誰も知らない秘密。
私も知らない秘密。
じゃあ誰が知ってるの?
知ってる人がいないんじゃ
秘密じゃなくなる。
#588 誰も知らない秘密
やさしくしないでって
言ってるでしょ。
イライラするのよ。
もっとしかってよ。
もっと突き放してよ。
私のこときらいになってよ。
…彼の前では
素直になれない
私はあまのじゃく。
#577 やさしくしないで
机の奥に何かある。
引っ張って見ると
白い縦長の封筒。
宛名も差出人もない。
中には手紙らしきものが
入っている。
糊付けされていない封筒から
2,3枚に折られた手紙を出す。
そして手紙を広げ読んでみる。
こういうシーンを
ドラマや映画でよく観る。
封を開けるところから
目が離せない。
瞬きもしない。
手紙を読む本人も
それを観ている側も緊張感が漂う。
それだけ隠された手紙は
ミステリアスに満ちている。
#566 隠された手紙
まだ知らない君
まだ知らないあなた
はじめまして
かきくけ子と申します。
会えるのはあと何日後
いや、何年後かもしれない。
ひとの縁はわからないもので
どこで繋がるか
それとも行き違いで
近くにいるのに
一生繋がらないかもしれない。
だから
私は出会った縁は
大切に繋げていきたい。
#558 まだ知らない君
あっくんはおもちゃを
壊してしまいました。
どうしよう
ショーケースの中にある
ヒーローマンの人形の腕が
床に転がっています。
お兄ちゃんがとても大事にしている
お人形です。
触るなって言われてたけど
かっこよくて
眺めているだけでは
がまんできず
あっくんはショーケースの扉を
開けてしまいました。
ヒーローマンを右手に持ち上げ
ヒーローマンと同じ
ポーズをしました。
腕高く上がったヒーローマンの腕が
本棚の角に当たったのです。
どうしよう
慌てて元に戻そうと
ショーケースに入れました。
腕は足元に置いたまま。
お兄ちゃんは夜には帰ってきます。
どうしよう
お母さんにも話していません。
お兄ちゃんの怒った顔を
想像してしまい
夕飯のハンバーグも
残してしまいました。
布団の中であっくんは思いました。
ごめんなさいって言おう
謝るしかないことを
あっくんは知っています。
小さな勇気を
ヒーローマンは待っています。
…続く
#548 小さな勇気