勝手に 出たり入ったりしないでよ
わたしは 瞼の裏で
あの人との未来を 想像しているだけ
心の中に押しかけて
お互いにふんぞりかえるのも
居座って喧嘩するのも
やめて
勝手に出たり入ったりするなら
小さなカップケーキでも 用意して
それから あがり込んでよ
言っとくけど
土足は駄目、
次やったら出禁
-安心と不安
男女が向かい合うシルエットが見えますでしょうか?
女性側が腕を伸ばしていますね
影ぼうしの恋人の背中を
捕まえようと
したのでしょうか
それとも
これから走って
逃げるつもりなのでしょうか
光の名のもとに
すべてをあきらかにしても
誰も幸せにならないと
思いませんか
-逆光
「ガラガラと崩れた
分厚い境目を
踏み越えて
抱き合った人々がいました。
わかれわかれになった
生き方が
もう一度出会うなど
夢にも思わなかったのです
しかし それは
とうとう現実になったのです」
先生は
そんな話をしながら
隕石のかけらのような
ゴツゴツしたものを
教卓にあげました。
「これは星のかけらでも
石炭のかけらでもありません
歴史のかけらです。
これは 砕かれた壁の一部です。
みんなの夢のかけらです」
わたし達は
教科書をめくる手を止めました。
ざわついていた教室はしいんとなって、
全員が "夢のかけら"をしげしげと眺めました。
夢のかけら が
どんな風に旅をして
わたし達の国に たどり着いたのか
どんな人が
夢のかけらを 持ち出したのか
みんなみんな
気になって仕方がないのです。
わたし達は 先生が話はじめるのを
待っていました。
先生は夢のかけらを手に持って、
教室をぐるりと見回しました。
「時間を行き来することは
タイムトラベラーだけの仕事では
ありません。
君たちが 歴史を学ぶことも
タイムトラベルに繋がります」
先生がそう言い終わらない内に
教室の後ろ側から
銃を構えた人々が押し入ってきて
わたし達をどなりつけました。
「いいか
西の連中の話はするな。
事実に基づいた勉強だけが
お前達を豊かにする!」
わたし達は俯いて
スカーフの淵に
顔を押し付けました。
涙さえも ごまかさないと
ここでは生きていけないのです。
-こんな夢を見た
-タイムマシン
履き潰したサンダルだけが
屋上のフェンスの前で
踏みとどまって
ビルの空に
星の港に
飛んで行くわたしを
見下ろしてる
逆さまって
どうしてこんなに
落ち着くの?
ひとり 暗闇に浮かんで
明日に煩わされなくて
済むから
落ち着くの?
-特別な夜
海に抱かれて
見えない底へ
涙も声も
潮水に 溶ける
波にのまれて
深い溝へ
誰も彼も
ついて来れない
泡に包まれ
コバルトブルーの
悲しみへ
-海の底
冬だからって
頬を寄せ合うのは
恋人だけに許された
『好き』の交換であって
誰でもいいって
ことじゃない
だけど あんたは
違うんだ?
あたしじゃない人
部屋に呼んで
楽しかった?
月曜日の夜だってのに
ネオンの光は強気で
負けそうになるけど
はあはあ走って
ここまで来た
あたしの気持ちは
どうなるの?
どうでもいいって
思うわけ?
-君に会いたくて