さらだばー

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2/1/2026, 12:15:19 PM

ブランコ

キィ…キィ…

古びた公園。地面を蹴って漕ぐたびにブランコが錆びた奇妙な音を立てる。
ここには誰もいない。サッカーをする小学生も、イヌの散歩をする大人も、いない。たった一人、あたしだけ。
鳥の鳴く声、近くを通る車の音、風で揺れる木の葉。
最初はうるさかったが、毎日ここにいるせいで、耳がすんなり受け入れるようになってしまった。
ここにいる理由はたったひとつ。
他県に転校してしまった幼馴染と、再会するため。
あの頃は小学生だったから、ぼろぼろに泣きながらここで絶対また会うと約束したけど、あの頃は人も多かったから思い出すと恥ずかしくてしょうがない。
あたしにとってその人は憧れで、かっこよくて、頼りになる人だ。
…まだあのときは気づいていなかったけど、あたしはあいつのことが好きらしい。それが恋愛的なのかは…あんまり考えたくないけど。
昔、よくお互いに背中を押し合いしたり、どちらが高く漕げるかの勝負をしていた。この公園のブランコは、あたしとあいつにとって思い出の場所。
あいつのことを考えだしたらキリがない。だからいつも考えるのをやめる。
会いたくて会いたくて、苦しくなるから。

ふと気がつくと、そろそろ暗くなる頃だった。高校の制服のスカートの端を持ち上げ、カバンを持って立ち上がる。

「…今日も、来なかった」

あたしはうつむき、砂場にあいつの似顔絵を描く。
こんな感じだった。目元にほくろがあって…笑顔が…

「…今はもっと可愛いのかな」

そんなこと考えたって、会えるわけないか。似顔絵を消して家へ帰ろうとした、そのときだった。

「あれ、消しちゃうの?それ。」

黒いサラサラの髪に目元のほくろ。綺麗な指先にふわっと香るいい匂い。間違いない。
そのとき、あたしは咄嗟に彼女に抱きついた。

「…っ…遅い…!何年ここで待ってたと…!」

あたしの目からはは何故か自然と涙が出てきた。
ああ、会いたかった相手が目の前にいる。

「そんなに泣く?まあ、私も会いたかったけどさ」

「泣くに決まってんじゃん…!」

彼女の胸に顔を埋めて、心を落ち着かせる。
だめだ。ドキドキして破裂しそう。

「…ごめんね、待たせて。ただいま」
「こらこら、可愛い顔が台無しだよ」

そう言って涙を指で拭う彼女の手を引っ張り、ブランコの近くに行く。

「どっちが高く漕げるか勝負ね。あんたが勝ったら許してあげる。」



そう言って漕ぎ始めた二人は、楽しそうに笑っている。
まるで、数年前に戻ったみたい。

あたしが安堵していると、思わず手が滑った。

「ぅわぁっ、!?」

頭を地面にぶつける覚悟で前に倒れ込むと、なぜか身体が浮いていた。…いや、正確には、お姫様抱っこされていた。

「危な…全く…ほんと私がいないと駄目なんだから」

…ああ、駄目みたい、私

彼女のことが、好きでたまらないや。
思い出のブランコの前、あたしは世界一の幸せ者だった。