星図とは、恒星の位置や明るさを平面に書き記したものをいう。
僕は夜空が好きだった。
良く星を見上げて自分なりに星図を作っていた。
お小遣いを貯めて天体望遠鏡を買うのが夢だった。
うん、気づいた? そう、過去形なんだ。
「勉強しなさい。机に向かいなさい」
僕の星図を取り上げて、ビリビリに破く親。
「空ばかり見て。あんた偏差値幾つだと思っているの」
僕の夢は、僕の情熱は、バラバラにされて、ゴミ箱に放り込まれた。
これは僕が人間から、人形になった夜のお話。
【消えた星図】
わたしには恋愛感情がない。
そういうふうに生まれついた。
だけど人を人として愛することはできる。
愛から恋愛要素を抜いたら何が残るって?
それは尊敬とか、尊重とか、相手を大事にしたい気持ちだと思う。
恋愛分からないわたしは、そう思う、ってだけ。
【愛-恋=?】
梨の別称に「ありの実」という言い方がある。
梨が「無し」に転ずるため、縁起のよい言い回しがあるのだ。
だけど。
夕ご飯の後に梨が出た。
剥くのは小学生のわたし。
小さい頃から刃物の扱いに慣れろと言われて。
まだ、ピーラーもない時代。
一生懸命、皮を剥いて、六切りにして、芯をとって。
家族全員分剥いたら、手を洗って、やっとデザート。
「食べてもいいですか?」
「あんたの梨は無し」
ありの実、と言わなかったわたしの皿が、親に取り上げられる。
わたしはフォークを持った手を、虚しく下ろして。
親の笑い声が背後から追ってくるから、急いで食卓を去るのだ。
梨を見ると今でも思い出す。
日常茶飯事だったなあ、って。
【梨】
空を見上げて、ボクは鼻歌を歌っていた。
踏みつけられてぐしゃぐしゃになったカバン。
いっぱい汚い言葉が書かれたノート。
制服の背中にはきっと靴の跡。
腫れた頬がひりついて痛い。
でもね、ボクの学校には、いじめなんてないんだって。
ボクは帰り道の適当なビルにのぼった。
非常階段を一番上まで上がる。
空が、近い。なんて澄み渡った空なんだろう。
「ラララ、さよなら、世界」
ボクは鼻歌を歌いながら空に身を投げた。
【Lalala good bye】
出口のないトンネルを歩いている。
明けない夜はないと言い聞かせて、歩を進めるが、明けない夜はあるのだ。
どこまでも、闇しかない、苦痛の時間。
医師はわたしを、鬱状態であると診断した。
別の病気からくるものだから、寛解しても完治はない、とも。
どこまでも、どこまでも続く、出口のないトンネルを、歩いている。
【どこまでも】