récit

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6/30/2024, 3:07:50 PM

理沙ちゃんは、おばあさんであるイザベラさんに尋ねた。
「ねえ、おばあちゃまは運命の赤い糸をどう思う?」

イザベラさんは少し考えてから答える。
「そうね、運命の赤い糸というものがあるとしたら、その糸は1本だけじゃなくて、きっと何本かがあるんじゃないかしら。
そうだとしたら、その中から自分で1本を探して見極めて結ばなければ繋がらないわよね。
運命なんて自分の選択や行動次第で変わるのだから」

「じゃ、おばあちゃまの国際結婚もロマンチックな運命に任せただけではないのね」

「そうよ。でもロマンチックな想いはステキね」
と、イザベラさんは言う。

イザベラさんは若き日、フランス留学中の浅倉画伯と知り合って結婚し、日本に帰化したのだ。

「赤い糸」

6/29/2024, 1:03:44 PM

甘えん坊だったペターポも4歳になり、だんだんやんちゃな男の子に成長した。魔王をやっつけるゲームが大好き。

ある日ペターポがゲームに飽きて窓の外を見ると、夕焼けに染まる空にオレンジ色の入道雲がモクモクと広がっていたんだ。

そこでペターポは入道雲に向かって勇敢に叫んだ。
「ぼくは勇者ペターポだ。このタコ魔王よ、容赦はしないぞ!」
するとタコ魔王は雷を落とし、ゲリラ豪雨を降らせてペターポと対戦したんだ。

それでもペターポはペットロボットの「らぼっと君」をお供にして、お部屋から空に向かっておもちゃの"天空の剣"を振り回して立ち向かうのだった。


「入道雲」

6/28/2024, 1:01:42 PM

理沙ちゃんのおばあさんは、おじいさんのアトリエがある中庭でビニールプールに冷たい井戸水を貯める。
そして家庭菜園で収穫したトマトやきゅうり、お茄子、近所の八百屋さんで買ったスイカを、午前中にビニールプールで冷やしておくんだ。
それらをお昼にサラダやデザートとして美味しくいただいた後、プールの水が少し温かくなって、イケメン猫の僕はネコカキ泳ぎして遊ぶ。
僕はアビシニアンだから手足が長くて泳ぎは得意なんだ。
おばあさんはゴーヤカーテンの日陰で水遊びする僕を優しく見守ってくれる。

おばあさんは僕に優しいだけじゃなく地球にも優しいエコ生活を意識しているんだよ。

どこからか聞こえてくる風鈴の音がとても涼やかだ。

「夏」

6/27/2024, 11:33:32 AM

高速道路で唸るように追い越して行った白いポルシェカレラ。
驚くほどの猛スピードで駆け抜けて行った。

ポルシェカレラは素敵な車だけど、日本の道路であんな危険なスピードで運転していたら、事故を起こしてしまいそうで怖い。

いつかあの車はここではない別の世界に行ってしまいそうな気もする。

「ここではないどこか」

6/26/2024, 3:25:22 PM

最後に会った日に、彼女は「私のことはもう何も考えなくて大丈夫だから」と言った。
僕は頷いた。

僕の心は、もう彼女から離れてしまっているというのに、その言葉を聞いてから、むしろ彼女のことが頭から離れなくなった。

これはシロクマ効果と呼ばれる現象なのだろうか。

「君と最後に会った日」

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