ユニバーサル大学哲学科の山本先生の教授室で飼われているセキセイインコが、イケメン猫にこんなことを語ったんだよ。
「ピヨ、ピッ、私の人生は鳥かごの中で繰り広げられていたの。
理想の未来を求めて鳥かごから飛び立ちたいと思ったこともあったけど、実は、その鳥かごの中に定められた幸せが詰まっていたわ。
その中で生きて、そしていつかは死を迎えることになる。
でも、守られた死は思い出として新しい生命の一部になるのよ。
私にとって鳥かごは決して不自由の象徴ではなく、どう生きるかを考えるきっかけを与えてくれるものなの、ピッピ」
セキセイインコちゃんも鳥かごの中でフィロソフィーしてたんだね。
「鳥かご」
夏休みに感想文の課題の「走れメロス」を理沙ちゃんが読んで
「すごく面白かった。
でもメロスの行動って短絡的すぎて、ツッコミたくなるところがいっぱいある感じ。
親友を人質にするなんて、おばかでしょと思っちゃう。
学校の感想文には、友人同士が信じ合う素敵な友情とか、作中のキャラクターに太宰治自身を見出したところを書いて提出しようと思ってるんだけど、
やっぱりツッコミどころも書いた方がいいかしら」
って悩んでる。
イケメン猫の僕的には、思ったことを全部書いたらいいと思うよ。
それが本当の感想だし、他の人とも共感できるかもしれないしさ。
「友情」
イケメン猫の僕と暮らすイザベラさんの中庭で、この夏も美しく花咲いた桃色オレンジのノウゼンカズラ。
イザベラさんが丹精込めて育てたんだ。
お庭のお手入れを時々お願いしている園芸家の中野源州さんが、いくつかのプランターに植えてリビングの南側デッキに並べてくれている。
午後に陽がさすと部屋からのぞく花びらが発光するように透けて、とても華やかな空間が広がる。
イザベラさんは、その可愛らしく咲き誇るノウゼンカズラを見ると幸せに満たされる。
花言葉は「溢れる愛」。
イザベラさんはその言葉のように、大切な家族にたっぷりの愛を注いでいる。
「花咲いて」
理沙ちゃんのパパは、未来への創造的思考と過去からの戦略的思考をもとに、企業の未来を構想するプロジェクトに取り組んでいるんだ。
これは「働き方の未来」をテーマにしたタイムマシンブランディングというもの。
データを活用して過去や未来をデジタル的に計測し、将来の企業設計を作成するらしいんだよね。
でも、もしもタイムマシンがあったなら、デジタル計測なんてややこしいことをしなくて楽チンなのにね。
「もしもタイムマシンがあったなら」
むかしむかし、ゾワメムというとても尊大な魔女がいました。
ある暑い夏の日、ゾワメムは「冷やし中華を食いたい」と思い立ち、中華麺を買うために夕方のスーパーへとやってきました。
ゾワメムは
「冷蔵庫にはきゅうりとハム、卵があるから、トッピングにはトマトがあと1個さえあれば十分じゃ。わしは料理が得意だから、大丈夫じゃろう」
と自信満々でした。
野菜コーナーに着くと、なんとトマトは残り2個になっていました。
そして、やはり同じスーパーで買い物をしていた白い魔法使いがその1個を手に取ろうとしていました。
その瞬間、ゾワメムは素早くダッシュして、2個のトマトを自分の買い物かごに入れてしまったのです。
白い魔法使いはトマトがなくなり残念な顔をしましたが、めっちゃ意地悪なゾワメムは「今、いちばん欲しいのはこの余分なトマトだわい」と、大満足しましたとさ。
「今一番欲しいもの」