不条理
大好きだと言ってください
二度と愛してるなんて言わないでください
どうかお昼まで眠っていてください
朝おはようと笑いかけてください
どこにも行かないでください
どこへでも好きな場所へ飛んで行ってください
一人ぼっちにしないでください
飽きたら気軽に使い捨ててください
分別は燃えるゴミです
価値なんて見出さないで
宝物みたいに大切にして
ガラクタの底から見つけてくれてありがとう
お願いだからつまらない物なんて拾わないで
背中合わせでいてください
真正面から向き合ってください
どうか良き理解者でいてください
無遠慮に踏み込んで荒らさないで
いつか
整合性の取れない想いの言語化が上手くできますように
泣かないよ
顔を上げる。マスクを外す。肺を刺すような冷たい空気を躊躇なく吸い込む。一息に吐き出す。肺がひっくり返るくらい吸い込む。吐く。
もう一度顔を上げる。意識的に前を向く。ボケっトに突っ込んだ左手をきつく結ぶ。右手のスマホから流れる曲の音量を上げる。サビ手前。エスカレーターに乗せた足を前に踏み出す。慣性を利用して上る。脳を殴るような重低音。耳の中で情報が飽和する。
息を吸う。思い切り吸って、吐く。マスクをつけ直して無理やり口角を上げる。
泣いてたまるか。
怖がり
怖がりな君に あめ玉をひとつ
ほどけた柔らかさ 甘ったるい香り
とけて ゆらいで 飴細工
怖がりな君に 明日をひとつ
包み込む優しさ 透き通った陽の光
ゆれて ゆらいで 布の内
怖がりな君に 言葉をたくさん
前も後ろも ぎゅぎゅっといっぱい
触れて 包んで ハードカバー
怖がりは優しさ 君の臆病はきっと愛
その透明な愛が いつか誰かを包みますように
怖がりは慈む心 「大切にしたい」の裏返し
君が恐る恐る紡ぐ言葉が いつか誰かの光になりますように
大丈夫だよと 無理に笑う君
奥に仕舞いこんだ 恐怖と我慢
優しく光をあてて 溶かしてあげる
明日はきっと 怖くない
星が溢れる
ハロー、ハロー。聴こえますか?
こんばんは、あるいはおはようございます。時刻は深夜1時を回りました。
──これから就寝の方も、そうじゃない方も、少しだけチルタイム。
今夜も始めていきましょう、『真夜中通信』周波数が合いました。
***
改めましてみなさんこんばんは。案内人の△△です。この番組は自然保護地区天文部と中央放送電波管理部の協力でお送りしております。
いやー今日もいい天気でしたね。みなさんお昼外出ました?
まぁ深夜帯の旅人たちはたぶんあんまり外でないのかなーとは思うんだけど。ほら、今書類物の締切がたくさんあるでしょ?それで外出たんです。郵送でも良かったんだけど、ちょっと提出期限ギリギリで(笑)
1歩外出て、うわぁってなりました。そう、「うわぁー」って。
──暖かいんですよ!
気づいたら春なんですよ。言われればそうなんですけど、今日それをやーっと体感しました。自然保護地区とか行きました?木々に色彩が戻ってきてましたよ。春の色合いってすごく綺麗ですよね。
では、一通報告書を。あ、報告書って言うのは「おたより」ってことね?初めての人はびっくりしちゃうからね、別に仕事ではないのですよ。あ、ちなみに、リスナーのみなさまは「旅行者」です。そういう設定です。星星を旅する中でたまたま周波数があった通信、というコンセプトでやっております。
で、報告書ね。
『△△さん、旅行者の皆さん、こんばんは。』
はい、こんばんは。
『今日星を旅してて見つけたことなのですが、道端にオオイヌフグリとたんぽぽが生えていました!太陽が眩しくて前を向いてなかったのですが、下を向いて歩くのもたまには悪くないなと思いました』
ということで。いいですね、オオイヌフグリ。春の花…でしたよね確か。青くて小さくてい〜っぱいぎゅっとなって咲くやつ。残念ながらここには自生してないので本物は見た事ないんですけど。日本の花でしょ、図鑑で読みました。タンポポもいいですね、黄色くてかわいい。春って案外足元から始まるのかもしれないですね。
星と星が交わるひととき。そろそろお別れのお時間です。
寂しがらず、次に繋がる時またお会いしましょうね。
この番組では旅行者の心から溢れた言葉を集めています。内容はどんなものでも大丈夫。皆様の報告書を楽しみにお待ちしております。
宛先は星詠町、3-5-9流星塔カシオペアまで、レポート用紙は読めるものなら書式も色も問いません。
それではみなさま、おやすみなさい。