理沙ちゃんのおばあさんは、おじいさんのアトリエがある中庭でビニールプールに冷たい井戸水を貯める。
そして家庭菜園で収穫したトマトやきゅうり、お茄子、近所の八百屋さんで買ったスイカを、午前中にビニールプールで冷やしておくんだ。
それらをお昼にサラダやデザートとして美味しくいただいた後、プールの水が少し温かくなって、イケメン猫の僕はネコカキ泳ぎして遊ぶ。
僕はアビシニアンだから手足が長くて泳ぎは得意なんだ。
おばあさんはゴーヤカーテンの日陰で水遊びする僕を優しく見守ってくれる。
おばあさんは僕に優しいだけじゃなく地球にも優しいエコ生活を意識しているんだよ。
どこからか聞こえてくる風鈴の音がとても涼やかだ。
「夏」
高速道路で唸るように追い越して行った白いポルシェカレラ。
驚くほどの猛スピードで駆け抜けて行った。
ポルシェカレラは素敵な車だけど、日本の道路であんな危険なスピードで運転していたら、事故を起こしてしまいそうで怖い。
いつかあの車はここではない別の世界に行ってしまいそうな気もする。
「ここではないどこか」
最後に会った日に、彼女は「私のことはもう何も考えなくて大丈夫だから」と言った。
僕は頷いた。
僕の心は、もう彼女から離れてしまっているというのに、その言葉を聞いてから、むしろ彼女のことが頭から離れなくなった。
これはシロクマ効果と呼ばれる現象なのだろうか。
「君と最後に会った日」
月の光を浴び白い花を咲かせる月見草。
月見草は夜空の月に恋をする。
優しく月に照らされ月見草は白い花弁の頬を桃色に染める。
はにかむ可憐な少女のように。
月見草は白から淡いピンク色へと変化して、夜が明ける頃しおれてしまう花。
はかない恋心は一夜限りの美しく繊細な夢。
「繊細な花」
不思議な小人たちは、小さな背中で世界を手なずける。
この小人たちの存在は人間には気付かれないけどイケメン猫には見えている。
彼らは周りに合わせて自動的に活躍するんだ。
国々が揉めたり、経済が不安定だったり、大多数の人が考えることを放棄したり、自然が乱れたりするのも小人の仕業だよ。
これは小人たちが意地悪なわけではない。
今はただそういう流れなんだ。不安定な時期なんだ。
一年後は小人がどんな動きをするのかはわからない。
心配なことは、時々大暴れする小人が人々の心にも入り込んじゃうこと。
そうならないようにするには、自分の好きなことを大切にすることが大切なんだ。
「1年後」