「ここは、夢と現実の間の世界。」
鏡は言った。
「え?」
「あなたがこうなりたい、と思った方向に、私は導く。例えそれが、マイナスのことでも。」
「どういうことだ!?」
「こうなりたくない!と願えば、なりたくないというその思いを、強く受け取ってしまう。だから、こうなるといいなという、イメージを大切にしなさい。」
「なるほど、イメージか……」
明須海は、手にした鏡をもう一度見た。
【夢と現実】
「冬のはじまりだね。」
照花は言った。
「そうだな。」
目の前の鮎川からは、白い川霧が立ち込めている。寒い朝は、いつもこうなる。
コンビニで買ったコーヒーを飲みながら、俺は1人感慨にふけった。
ほんの一年前まで、俺は自分が神社を継ぐことなんて、まったく考えていなかった。
【冬のはじまり】
「愛情?そんなもの、あるわけないだろ。」
「強がるなよ、お前……。あの子がいなくなってから、自分がどんな顔してるのか、見たことあるのかよ。」
「え?」
「しみったれた顔しやがって。迷惑なんだよ!」
「なに?!」
「悔しかったら、ちゃんと自分の気持ちを伝えてみろ!!」
「……!」
【愛情】
「冬になったら……この種をまこうか。」
明須海は、ボソッと言った。
「冬に?なんで冬?」
と、照花は答えた。
「だって、春になったらお前はいないだろ?だから、冬に一緒に蒔きたいんだ。」
「よくわかんないけど……今じゃダメなの?」
「ダメだ、秋なんて。」
「?」
「秋、は飽きるんだよ。だから、冬に蒔く。」
「はあ……。」
照花は、やれやれと肩をすくめた。
【冬になったら】
「僕らが出会ったことは、意味がないことなんかじゃないよ。そうだろ?」
「でも、たくさんの人が死んだ。私たちは、何も出来なかった……。」
「そうかな。」
真斗は、首にかけたネックレスを、外した。暗闇の中で、わずかにボウッと光っている。
「これが光っているということは、まだ近くに、仲間がいる証拠だ。」
【意味のないこと】