もしも自分に鳥のような翼があれば、こんな世界に縛られる事なく自由に暮らせたのに…
もしも自分に大きな翼があれば、あの広い空をどこまでも飛んで行けたのに…
木に留まって鳴いている小鳥たちを見る度、大空を羽ばたいている渡り鳥を見る度、僕はそんなことを考えてしまう
ある時、スズメが玄関の前に巣を作った
ヒナが「チュッチュッ」と鳴いて、親鳥が忙しなくエサを運んでくる
僕は、社会人1年目で毎日寝る暇もないほど忙しかった為その様子にとても癒やされていた
ある雨の日、家に帰ると玄関先にスズメのヒナがびしょ濡れで震えていた
羽が生えそろったばかりらしく、きっと飛べなくて巣から落ちてしまったのだろう
そのまま戻すのも可哀想だと思い、僕はタオルで拭いてから巣に戻してやった
いつの間にかヒナたちは飛ぶ練習を始め、巣立ちしていった
親鳥について次々と巣から飛び立っていく姿を見て、何故か僕は感動してしまった
それ以来、街中でスズメの鳴き声が聞こえると「あ、あのヒナかな」と思う
そして、「僕も頑張るよ」と応えたくなる
そう…これは、僕が前向きになれるきっかけになった時の話
「さよなら」なんて言いたくない…
なぜなら、明日また会えるなんて保証は無いから
会いたいのに…会えなかったから…
「またね」なんて約束できるの?
期待させておいて裏切られた…
そんな寂しい僕を愛してくれる?
そっか…じゃあ明日も待ってるよ
「いつまでも、君といたいから…」
夢なら覚めないで…
ある日、夢をみた
大学受験を受けるために東京に行って、あの時くだらない喧嘩別れをしたあなたと街中でバッタリ出会えた夢を…
「〜〜?」
街中を歩いていたら、急に名前を呼ばれたような気がした
本名ではない、家族は知らない昔名乗っていたあだ名のようなものだ
呼ばれたと言っても声が聞こえた訳ではないけど、振り返って視界に入った瞬間あなただと確信した
それと同時に「あぁ…これは夢なんだ…」とも思った
僕は、あなたと直接会ったことも話したことも無いし、写真を見たことも無い
まず、この人口密度が高い東京で偶然出会うなんて事がありえない…それに、あなたは僕に直接会うことを拒んでいたから尚更だ
夢だと分かっていても、涙が溢れてきて駆け寄らずにはいられなかった…
夢だから…冬なのに暖かい、冬なのに桜が舞っている
(ずっと…このまま夢から覚めなければ良いのに…)
あなたに触れることができて幸せだから…直接話せて幸せだから…そんなことを望んでしまう自分がいる
でも、所詮夢だ…あなたが言わないようなことでも言わせられる夢だ…僕の都合の良い方に進められる夢…
そう思っても、あなたの温もりを感じられる嬉しさのほうが勝ってしまう
「〜〜!…もう絶対に離さない…」
ずっと…この世界に…閉じこもっていたかった…
〈振り向いてもらえないあなたへ〉