〇成

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10/25/2023, 8:51:51 AM

笑った顔が背を向けてドアを開ける。
それに向かって、思わず手を伸ばす。
でも、その先は空を切るどころがバタンとドアが閉まって物理的に遮断された。

おわったんだ。
あーぁ、せいせいするじゃない。
心配だってしなくていいし
不安にだってならなくていいし
嫉妬もしなくていい。
偏食に付き合わなくたっていい
出来もしないゲームに付き合わされることだってないし
好きでも無い香りの柔軟剤だってつかわなくてもいい。

―――それなのに

「行かないで……」

溢れた言葉と共に、涙が零れ落ちた。

10/23/2023, 1:33:28 PM

恋愛なんて、面倒だ。
だから特定の相手なんか作らなかったし、作ったところでほらまたこのザマだ。
「忘れものは」
「多分ねぇよ」
簡素に答えた言葉に、そう、と小さく短い言葉が返ってくる。
忘れ物なんてあったところでコイツは同じ職場の同僚だから困ることは無い。それも手を伸ばせばすぐ届くところにいる隣の席の住人だ。
今、向かい合って立つこの距離とさほど変わらない所にいるのだ。これからもずっと。
「今までありがとう…その、また、明日」
「おぅ」
別れの言葉と“また明日”のどうにもチグハグな言葉に口元が緩む。そのまま軽く手を挙げ言葉に応えると、いつものようにドアを閉めて歩き出した。
「…さぁて、どうするかねぇ」
独り言ちる言葉に応える人はいない。
宙ぶらりんの言葉に、胸がなんだかチクリと痛む。

また自由になった。
それなのに、すっきりとしないのは何故だろうか。

あの部屋にあった自分のものを詰め込んだ小さなボストンバッグを持ち直しながら、元恋人が、隣席の同僚が、よく見上げていた空をいつものように見上げる。

どこまでも続く青い空だけが、晴れやかだった。