褪せた古いアルバムを開くと白無垢姿の若い母が微笑んでいた 少し俯いた隣にはやはり若い父 今はもう会えない親族たち 永遠に止まった時間と無常に流れる時間 白紙の未来へ進むべく最後のページに咲く四つ葉のクローバー その花言葉は
#幸せに
貴方の幸せを誰よりも願ってた
お花と拍手を浴びて
まばゆい笑顔のお二人の
門出を心から祝福するわ
貴方との幸せを密かに願ってた
私のコイゴコロは
きらめくキャンドルで燃やして
残像を心にしまっておくわ
#ハッピーエンド
仕事が終わり 野菜の森をかき分け進むと
ちょっと潤んだ大きな瞳がこちらを見ていた
深淵を覗くように虚ろにも見えるし
こちらの心を見透かしているようでもあり
お互い値踏みしているのかしらと
私も負けずに見つめ返した
決めた。この子にしよう
炊飯器からフツフツ湯気が立ち
野菜の森で物色したものたちが煮えてきたら
さて 可愛い瞳のあの子に塩をまぶそう
透明な瞳はどこの海を見ていたのだろう
元気に泳いでいた姿を思い浮かべて
なんだか躊躇してしまうけれど
ごめんね。大事な生命をいただくね
そんな気持ちを込めて焼いていく
今夜はアジの塩焼き
いただきますとごちそうさまは
食材たち 収穫者 販売者 作り手
すべてに向けた感謝の言葉
忘れてはいけない感謝の心
#見つめられると
三月 寒の戻り
まとわりつく細かな雨をかき分け
ふと漂う 心目覚める香りを辿ると
可憐に咲く沈丁花に出会った まるで
仄かな灯火 霧雨に滲む明かりの奥に
春へと続く扉が隠されているようで
あともう少し まだ早いと思いつつ
はやる気持ちを抑えきれず
目を閉じれば扉をたたく胸の鼓動
#My Heart
恋人がいるときはひとりの気ままが懐かしい
恋人がいないときは誰かの温もりに憧れる
実家暮らしだと親兄弟の存在が面倒に感じる
一人暮らしをすると家族の有難さを知る
#ないものねだり