佐倉穂波

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「寒っ」
 肌を刺すような北からの風に体を縮める。まだ新年を迎えたばかりだ。これからも寒い日が続くことを考えると、気が滅入る。
 幼い頃は、こんな寒い日でも薄着で外を駆け回っていたはずなのに、今ではコートやマフラーなしに外に出るなんて考えられない。
「年を取ったってことかなぁ」
 まだまだ若いと思っていたが、年の流れを感じてしまった。
「新年早々、こんな辛気くさいこと考えてちゃダメよね……」
 そう思うが、呟く声に覇気はない。
 きっと新年の集まりで、従姉妹や叔母さんたちから「恋人はいないの?」「結婚はまだなの?そろそろ行き遅れになるわよ」などの遠慮ない発言により、メンタルを削られたからだろう。
 確かに恋人はいない。良い出会いがあれば結婚もしたいと思う。反面、出会いがなければ独身を貫いてもいいと考えていた。
 しかし「女は結婚するのが当然」と考えている親戚が多く、ここ数年、親戚の集まりでは肩身の狭い思いをしていた。
「あー、何かいいことないかな……あ、雪だ」
 白いものが視界をかすめたと思ったら、雪が降り始めた。
 寒いのは嫌だけど、雪が風に舞う様子を見るのは好きだ。
「少し散歩して帰ろ」
 滅入った心が少し浮上した気がした。

1/8/2023, 8:44:43 AM