧れの城に足を運んだ。
9歳でありながら私は、彼女をそのまま家に帰した。
護衛も執事も皆、私が無事かどうかを第一に考え、この件は国全体には知らせず城だけの秘密となった。私はこの出来事を一瞬も忘た時はなかった。
何故か、それは自分にも分からない。ただひたすらに、彼女の口から話された壮絶な暮らしを、生活を私は忘れるべきではないと思っていた。

あの夜、執事に不法侵入者が居ると起こされた夜、私の記憶は点と点を繋ぐように鮮明になった。
私は気づいた。玉の間に出向く前から誰が来ているかはわかっていた。
案の定、その正体はメアリーだった。
6年後のメアリーの姿は、身長や髪型は変わっていてもあの素直さや純粋さは変わっていなかった。
私と3つしか変わらないと、そう思うかもしれない。
だけれど私は、彼女の壮絶な過去を知っている限り、守るべき人間だとわかっていた。
彼女はあの頃の記憶はもうないみたいだけど、私は覚えている。ハッキリと。


「メアリー、貴方は」
「アメリア…」
「私に守るべき美しき宝を教えてくれたのは、メアリーなの。」
「…」
「メアリーに会ったとき、私がこの国の王女としていつか貴方達の生活を豊かにしてみせる。そう、あの日から誓った。」
「アメリア、わたしも、思い出したよ」
「メアリー、、」
「アメリア、あのとき私の話を真剣に聞いてくれたのはアメリアだったんだね」
「ええ、会えてよかった」
「うん、アメリア…」


その日から私とメアリーは、共に暮らす日々をやめた。
メアリーは自分の街に帰り、いつも通りの生活をしている。私は、アメリア王女としていつものように豪華でキラキラとした城に囲まれて生きている。
けれど、これより大事な本当の美しさを、私は知っている。そして、辛い現実も。
この信念は、きっとこの先も一度も揺らぐことはない。

1/13/2026, 5:14:46 PM

「かわいいね」
そう言いながら優しく私の頭を撫でる彼。
彼の手は温かくて、ふわふわしていてそしてなにより安心する。ゆっくり話すその言葉一つひとつが、溶けてしまいそうなくらい、落ち着く。

「おれはロングの方が好きだよ」
ロング、と言いながら髪を撫でる。たしかに彼はサラサラの黒髪ストレートが好きだと前にも言ってた気がする。
彼の私を撫でる手が段々と私の唇に近づいてくる。
「…緊張してるの?」
わたしの目をじっと見つめる。
緊張、というかこんな幸せな時間を現実だと思えない。
「目瞑って」
彼がゆっくりと近づいてくる。そのまま、彼の唇と私の唇が重なり合う。
柔らかくて、ふんわりといい匂いもする。
「、かわいい。」
そういって私の頬を指で撫でながら、また唇を重ねる。
優しくて、あたたかくて、こんなに幸せでいいのかと何度も自分に問いただす。
普段の彼は冷たい態度を取ることもあってわたしと話してくれない時もある。
なのに、こんなに好きで、愛していて、幸せ。
彼の声が遠くなっている気がする。
だんだん肌寒い風が唇を震えさす。
眩しい光が刺して

ああ、もっとこのまま、夢を見てたいのに。

11/28/2025, 6:50:53 PM

厳しい寒さが肌をジンジンと刺激する。
呼吸しようとする度に白く染まる息が出て喉が詰まる。

「おはようハリー。」
長い紺色のスカートをぎゅっと握るその姿は、可愛らしさの中に愛おしさもあった。
「おはよう、ソフィア。」
私とソフィアは幼なじみだ。
ソフィアは昔、父親の仕事の都合で日本に引越してそれからずっと日本に住んでいた。
私はというと、母がモデルをしていてそれが日本で人気が急増してしまい日本からのスカウトや仕事を断り続けることができなくなってしまったため高校に入学する直前に引っ越してきた。
偶然引越し先がソフィアの住んでいる街で、昔からの幼馴染なこともあってソフィアが志望していた日本の私立高校に私も志望して、見事二人で合格した。家もお互いに近かったから毎日朝待ち合わせをして学校に行っている。
私たちが通っている学校はいわゆるお嬢様学校で、校舎も制服も何もかもが綺麗だった。
私は初め、ソフィアの制服姿を見たとき女神かと思うくらいに美しくて吃驚した。

ソフィアは昔から可愛かった。
幼稚園の頃から母親同士の間で、小学生の頃にはクラスや友達の間で噂されていた。
中学からはソフィアがそばにいない生活を当たり前に送っていたからソフィアが美人で、優しくて、面白くて、頭が良いことだってもう忘れていた。
けれど高校入学の初日の春、朝待ち合せして私の瞳に映ったソフィアは私の知ってるあの頃のソフィア以上に輝いていたし、美人だった。
私は、ソフィアを単純に尊敬していた。
頭の良さは同じ学校に通えているし変わらないと思われるかもしれないけど学年のトップを取るのはいつもソフィアだしどれだけ可愛い子がクラスに何人も居てもソフィアだけはいつも誰かに好かれていた。

いつからか、そんなソフィアのもとに私が居て良いものなのか考えてしまうようになった。


「ハリー、寒そうだね笑」
「うん。」
「私も寒いから今日はマフラーつけてきたよ。どう?」
少し意地悪そうなその視線を、私はすぐに逸らした。
「似合ってるよ」
「ふふ、ありがとう」
「ハリーは寒がりなのにマフラーとか手袋はしないよね」
「まあ、家にないからね」
「買えばいいんじゃないの?」
「面倒くさいだけ。」
「そっかー」
頬と鼻先を赤く染めた彼女の表情は、ずっと見てられるくらいに可愛いものだった。


学校────
「おはよう皆」
『ソフィアちゃんおはようー!』
『え!?マフラー着けてるじゃん!可愛い〜』
みんな隣に居る私には見向きもしない。
当たり前だ。ソフィアは可愛すぎるし、私なんて目に入るわけもない。
大人しく私は席に着く。
「うん、そうなの!実はこれ自分で編んだんだ〜笑」
『えー!凄すぎ!!編み物までできるの?』
「でも実は失敗作なんだ笑本命はまだ編んでる途中!」
『本命って手袋とか?帽子とか?』
「ううん、本命もマフラーなの」
『マフラー2種類も作るんだね!凄い〜なら今つけてるやつは予備とか?』
「まあ、そんな感じ笑」
『ほんとソフィアちゃんはなんでもできるよね可愛い』

周りからチヤホヤされてるソフィアを見るのは、なんだかいつも気が狂う。
別にそれは嫉妬とかじゃなくて、
「ね、ソフィアトイレ行こうよ。」
「うん、!分かった!ごめんね皆行ってくるね」
こうしてソフィアに用がないのに声をかけてしまうから。
「ソフィアあれ、自分で編んだの?」
「うん!すごい?」
ソフィアはいつもずるい。上目遣いをしながら可愛いかどうかとか、凄いかどうかとかを聞いてくる。
「凄いよ。」
「ハリーに褒められるのが1番うれしいんだ」
「嘘つけ、笑」
「本当だってー!」
ソフィアはよくこういう嘘をつく。
私の気も知らないくせに。

って別に、ソフィアに好意を持ってる訳じゃないから、からかわれた気分になる方がおかしいのは分かってる。


放課後───
『ソフィアちゃん一緒にカフェ行こうよ皆で』
「あー、ごめんね編み物があるから」
『今朝言ってたマフラー?凄いねほんと努力家すぎ!』
「そんなことないよ笑じゃあまた明日ね!」
『うん!バイバイー!』


「う〜寒すぎる、」
サクサクと音を鳴らしながら雪道を歩く。
「いいの、カフェ行かなくて。」
「えっ…ああ、聞いてたんだね」
「うん」
「別に大丈夫だよ、きっと私が居なくても」
「なにそれ。編み物が理由だったんじゃないの?」
「まあそれもそうなんだけどね、あの子たち皆わたしを神様みたいに思ってるでしょいつも笑」
「……まあ確かに」
「昔からだけど、わたしはなんでも出来るわけじゃないし皆だって得意分野くらいあるのに私を毎回崇めるようにしてもらっちゃ悪いでしょ」
「でも実際、ソフィアは得意なことが多いじゃない」
「ハリーからみてもそう思う?」
「思う。」
「ふふ、そっか。ハリーになら思われても悪くないかもね」
「なにそれ、」
「…というか、私ずっと思ってたことがあるの」
「なに」
「ハリーは私と違って美人でかっこよくてなんでもスマートにこなしてモテてるのに何で誰とも付き合わないの?」
「……先に言うけど、モテてないし前半の私への褒め言葉は嘘ですか」
「嘘じゃない!し、モテてるよ。私見たよこの間の」
「あー、もしかして神崎さんの?」
「うん、他にも建部さんとか四宮さんとか」
「……」
「ね、モテモテじゃん」
「別に、あれは皆が純粋に可愛すぎるだけ。ピュアすぎて私の性格の悪さとか出来損ないな部分が見えてないんだよ」
「私以外にも可愛いとか言うんだねハリー。」
「ソフィアに言う可愛いとはまた意味が違うけどね」
「…私は特別ってこと?」
「…そんな事より、もう家着いたでしょ、帰るよ」
「はあー、わかりましたー」
「また明日」
「うん、また明日ねハリー」


翌日───
「おはよう、ハリー」
「ソフィアおはよう。寒いね」
「マフラーしてないからだよ」
「それは関係な……わっ、」
いきなり私の首に抱きつくようにして、ソフィアが赤いマフラーを巻き付ける。
「な、なに急に」
「…プレゼント。昨日寝ずに頑張ったんだからね」
「っ!これ、もしかして昨日言ってたマフラー、?」
「うん、ハリーが寒がりなのは私が一番よく知ってるから」
「笑寝なかったって…わたしのために?」
「そうだよ」
「…ほんとに嬉しい。ありがとう。」
「そんなにハリーが喜んでくれるなら作ってよかった!私と色違いなんだよ」
「ソフィアは青色なんだね、似合ってる。」
「ねえハリー、」
「ん?」
「マフラーをプレゼントする意味って知ってる?」
「知らない」
「あなたに夢中って意味。」
「…なに、それ」
「ハリー、好きだよ」

この瞬間、初めて霜降る朝を寒く感じなかった。

11/27/2025, 6:01:10 PM

寝る前のこの至福の時間が、心の深呼吸をする時。

11/12/2025, 4:02:27 PM

高貴な音楽と共に足を弾ませて華麗に踊る。
沢山の人々の中に紛れて、手を取り合っていく。
美しいドレスが花のように広がって。
どこを見渡しても華美な絵画に置物に食事に庭がある。


「お嬢様、失礼致します。」
「どうぞ」
「舞踏会は無事終了致しました。本日も何事もなくご来客頂いた方々が安全で安心できるような舞踏会を開けられたこと誠に光栄でございます。お嬢様も本日は大変疲弊なさったとお思いですので休息なさってください。」
「ありがとうムッシュ。」
「とんでも御座いません。それでは、失礼致します」

気品高い細々とした物がこの部屋、城には沢山ある。
クローゼット1つにもクリスタルや価値の高い宝石が使われている。
誰もが憧れるこの豪邸に、私は王女として住んでいる。
私はこの国のトップに生まれた。
生まれたときからキラキラした輝いたものばかりに囲まれていて、食事も身の回りの事も全て執事やメイドがやってくれていた。
当たり前だけど、私だって国のことは沢山知っているし常に毎日勉強しなくてはならない。
学校という場所に通っていない限りは、物心なんかがつくそのずっと前からもう頭が良くないとならない。
けれど私は、この暮らしに嫌気がさしたことはない。
そもそも、容姿や中身で困ったことがない私は外に出て自由を望むわけでもない。外なんかに出たら、あっという間に世界中が大騒ぎするから。
かといって、いくら外の世界に出ない私でも私、いや私たち貴族に向けて世間からどんな風に見られているのかは知っている。
"なんでもかんでも召使いがやってくれる"、"自分達だけが良い暮らしをしてる"、"どうせお城の中は意味もなく高価な物だらけ"
そんな偏見は、私たちの耳にも入っている。
正直、中には事実もある。
生活のことは全て執事やメイドにやって貰っているし毎日豪華で健康な食事をさせて頂いているし、艶やかなお城に住んでいるのは事実。
だけど、私には一つだけ命のように大切な物がある。
それがティーカップだ。
それは、1つ1つのデザインが細々とした宝石でできていたり絵画が描かれていたりはしない。
飲み口が全体的に少しくすんだ赤色で、手で持つ部分は普通の形。決してお花のような形にはなっていない。
そんなティーカップのどこが良いのか、と思うかもしれませんが私は大事に大事にしています。
ここのお妃である母が病で亡くなってしまったときの形見ですから。
妃が存在しない国なんてと母が亡くなってから10日の間、ずっと言われ続けている。
私は母が亡くなってからこのお城の豪華さ、食事が毎日用意されている有り難をより理解するようになった。
全てが繊細で美しく作られていて、ドレスや靴も全てが特別な物だ。
けど、この少し小さくて今の私には足りないくらいの紅茶しか飲むことの出来ないティーカップが、私の生きる意味をまた少しづつ、伸ばしていてくれる。


"ティーカップ"

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