君と歩いた道は、風が心地よく吹き抜けていた。弾む足音が静かに時を刻んでいたよ。道の向こうには、自由な青空が広がっている。
君と一緒なら、その道で跳ぼうが潜ろうが、どんなことも安心できたのさ。
それは僕にとって、日常でありながら、特別なひとときでもある道だった。
「君と歩いた道」
少女は夢を見た。彼女は夢の中でアイドルスターになりキラキラの舞台でファンに手を振りながら歌っていたんだ。
少女はこの夢を未来からのメッセージだと思い、勢い全開でアイドル養成所に通うことにした。
学校が終わると、お友達と遊びに行って大好きなパフェを食べたりするのをやめて、養成所でひたすら歌とダンスのレッスンをしたんだよ。
でも何年経ってもデビューは遠く、彼女はいつの間にか夢みる少女から、大人になってしまった。
養成所を卒業した彼女は、アイドルの夢を手放し、少女の時を取り戻すかのように、甘いパフェを貪る日々を送り始めたのさ。
そして数年後、彼女はメディアの片隅に現れることになった。
ダイエットタレントとして時々テレビに出て、視聴者にパフェ体験を語りかけている。
「夢を追いかけるのもいいけど、時にはパフェを食べて心満たされるのも悪くないわ。パフェを口にしながら"私の好きなアイドルは、私よ"って心の中で呟くの」ってね。
「夢見る少女のように」
キュウリ猫の国の猫たちは普通猫より進化して皆が賢く特別な能力を持っていた。キュウリ猫たちは、普通の猫をバカにし、眉間のシワは日々深まるばかり。退屈な毎日を送っていた。
ある時、ひとりのキュウリ猫のチトは
「こんなに進化しているはずなのに、なぜ僕らは不幸なんだろう。もしかしたら、普通猫の国には、本当の楽しみが隠れているのかもしれない。僕は普通猫の国に行ってみたい」
と考えた。
これを聞いた他のキュウリ猫たちは、チトをバカにして笑ったが、チトの心はもう決まっていた。
彼は普通猫の国へと旅立つことにした。
チトが普通猫の国に行ってみると、自由に遊び回る猫たちがたくさんいた。
猫たちは、日向ぼっこをし、風を感じながら、悠々と自分の時間を楽しんでいた。
チトは普通猫たちに羨望の目を向けたが、チトのキュウリ猫の印によって、普通猫とは友達になれなかった。
悩んでいると、一匹のドラ猫がチトに近づいてきて
「君の眉間のシワを伸ばすことができるならその壁を崩せることが出来るよ」
と言った。
それを聞いて、チトは眉間のシワを伸ばしポワンとした気持ちになると、ほんの少しだけ退化し、笑顔になった。チトは普通猫になった。
今チトはのんびりとお昼寝をしながら、ドラ猫から学んだことを時折思い出している。猫たちの本当の楽しみをね。
「さあ行こう」
老嬢猫のヴィエイユは、ひんやりとした朝に、水たまりに映る空を見つめていた。水たまりは、美しい鏡のようだったが、すぐに干からびてしまう運命を抱えている。
ヴィエイユは、水たまりの中に彼女自身の過去が映されているような気がした。
「水たまりの中の美しい青空も昔の残像に過ぎないのかもしれない。きっと、水たまりは、優しい雨を待っているのだわ」
ヴィエイユもまた、新しく生まれ変わることができたらと願った。かつての彼女の華やかな思い出が水たまりに溶け込んでいるかのようだった。
その時、空の彼方から銀色のゴンドラが静かに降りてきた。
ヴィエイユは運命を受け入れ、新しい命を得るため、静かに天に召されていった。
「水たまりに映る空」
☆T.S.エリオットのグリザベラに想いを寄せて vieille dame
恋愛に身を投じ、切なさを深く知った時、目の前に輝いていた妖精の姿は消え去ってしまうかもしれない。
でも、その代わり、人々の言葉に新たな視点を見出すことができるようになるんだ。
小鳥のさえずりだって新しい響きさ。
それが、大人への階段を一歩踏み出すことかもね。
登ってみるかい?
「恋か愛かそれとも」