絶対に開けてはいけないよ
ソコにあるのは──────
男の子は言いました
「ここは楽園だ」
「ここに不幸は存在しない」
「でも…ここに自由はない」
男の子は思います
自分の意思などなく、ただこの小さな箱庭で息をする。ソコに何の意味があるんだろう。男の子には考えても分かりませんでした。でももし、何かが変わるその時がきたら…迷わずそれを掴まなきゃいけない。それだけはなんとなく漠然と感じていました。
その箱を見つけた時、男の子は思いました。今、なんだと。その時が来たのだと。でもそれと同時に、何か大切なことを忘れている気がしました。
それでも男の子は、迷わずその箱を開けました。
そして、はたと思い出しました。それは約束です。ここで暮らす上で、絶対に破ってはならない、たったひとつだけの約束です。
その箱を絶対に開けてはいけないよ
…そのパンドラの箱を
男の子がその言葉を思い出すのと同時にその箱から
……パンドラの箱から、世界の厄災が、不幸が飛び出して来ました
開けてはいけないよ
男の子は後悔しました。破ってはならない約束でした。たったひとつだけの約束でした。もう元に戻ることはないのでしょう。もう取り返しがつくことはないのでしょう。
それが男の子の最初の罪でした。原罪でした。
4/24/2024, 10:57:39 PM