佐倉穂波

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1/9/2023, 12:34:48 AM

色とりどり

 君との思い出に色を着けてみることにした。


 薄桃色は、恋人時代の甘酸っぱい思い出。
 青色は、仲違いをして涙を流した日の思い出。
 黄色は、恋の好敵手出現にヤキモキした時の思い出。
 赤色は、君を愛しいと想った日々の思い出。

 色とりどりの、君との思い出たちが心を埋め尽くしていた。
 僕は、こんなに沢山の思い出を君と紡いで来たんだね。

 一番新しい青色の記憶を、赤色に更新するために、僕は君のもとへ向かった。

1/8/2023, 8:44:43 AM



「寒っ」
 肌を刺すような北からの風に体を縮める。まだ新年を迎えたばかりだ。これからも寒い日が続くことを考えると、気が滅入る。
 幼い頃は、こんな寒い日でも薄着で外を駆け回っていたはずなのに、今ではコートやマフラーなしに外に出るなんて考えられない。
「年を取ったってことかなぁ」
 まだまだ若いと思っていたが、年の流れを感じてしまった。
「新年早々、こんな辛気くさいこと考えてちゃダメよね……」
 そう思うが、呟く声に覇気はない。
 きっと新年の集まりで、従姉妹や叔母さんたちから「恋人はいないの?」「結婚はまだなの?そろそろ行き遅れになるわよ」などの遠慮ない発言により、メンタルを削られたからだろう。
 確かに恋人はいない。良い出会いがあれば結婚もしたいと思う。反面、出会いがなければ独身を貫いてもいいと考えていた。
 しかし「女は結婚するのが当然」と考えている親戚が多く、ここ数年、親戚の集まりでは肩身の狭い思いをしていた。
「あー、何かいいことないかな……あ、雪だ」
 白いものが視界をかすめたと思ったら、雪が降り始めた。
 寒いのは嫌だけど、雪が風に舞う様子を見るのは好きだ。
「少し散歩して帰ろ」
 滅入った心が少し浮上した気がした。

1/6/2023, 1:46:51 PM

君と一緒に

 神様から提示された選択肢は二つ。

「心優しい貴族の子供に一人で生まれ変わる」か「寒く廃れた路地裏に孤児として二人で生まれ変わる」か。

 どちらを選ぶか?
 そんなの決まっていた。
 来世でも君と一緒に生きられるのなら、そこがたとえ地獄だって構わない。
 君が居ない世界に意味はない。

 だけど、その選択を君に押し付けるつもりはないんだ。君がもうひとつの選択肢を望むのなら……僕は、それを受け入れるよ。

1/6/2023, 4:38:08 AM

冬晴れ

 窓辺に座り、暖かい日差しを浴びる。
 夏のギラギラしら日差しとは違い、冬の日差しは穏やかで、ポカポカと温かいぬくもりに包まれた。

 雪景色を眺めていると、買い物に出掛けていた彼の姿が見えた。
 コートのポケットに両手を突っ込み、寒そうに体を縮めながら、玄関に向かってくる。
 すぐにガチャッと玄関の開く音がした。
 私は立ち上がり、彼の元へ向かった。

「あー、すごい寒かったっ」
 玄関から入り込んできた外の風は、ひんやりと冷たかった。一瞬でも寒いと感じるくらいだ、外はとても寒かったに違いない。
「おかえりなさい」
 そう言いながら彼にピトッと引っ付く。
「おぉ、温かいな」
 暖をとるように、ぎゅっと抱き締められる。
 日差しを浴びて温まった体は、冷えた彼で冷めていったけど、心はさっきよりもポカポカと温かくなった。