récit

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6/7/2025, 12:11:52 AM

キュウリ猫の国の猫たちは普通猫より進化して皆が賢く特別な能力を持っていた。キュウリ猫たちは、普通の猫をバカにし、眉間のシワは日々深まるばかり。退屈な毎日を送っていた。

ある時、ひとりのキュウリ猫のチトは
「こんなに進化しているはずなのに、なぜ僕らは不幸なんだろう。もしかしたら、普通猫の国には、本当の楽しみが隠れているのかもしれない。僕は普通猫の国に行ってみたい」
と考えた。
これを聞いた他のキュウリ猫たちは、チトをバカにして笑ったが、チトの心はもう決まっていた。
彼は普通猫の国へと旅立つことにした。

チトが普通猫の国に行ってみると、自由に遊び回る猫たちがたくさんいた。
猫たちは、日向ぼっこをし、風を感じながら、悠々と自分の時間を楽しんでいた。
チトは普通猫たちに羨望の目を向けたが、チトのキュウリ猫の印によって、普通猫とは友達になれなかった。
悩んでいると、一匹のドラ猫がチトに近づいてきて
「君の眉間のシワを伸ばすことができるならその壁を崩せることが出来るよ」
と言った。
それを聞いて、チトは眉間のシワを伸ばしポワンとした気持ちになると、ほんの少しだけ退化し、笑顔になった。チトは普通猫になった。

今チトはのんびりとお昼寝をしながら、ドラ猫から学んだことを時折思い出している。猫たちの本当の楽しみをね。


「さあ行こう」

6/5/2025, 11:26:15 PM

老嬢猫のヴィエイユは、ひんやりとした朝に、水たまりに映る空を見つめていた。水たまりは、美しい鏡のようだったが、すぐに干からびてしまう運命を抱えている。
ヴィエイユは、水たまりの中に彼女自身の過去が映されているような気がした。
「水たまりの中の美しい青空も昔の残像に過ぎないのかもしれない。きっと、水たまりは、優しい雨を待っているのだわ」
ヴィエイユもまた、新しく生まれ変わることができたらと願った。かつての彼女の華やかな思い出が水たまりに溶け込んでいるかのようだった。

その時、空の彼方から銀色のゴンドラが静かに降りてきた。
ヴィエイユは運命を受け入れ、新しい命を得るため、静かに天に召されていった。

「水たまりに映る空」

☆T.S.エリオットのグリザベラに想いを寄せて vieille dame

6/4/2025, 11:50:28 PM

恋愛に身を投じ、切なさを深く知った時、目の前に輝いていた妖精の姿は消え去ってしまうかもしれない。
でも、その代わり、人々の言葉に新たな視点を見出すことができるようになるんだ。
小鳥のさえずりだって新しい響きさ。
それが、大人への階段を一歩踏み出すことかもね。
登ってみるかい?

「恋か愛かそれとも」

6/4/2025, 12:24:42 AM

太陽が顔を出すと、月は背を向けてぶっきらぼうに言った。
「君は、昨日もそうだったよ。毎日が繰り返しだ。そのやり方はお父様と約束でもしたのかい」

太陽は言う。
「続けることは、誰かから約束させられたことじゃないよ。僕の決まり事なんだ。何かが変わるかもしれないしね」

太陽の言葉が、朝の風に乗って、世界をまた照らし始める。

「約束」

6/3/2025, 1:04:15 AM

UVカット99%のパラソルの下で、僕は無邪気なマドモワゼル気分で、色とりどりのお花のことを考えていた。
頭の中にはうっすらふわふわ音楽が流れている。
気がつくと、手に持つソフトクリームがゆっくりと溶けている。
僕はソフトクリームを誰の目も気にせず無心に舐めた。
周囲の笑い声やざわめきはどこか遠くの出来事のように感じられた。
溶けたクリームがポタポタ指先をつたっても、僕は僕の時間を気ままに楽しむのさ。

「傘の中の秘密」

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