-ざわめく心
ハザクラ先輩、東京行くって。
昨日の放課後に聞こえてきた噂が、あたしの心を打ち砕いた。
先輩はこの間まで、地元に残ると言っていた。
たまにあたしと遊んでもいいと約束してくれた。
でも……東京は夜行バスじゃなきゃ無理。
「コンノも来年は同じ境遇だからなー、頼むぞ」
無理して笑ってた姿が蘇ってくる。
あの日、先輩がわしゃわしゃした前髪に櫛をいれて、めちゃくちゃ梳かす。
真っ直ぐに整えて、頑張って分け目をきれいにして、だけど先輩そんなことには目もくれない。
いいや。もう。櫛をポケットに入れて、あたしは女子トイレを出た。
先輩の気持ちが変わることを責めたりはしない。
あたしがいちいち流されずに、笑って受け止めてればとりあえずは平和だし。
ハザクラ先輩は東京へ、あたしは三年の教室へ移動して、その生活に染まりきって忘れちゃえば、もっと平和。
ざわめく心を失くして、あたしたちは穏やかな毎日を過ごせばいい。
短くしたスカートに、窓の隙間から入り込んだ春風が容赦なく吹きつける。寒いから早く帰ろ。
先輩の教室に顔を出さなければ、歩いて10分で駅に着くでしょ。
君を探して
十二時の鐘に急かされて どこへ行くんだ?外へ出るのは危ない
闇夜に臥す ガラスの靴を捕まえるも 君はとっくに消えていた
さようならも言わず 馬車に飛び乗った人を目にしてから 眠れない
この靴を手がかりにしてまた会えるのか…と 思いわずらい日が昇る
透明
透明すぎる靴を脱いで あなたの前からいなくなろうと決めた
真夜中に姿をみせたネズミとトカゲと 裸足で急ぐ帰り道
朝靄にかすむお城で あなたの瞼は 眠りにつくのでしょう
さようなら ワルツを踊り明かした夢が ちゃちなかまどで燃え尽きる
終わり、また初まる
悲しいことの連続は活動写真のやうですね
鮮やかに この胸を 傷つけて尚愛おしい
なにゆえ 人は 誠を求め 嘘を 嫌うのです?
フィルムに 焼きついた 嘘には
熱をあげる といふのに。
星
まだ見ぬ星をつくるため 僕らは楽園を離れたかったんだ
あなたの眼に映る宇宙(そら) わたしの目指す空 いつまでも重ならない
すべてを0に戻す 君が突然ひとりで泣いたりしないように
神様の目を盗んでふたりきり おでこに誓いのキスをください
青い林檎を持ち去った夜は よく眠れなかったんだ わかるかい?
つたない言い訳を残してきたの 「真実を育てることからはじめます」