だってうさぎは鳴かないもの
なぜ彼女はときどき堰を切ったように泣くのだろう?
やはりもう彼と永遠に交わることは出来ないからではないかしら。
昔はずうっと一緒だったと聞いてるわ。
離れてだいぶ経つけれど、ときどきどうしようもなく思い出してしまうらしいのよ。彼を思うがゆえの、涙の海ね。
まるで泣かない日もあるね
それはそれで、灼熱の愛があらゆるものを焦がすのね
かつて彼に向けて流した涙もきっと枯れてしまうのだわ
どうにか中間をとれないものかな…
空の機嫌なんて誰にもとることができないわ
彼女はいつだって、お天気屋なんだから…
燃えるゴミ 燃えないゴミ 資源ゴミ そしてたまにイベント
プラゴミ 瓶 危険物 そしてたまに三連休
祝日がある月 祝日のない月
うんざりね でも素敵に彩られたあたしのカレンダー
突然にぽかっとあいたその場所は
どこからともなく風が吹いて、灯りもなく、
当然のように温度もないところになった
何となしに手持ちのガスライターで照らそうとこころみる
風がひゅうひゅうとふきつけるので 手で守りながらぱちんと点ける
遮断されたなかで点いたその灯りは、私のてのひらだけを照らし、てのひらだけを暖めた
浜辺の散歩
小さく数学的に渦巻いたそれは、耳に当てれば海の音がする。
あそこに落ちていたのはほの紅い二枚貝。
割れて一枚になっている。
光に透かせばまるでオパールのような波紋の煌めきを見せた。
貝殻の横には透き通ったスカイグリーンのグラスが落ちていた。
いったいどんな場所を旅してきたのか、不規則にころころとしたかたちをしている。
綺麗だ。
家に持ち帰ろうと手を伸ばしかけて、私はふと、自室に置いた彼らのことを想像した。
彼は私の部屋でも海の音を聞かせてくれるだろうか?
この薄紅の貝殻の、日に透かしたきらめきは、
淡い海と空のいろをしたグラスの来し方は、私の部屋という狭い空間で輝けるのだろうか。
逡巡するうちに陽が落ちてきた。
水面が夕陽にきらめいて、その光をまた彼らが反射する。
そうだ、私はこの今の光景を美しいと思ったのだ。
陽が完全に落ちるまで、彼らの光を眺めていた。
その光も段々と消え、夜闇にまぎれて見えなくなった頃、私はようやく浜辺から離れ、光る思い出だけを部屋に持ち帰ったのだった。