【小さな命】
1匹、蟻を潰してしまった。
蟻が大行列を作り移動している中、うっかりその中に足を突っ込んでしまったのだ。
スニーカーの底は隙間が多いから、大体の蟻はひょいひょいと器用に横から出てきていた。
でも、1匹だけ。もう、動かなかった。
一瞬、ぺちゃんこになった蟻を見て、心がずきりと傷む。
次の瞬間、自分が思い切り遅刻していることに気づいた時には、もう心の中にその蟻は居なかった。
次の日、また蟻は行列を作っていた。
そこでやっと、俺は自分が奪った命について思い出した。
あいつの遺体はもうそこには無い。
もしかしたら、他の蟻の餌にでもなっているのだろうか。
きっとこの蟻たちも、あいつのことなんて覚えてないんだろうな。
多分自分も、明日になったら忘れてる。
だからせめて、あいつの生きた証をここに残せたらいいなと思った。
ちっぽけで、弱くて、可哀想だったけど、それは確かに命だったって事を。
【Love you】
愛、というのは案外難しかったりする。
友愛、性愛、慈愛、恋愛、隣人愛…本格的に調べるとそれ以外にも沢山ある。
どれを誰に抱いているのか、どれとどれが入り混じっているかなんて正直分からない。
そもそもどこまでが愛で、どこまでが愛じゃないかなんて分からない。
傷つけたいのも、慈しみたいのもきっと愛なのだろう。
私があなたに抱いているコレは、何なのだろうか。
憎しみもエゴも、妬みも僻みも何もかもごちゃ混ぜだけど、
多分、コレも愛なのだろう。
あなたは、受け取ってくれるだろうか。
【太陽のような】
彼女は太陽みたいな人だった。
明るくて、熱くて、暖かくて。目の前に居なくても、必ず世界のどこかには存在している。そう思わされるほど彼女には存在感があって、絶対的な人だった。
太陽だなんていう明らかに逸脱した存在に喩えられてしまうのも、また彼女だからかもしれない。
私は、気がついたら直射日光の中に居た。冷たくピンと張った夜の空気しか知らない、私が。
夜しか知らなかった私は、夜明けを知り、朝を知り、昼を知った。
そして、日没も知ってしまった。
消える瞬間すら、やはり彼女は美しかった。
彼女は太陽なのだ。日は沈んでも、いずれ明日は来てくれるだろう。
私はあれからずっとその時を待っている。
老いさばらえた私は、もしかしたら焼け死んでしまうかもしれないけど、それでもいいと思った。
処女作、今見るとぎこちないし恥ずかしすぎて消しちゃった
すみません…