どうすればいいの?
突然なイレギュラーに「どうすればいいの!?」とパニックになってしまう私に彼はいつも穏やかに言う
「大丈夫、焦らなくていいんだよ
深呼吸してー」
彼の掛け声に合わせて深呼吸をするとだいぶ落ち着く
「ありがとう」
「どーいたしましてー」
私のお礼に間延びした返事にクスッと笑ってしまう
私達は今までもこれからも助け、助けられて生きて行く
キャンドル
子供達を寝かし付け、ようやく自分時間が訪れる
(今日は寝かし付けに手こずったな…)
んー、と腕を上に上げて伸びをする
背中や腰が鳴ってだいぶ凝っていた事を自覚する
リビングテーブルに癒しセットを入れているケースを持ってくる
椅子に座るとケースから小皿とアロマキャンドル、マッチをテーブルに出して小皿にアロマキャンドルを乗せる
マッチでキャンドルに火を付けるとラベンダーの香りが鼻をくすぐる
「よし!」
気合いを入れると日記帳を取り出し、日記をつける
好きな香りを楽しみながら1日の振り返りができるこの時間が癒しだ
秋風
「だからってありえないわ!!」
バンッとテーブルを叩く音と女性の怒鳴り声に思わず振り返ってしまう
「あーぁ、おしどり夫婦って言われるぐらい仲良かったのに…」
「あの2人にも秋風がたったね…」
隣に座る友人とそんな事を話す
どんなに仲が良くてもなにかのきっかけで亀裂が入る事もあるだろう
その亀裂が修復するのか深くなるのかはお互いの言動によるだろう
脳裏
何かを新しく始める時に必ず脳裏によぎる言葉がある
それは『お前には出来ない』だ
呪いの様なこの言葉から開放される時は一体いつなんだろう
眠りにつく前に 永遠に
「愛してる…」
唯斗が永遠の眠りにつく前、掠れた声で言ってくれた言葉に「私も…」と答えるので精一杯だった
彼は私の答えを聞くと安心したように目を閉じ、20年という永遠に長くも短い人生に終止符を打った
葬式も終わり、火葬場で煙が空に登る様子を眺めていると近付いてくる人の気配を感じて振り返るとそこには幼馴染みがいた
「俺はお前を泣かせたあいつを許さない」
「また喧嘩でもするの?」
煙が登る空に向かって宣言する旬を揶揄うように言う
「おう!
今度は負けないからな!」
至極真っ当な顔で言うに思わず吹き出してしまった
「やっと笑ったな…」
微笑む彼にはっとした
唯斗が亡くなってから笑っていなかったことを旬に言われるまで気が付かなかったことに
「これで唯斗も安心するだろ」
「そうだね」
煙が登る空を旬と並んで見上げる