Nihil

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夢なら覚めないで…


ある日、夢をみた

 大学受験を受けるために東京に行って、あの時くだらない喧嘩別れをしたあなたと街中でバッタリ出会えた夢を…
 
「〜〜?」
 街中を歩いていたら、急に名前を呼ばれたような気がした
 本名ではない、家族は知らない昔名乗っていたあだ名のようなものだ
 呼ばれたと言っても声が聞こえた訳ではないけど、振り返って視界に入った瞬間あなただと確信した
 それと同時に「あぁ…これは夢なんだ…」とも思った
 僕は、あなたと直接会ったことも話したことも無いし、写真を見たことも無い
 まず、この人口密度が高い東京で偶然出会うなんて事がありえない…それに、あなたは僕に直接会うことを拒んでいたから尚更だ
 夢だと分かっていても、涙が溢れてきて駆け寄らずにはいられなかった…
 夢だから…冬なのに暖かい、冬なのに桜が舞っている

(ずっと…このまま夢から覚めなければ良いのに…)

 あなたに触れることができて幸せだから…直接話せて幸せだから…そんなことを望んでしまう自分がいる
 でも、所詮夢だ…あなたが言わないようなことでも言わせられる夢だ…僕の都合の良い方に進められる夢…
 そう思っても、あなたの温もりを感じられる嬉しさのほうが勝ってしまう
「〜〜!…もう絶対に離さない…」



 ずっと…この世界に…閉じこもっていたかった…


〈振り向いてもらえないあなたへ〉

8/20/2023, 6:00:01 AM