老嬢猫のヴィエイユは、ひんやりとした朝に、水たまりに映る空を見つめていた。水たまりは、美しい鏡のようだったが、すぐに干からびてしまう運命を抱えている。
ヴィエイユは、水たまりの中に彼女自身の過去が映されているような気がした。
「水たまりの中の美しい青空も昔の残像に過ぎないのかもしれない。きっと、水たまりは、優しい雨を待っているのだわ」
ヴィエイユもまた、新しく生まれ変わることができたらと願った。かつての彼女の華やかな思い出が水たまりに溶け込んでいるかのようだった。
その時、空の彼方から銀色のゴンドラが静かに降りてきた。
ヴィエイユは運命を受け入れ、新しい命を得るため、静かに天に召されていった。
「水たまりに映る空」
☆T.S.エリオットのグリザベラに想いを寄せて vieille dame
恋愛に身を投じ、切なさを深く知った時、目の前に輝いていた妖精の姿は消え去ってしまうかもしれない。
でも、その代わり、人々の言葉に新たな視点を見出すことができるようになるんだ。
小鳥のさえずりだって新しい響きさ。
それが、大人への階段を一歩踏み出すことかもね。
登ってみるかい?
「恋か愛かそれとも」
太陽が顔を出すと、月は背を向けてぶっきらぼうに言った。
「君は、昨日もそうだったよ。毎日が繰り返しだ。そのやり方はお父様と約束でもしたのかい」
太陽は言う。
「続けることは、誰かから約束させられたことじゃないよ。僕の決まり事なんだ。何かが変わるかもしれないしね」
太陽の言葉が、朝の風に乗って、世界をまた照らし始める。
「約束」
UVカット99%のパラソルの下で、僕は無邪気なマドモワゼル気分で、色とりどりのお花のことを考えていた。
頭の中にはうっすらふわふわ音楽が流れている。
気がつくと、手に持つソフトクリームがゆっくりと溶けている。
僕はソフトクリームを誰の目も気にせず無心に舐めた。
周囲の笑い声やざわめきはどこか遠くの出来事のように感じられた。
溶けたクリームがポタポタ指先をつたっても、僕は僕の時間を気ままに楽しむのさ。
「傘の中の秘密」
雨上がりの空は透明で、僕は重力を忘れたように上を向いて歩いていた。青空がこぼれ落ちてくる。そんな気分だった。
でも、人生とは思いがけないことが満ちているんだ。
上ばかり見て歩いていたら、ボシャッと水たまりに足を突っ込んでしまった。
スニーカーから染み込む冷たい感触。ああ、なんとも言えない気持ち悪さだ。
まあ、こんな日もある。
小さな惨事は、心の中とスニーカーの中で反響している。
どこかで、また誰かが水たまりに沈んでいるかもしれない。
「雨上がり」