まそむ

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2/28/2026, 10:48:49 AM

僕は故郷を捨てる決意をした。
一切れのパンとナイフとランプをカバンに詰め込んで、いくばくかのお金を持って、愛するギターと一緒に高速バスに飛び乗った。

僕の故郷は田舎だ。
駅には人も居ないし、街灯だって少ない。冬には熊や猿が畑を荒らす。

こんなところで燻っていてたまるものか。都会へ行って、僕は夢を叶えるんだ。父母に否定された夢を。畑を継げとしか言わない両親に、僕の夢にかける情熱がホンモノだって見せつけるんだ。

僕の胸は、来たる苦難など知らずに、熱く熱くたぎっていた。

【遠くの街へ】

2/27/2026, 10:57:17 AM

テストの点数を見て、危機感が増した。期末こそはマシな点をとらねば赤点だ。よし、僕は鉢巻を締めた。さて部屋を見回すと勉強する雰囲気ではない。あちこちに誘惑が潜んでいる。僕はそれらを片付けることに決めた。

あ、懐かしいアルバムだ。よく聴いていたなあ。久しぶりに聴いてみよう。あーこの雑誌失くしたと思ったらここにしまっていたのか。

時間がどんどん溶けてゆく。部屋は片付くどころか前よりものが散乱しているような? でも期末のため、僕は......ああこれも懐かしい! つい見入ってしまう。

もちろん僕は期末で失敗し、赤点をとった。

【現実逃避】

2/26/2026, 10:15:58 AM

SNSでこんな投稿を見た。
20年前に里子に出した子猫が家族に見守られて天使になったというお話。

猫にとっての20年は長いなあ。
そう思った時、そういえば僕も、と思い出した。

20年はいかないと思うけれど、そのくらい長い記憶。
随分前にちびすけを里子に出した。
目が開いたばかりのちびすけはミィミィ鳴いていた。
小さすぎて、ママから離していいか凄く悩んだ。
でもママにはもう避妊手術をして、最後の子どもだった。そんなママを看取って結構経つ。ちびすけは今頃ふてぶてしく育っただろうか。どこかで、元気で幸せで居てくれれば、それで良いよ。

【君は今】

2/25/2026, 10:38:30 AM

鉛色の重い雲。
こんな空の日は大抵雨か雪が降る。

そして僕は今日、傘を持っていない。

みるみる暗くなっていく空に、傘の今の持ち主を思う。みかんの段ボール箱に猫と赤ちゃん猫たち。うちはアパートで飼えないから、風避けに差し掛けてきた僕の傘。折りたたみで、親がデパートか何かの忘れ物処分で貰ってきて、くれた傘。

誰か拾ってくれたらいいな。
親猫はお産が終わったばかりのようで弱っていた。
でも赤ちゃん猫にとって親の命は命綱だ。

僕は祈りながら空を見上げた。雨はまだ降らない。

【物憂げな空】

2/24/2026, 11:05:52 AM

僕はみんなのママになってしまった。小学校高学年のママ。子ども達はうさぎとニワトリとメダカだ。そう、別の言い方をするなら、僕は生物係に選抜されたのだ。生徒が少ないから、僕だけが生物係だ。

メダカは25度の水温を保って、藻についた卵を別の水槽に移して。うさぎとニワトリは小屋のお掃除をしてそれぞれに餌をあげる。

毎日学業の合間に忙しく面倒を見ていたら、嬉しい驚きがあった。うさぎとニワトリが子どもを産んだのだ。もちろんニワトリは卵だ。うさぎの赤ちゃんは小さかった。ふさふさの毛玉になる頃には、ニワトリの卵からヒヨコが孵った。

手のひらに乗ってしまう小さな命。僕が守ってみせるんだ。卒業までは、僕がママなんだから。

【小さな命】

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