絶対に開けてはいけないよ
ソコにあるのは──────
男の子は言いました
「ここは楽園だ」
「ここに不幸は存在しない」
「でも…ここに自由はない」
男の子は思います
自分の意思などなく、ただこの小さな箱庭で息をする。ソコに何の意味があるんだろう。男の子には考えても分かりませんでした。でももし、何かが変わるその時がきたら…迷わずそれを掴まなきゃいけない。それだけはなんとなく漠然と感じていました。
その箱を見つけた時、男の子は思いました。今、なんだと。その時が来たのだと。でもそれと同時に、何か大切なことを忘れている気がしました。
それでも男の子は、迷わずその箱を開けました。
そして、はたと思い出しました。それは約束です。ここで暮らす上で、絶対に破ってはならない、たったひとつだけの約束です。
その箱を絶対に開けてはいけないよ
…そのパンドラの箱を
男の子がその言葉を思い出すのと同時にその箱から
……パンドラの箱から、世界の厄災が、不幸が飛び出して来ました
開けてはいけないよ
男の子は後悔しました。破ってはならない約束でした。たったひとつだけの約束でした。もう元に戻ることはないのでしょう。もう取り返しがつくことはないのでしょう。
それが男の子の最初の罪でした。原罪でした。
【今日の心模様】
今日は小説を書こう
そう思い立ってスマホを開いた。
今日は曇のち雨のどんよりとした天気だが、私は過ごしやすくて好きだ。空気が冷んやりしていて、心做しか何時もより、世界が静かな気がしてくる。こういう日は心が穏やかに、思考がクリアになる。
勿論、晴れの日が嫌いな訳では無い。晴れているとそれはそれで空が綺麗で、見える景色が色鮮やかになる。でも、忙しない日常を送る上で、曇り空というものは束の間の休息を与えてくれるのだ。
スマホの液晶には沢山の文字が踊っている。
今日も上手く書くことが出来たようだ。
ふと、満足して閉じた真っ黒な液晶には、満足そうな笑顔が写っていた。