#この場所で
『春になったら、この場所で会おう』
そう言って廻った4度目の春
待ち続ける私に、見かねた彼の家族が
告げた真実
約束の春に彼は旅立った·····
それでも、春を迎える〖この場所で〗
#どこにも書けないこと
「あっ!先輩、目が合いましたね!!」
『······』
「無視するなんてひどくないッスか?おーい!!」
『······』
「いつまでそれ見てるんッすか?もう、物が握れないから、書き込んであげることも出来ないッすよ···。」
『······なんで、死んじまったんだよ······バカッ』
「あれは···、反射です!!とっさに体動いたって言うか···、助かってよかったです。先輩」
『悪かった···ゴメン、···ゴメン、······本当にゴメン』
「あー、最後に何かポルター何とかってやつで伝えたい!!書きたい!!」
〖80年後にまた会いましょう〗
#時計の針
いつから、その刻む針を
無意味と感じるようになっただろう···
彼女が眠るように時を刻むのを止めてからだろうか?
ちょうど目線の高さにある時計を眺めても
秒針の音さえ聞こえない。。。
買い取ってくれるなら売ってやるよ··········こんな人生
彼女が愛した街
彼女が好んで使っていたマグカップ
彼女がいつも座っていたイス
彼女が愛してくれた······自分
彼女だけが取り残されて
重ねていく時間
憎くて、憎くて、憎くて、、、愛しい
今日もまた時を刻む
#逆行
上の階へと向かう階段の最中
窓からのぞく眩しいほどに刺す夕日
思わず涙が滲んだ······
階下から名前を呼ばれ、
振り向きざま違和感のないよう涙を拭った
#ゆずの香り
寒さがまし、キツく合わせるコート···
あまりの寒さにふっと入った喫茶店
店内の暖かさに、先に入っていた客が
思わず脱いだ。
その時、香ってきたのは