11/10/2024, 10:46:17 AM
今日の夕飯は何を作ろうか。
冷蔵庫に残る野菜のかけらを指折り思い出しながら家路を急ぐ。時刻は19時を過ぎている。
つい数日前まで残暑を引きずったかと思えば、すっかり秋めいた肌寒い風が袖の隙間に入り込む。
日が落ちるのが早くなり、辺りは薄暗い。
もう鍋が食べたい季節だな、などと考えながらスーパーへ続く角を曲がると、右手の小さな空き地にススキが群生しているのが目に留まった。
昔よくここでススキを採って遊んだな。
柔らかい穂先をすべらせて、猫じゃらしのように手の甲をくすぐったり。
ひとしきり遊んだら、穂先を一つ一つ扱いたり。
幼い頃は目に入る植物どれもに興味を惹かれたが、中でも秋にだけ出会えるふわふわの穂先には、一際夢中になったものだった。
ススキが目に入っても注意を向けなくなったのは、一体いつからだっただろうか。
歩みを進めると、スーパーの強い蛍光色の明かりが店内から漏れて視界を照らす。
えーと、厚揚げ豆腐は一番手前の冷蔵コーナーに……
ススキの感傷から鍋の具材に意識を移して、見慣れた自動ドアをくぐった。
11/10/2024, 4:47:09 AM
脳裏によぎるのは、今までに恋仲になった誰かや、優しい友人達、家族の笑顔だ。
誰かを喜ばせる自分で居たい。
人を笑顔にしたい。
そんなシンプルな願いが、私の根幹にあるのだ。
一方で、幼い私の声が腹の奥から絞り出すように響く。
愛されたい。
受け入れられたい。
無条件に受け止めてほしい。
叶わないと分かっていても、求めずにはいられないのだ。
人は誰も皆、思い通りの人生は生きられない。
容姿も、出自も、才能も、声も。自分の思惑なんてお構いなしに設定され、形作られていく。
それでも自分を受け入れて、誰かを好きになって、何かを慈しんで生きていく。
その営みにこそ温かい希望が宿るのだと、私は信じたい。