色とりどり
君との思い出に色を着けてみることにした。
薄桃色は、恋人時代の甘酸っぱい思い出。
青色は、仲違いをして涙を流した日の思い出。
黄色は、恋の好敵手出現にヤキモキした時の思い出。
赤色は、君を愛しいと想った日々の思い出。
色とりどりの、君との思い出たちが心を埋め尽くしていた。
僕は、こんなに沢山の思い出を君と紡いで来たんだね。
一番新しい青色の記憶を、赤色に更新するために、僕は君のもとへ向かった。
雪
「寒っ」
肌を刺すような北からの風に体を縮める。まだ新年を迎えたばかりだ。これからも寒い日が続くことを考えると、気が滅入る。
幼い頃は、こんな寒い日でも薄着で外を駆け回っていたはずなのに、今ではコートやマフラーなしに外に出るなんて考えられない。
「年を取ったってことかなぁ」
まだまだ若いと思っていたが、年の流れを感じてしまった。
「新年早々、こんな辛気くさいこと考えてちゃダメよね……」
そう思うが、呟く声に覇気はない。
きっと新年の集まりで、従姉妹や叔母さんたちから「恋人はいないの?」「結婚はまだなの?そろそろ行き遅れになるわよ」などの遠慮ない発言により、メンタルを削られたからだろう。
確かに恋人はいない。良い出会いがあれば結婚もしたいと思う。反面、出会いがなければ独身を貫いてもいいと考えていた。
しかし「女は結婚するのが当然」と考えている親戚が多く、ここ数年、親戚の集まりでは肩身の狭い思いをしていた。
「あー、何かいいことないかな……あ、雪だ」
白いものが視界をかすめたと思ったら、雪が降り始めた。
寒いのは嫌だけど、雪が風に舞う様子を見るのは好きだ。
「少し散歩して帰ろ」
滅入った心が少し浮上した気がした。
君と一緒に
神様から提示された選択肢は二つ。
「心優しい貴族の子供に一人で生まれ変わる」か「寒く廃れた路地裏に孤児として二人で生まれ変わる」か。
どちらを選ぶか?
そんなの決まっていた。
来世でも君と一緒に生きられるのなら、そこがたとえ地獄だって構わない。
君が居ない世界に意味はない。
だけど、その選択を君に押し付けるつもりはないんだ。君がもうひとつの選択肢を望むのなら……僕は、それを受け入れるよ。
冬晴れ
窓辺に座り、暖かい日差しを浴びる。
夏のギラギラしら日差しとは違い、冬の日差しは穏やかで、ポカポカと温かいぬくもりに包まれた。
雪景色を眺めていると、買い物に出掛けていた彼の姿が見えた。
コートのポケットに両手を突っ込み、寒そうに体を縮めながら、玄関に向かってくる。
すぐにガチャッと玄関の開く音がした。
私は立ち上がり、彼の元へ向かった。
「あー、すごい寒かったっ」
玄関から入り込んできた外の風は、ひんやりと冷たかった。一瞬でも寒いと感じるくらいだ、外はとても寒かったに違いない。
「おかえりなさい」
そう言いながら彼にピトッと引っ付く。
「おぉ、温かいな」
暖をとるように、ぎゅっと抱き締められる。
日差しを浴びて温まった体は、冷えた彼で冷めていったけど、心はさっきよりもポカポカと温かくなった。