[今を生きる]
やぁ、少年少女紳士淑女の皆様
今を生きておられる全ての皆様
ワタクシに連れて行かれても後悔のないよう
今を楽しく、美しく、儚く、綺麗に
今を生きてきてください
そしてワタクシに
皆様の全てを奪わせてください
「飛べ」
絵の具がこぼれたような青い空に
一つ、またひとつ白い何かが舞っていく。
僕の前には はらはら と ふわふわ と落ちる
白い翼の一つがあった。
真上を見ると樹の実のように小さな
小鳥がいた。
他の鳥は巣立って残され、ひとりぼっちのよう
何処か既視感があった。
ははっまるで僕じゃないか!
僕のようになってはいけない、羽ばたけ!
遠く遠くまで舞え!消えてしまえばいいんだ!
見えなくなるまで飛べ!
「Special day」
今日は特別な日
私は一生忘れない
いらっしゃいませ
今日がお客様にとって特別な日になりますように
真っ黒なワンピースを纏った人が迎えてくれた。
当店では様々なサービスがございますが
本日のご予約はこちらでよろしいですか?
彼女の手が指す方には1つの扉があった。
では、こちらが鍵となります
お楽しみいただけますように
鍵には赤いリボンと「MEMORY」と書かれたプレート が付いている、鍵を差し込むと、かちゃりと軽い音がして
ゆっくりと扉が開いた。
あ、おかえり、今日は遅かったね。
そこには、見慣れたでも懐かしいあの人の姿があった。
どうかしたの?今日は君の好きなグラタンだよ
赤いミトンを身に着けた彼は今できたグラタンを机に運ぶ
ほら、食べよ?熱いうちにね
あなたはそう言って椅子を引いて手を差し出す。
はい、今日は特別な日だからね
グラスを私の手に握らせる
乾杯、今年も大好きだよ
顔を赤くしながら、でも堂々と言ってくれた。
グラタンを残さず食べ、ソファに腰掛け映画を見た。
彼が笑顔で話す
実はさ、渡したいものがあるんだ
彼の手には小さく、特別な箱が
僕と一生を共にしてほしい
嬉しかった、手に取った、頷いた。
その夜は一生忘れることはないだろう。
夜中に彼が言った
牛乳買ってくる!グラタンで使い切っちゃってたよ
だめ!行っちゃだめ、ここにいてそう願った、ねだった。
どうしたの?牛乳買ってくるだけだよ
明日の朝ごはん、フレンチトースト作ろ?
それでもだめ、だめなんだ、じゃないとあなたは
いなくなってしまう。
この日、彼は私のために買い物をしにいった。
そして、逝ってしまった。
スーパーで無差別殺人が起きて襲われた人を庇ったらしい
彼らしい、優しい彼のすることだ。
今日は、この日は
彼にプロポーズされた日で彼が亡くなった日
とってもとても、大事で特別な日
きっと、ずっと忘れない
忘れられない
「揺れる木陰」
葉が揺れる
緑色の葉が光る
葉っぱが風で散りゆく
吹く 君の頭に葉が乗る る
君が手を振る 散
木
風 の 葉 葉
幹 君
青緑の草花たち
昨日の雨で 土も草も露で 湿ってる
香る 緑、青や土臭さ目をつぶり 草の匂い
…真昼の夢…
歩いてる、見慣れた景色、
家の中、教室、通学路、会社、実家、近所の店
身体、軽い、ふわふわ、重い、動き、鈍い
目的ないまま、動く、
急に
暗くなる
台、持つ、置く、乗る
なにか、手、伸ばす
硬い?、脆い?、明るい?、暗い?
降りる、降りよう
と
し
た
が
く
っ
寝てたのか…