MiL

Open App
9/25/2025, 12:57:13 PM

#パラレルワールド


    雨予報は、なかった。


   『帰るまでに止んで良かったね』


 放課後の下駄箱、雑談によりガヤガヤする会話に


      心の中で同意する。


  いつも入れていた、折りたたみ傘をどこかに


 忘れてしまったらしく、雨を見ながら頭を抱えて


       いたところだった。


    ざわめきから離れるいつもの帰り道


   ふと、凪いだ水溜りを何気なしに覗くと

      
   『あちら』も『こちら』を覗いていた。


   そして、悪びれもなく鞄から出した


    折りたたみ傘をこちらに落とした。


  端から見たら逆再生のように見えたことだろう。


      あちら側の自分はもう居ない。


 そして、水溜りを踏んでも靴が濡れただけだった。

9/18/2025, 3:01:36 AM

#靴紐


    ヒックッ……、フッ……、グズグズ…


    『どうしたの?』

  「靴紐がなくて、スンッ……、歩けない」

     『紐はなくても、歩けるよ?』

   「でも、でも…、みんなと違うッ」

     『違っても、大丈夫だよ?』

     「……歩くのが遅くなるもん」

     『自分のペースで大丈夫!!』

  「置いていかれたら不安になる。……怖いんだ」

 『う〜ん…、ずっとは無理だけど、ちょっとなら』

     「一緒に歩いてくれる?」

     『いいよ、ちょっとね』

      「……ちょっとなの?」

  『うん。私も、キミも進む道が違うからね』

     「ついて行ったらダメなの?」

 『無理してついてきたら、置いて行かれるから』

       「ひとりは嫌だよ」

    『ひとりじゃないよ。周りを見て』

休んでる人、紐を結び直してる人、まだ後ろにいる人

ずーっと先を歩いてる人、そして、隣りにいる人。

『ゆっくりでも、ちゃんと歩いてる自分を褒めてね』

         「……うん」

8/29/2025, 3:27:37 PM

#心の中の風景は


    私は、ある施設で働いている。

      そこは、さまざまな事情で

  感情を無くしてしまった様な人々が

    集まる場所……ここは実験場なのだ。

    国から依頼され、人の深層心理を

   映し出すための装置を作っている。


   ある日、新しい入居者が入ってきた。

  私に担当が回ってきたため、何気なしに

     患者のデータに目を通す。

       同郷のクラスメイトだった

    名を呼んでも、手を握っても

  虚空を見つめるだけで、反応はなかった…


   数年の後 ただ一枚だけ映像が撮れた。

     何気無い、本当にただ何気ない

      『あの頃』のクラス風景


   その数日後、安らかな眠りについた。

8/18/2025, 2:49:56 PM

#足音


         夢と現の狭間


        廊下を歩く足音……


         今年、初盆

8/15/2025, 5:43:37 AM

#君が見た景色


      これは、早朝の話


      吸い込む息が喉を焼く

     
   まだ辺りは薄暗く、足元を照らすライトが


         唯一の道標


   凹凹した山を気力だけでなんとか登る


   喉を焼くほどの寒さのはずなのに、


         流れる汗


     頂上につき、一息つく間もなく


      地平線から除くご来光…


       涙が流れた。


             その理由は、

Next