今年も一緒に年を越せそうで幸せです
大事な人たちと1年を締めくくれるのは嬉しいです
これからも冬だけといわず、春も夏も秋も一緒に感じて
少しずつ、歳をとっていくあなたの隣で歳をとりたい
『やぁ、最近どう?』
先輩がフワッと唐突に話しかけくる。
特に興味もないだろうに、何となく話しかけてきたぐらいだろうか。
『まぁ、、変わりないっすねぇ』
話の始まりがあんまりなもんで、自分も、パッとしない答えになってしまう。
『そっかぁ、まぁ毎日何かあっても大変だもんなぁ』
先輩はタバコを吸いながら天井を見上げて言う。
僕たちは会社の喫煙所でいつも顔を合わせるぐらいの仲だ。
会社は一緒でも仕事上あまり関わりを持たない他部署の
先輩、後輩みたいな関係だ。
ただ、喫煙所で顔を合わせると特に用事がなくても話す。
『そーいやこの前、タバコやめるって言ってなかった??
やめないの??』
また、急に話題を振ってくる。
『確かに言いましたけど、無理でしたよ? 二日間はやめられたんですけどねぇ、、仕事の休憩の時、タバコを吸わなかったから何をしていいのかわかんなくなっちゃって』
半分は本当だ。
もう半分は・・・
『わかるぅ〜、タバコ吸わないんだったら休憩いらないから
早く帰りたいよねぇ〜』
先輩はまだ天井を見てる。
もう半分は先輩と話してる、この何とも言えない・・・
とりとめもない話がなんとなく落ち着くんだろう。
特に意味はないけど何となくこの時間が好きなんだろう。
会社の喫煙所っていろんな仕事の情報が転がってるけど、 先輩の話にはなんの情報もない。
だからこそ、自分には心地よいのかもしれない。
タバコ、やめられないなぁ
12月になり、外歩く人たちの服装もそれらしくなってきた。
コートやダウンを着ている人たちを見ると、今年ももうすぐ終わりだなんて毎年感じちゃってる自分に重ねてきた歳を感じる。
雪が積もったら子供は喜ぶだろうなぁ。
大人はあんまり嬉しくないんだけどもさ。
でも子供たちが朝起きて、カーテンを開けた時に雪が積もってるのを見た時の無邪気な笑顔ったら。
歳をとったからこその新しい喜びなのかもしれない。
雪、早く降らないかなぁ。
気にしないで
大丈夫だよ
ツライのに、大丈夫じゃないのに、傷ついてるのに、
平気なフリをして笑っている。
きっと、
少しでも優しさに触れると涙が止まらなくなってしまう。
みんなに心配を掛けてしまうかもしれない。
そんな事で弱音吐くの? なんて事を言われるかも。
限界を超えているかもわからない。
でも、まだ我慢できるかもしれない。
だから、何でもないフリをする。
みんなは知らない。
気持ちは辛い、苦しい、助けてほしい。
でも、口から出る言葉は
『なんでもないよ』
また、何でもないフリをする。
夕焼け小焼けなんて歌をおもわず思い出しそうな帰り道に、
僕の隣にいてほしかった。
あの日、勇気をだして一歩踏み出していたら
今も隣にいてくれたのかなと考えて、
『ハァ〜、、何を今更・・』
独り言にしては大きな声だったかな。
前を歩く君に聞こえるようにそう呟いたんだけども、
君はこっちをチラリと見て、何も聞こえなかったかのように隣にいる男にまた話しかけている。
半年前までは隣にいる男が自分だったはずなのに・・・
君はなぜ、あんな男を・・・
ケンカのキッカケなんて大したことなかったはずなのに、気づけば僕たちは別れていて、気づくとあの男が隣にいるようになった。
特別な関係では無いらしいと共通の知り合いから聞いたが・・・
君の手を掴んで、どこか遠いところまで走り去ってしまいたい。
そんな気持ちになろうとも、そんなことができるほど僕はバカじゃない。
『ん・・・』
ある疑問に、つい言葉にならない声が口から漏れた。
一体、どっちがバカなんだろう・・・
君に何も伝えられず、ただ想像することしかできない自分と、
君の手を握り、隣にいる男を振り払って走り去ってしまいたい自分と、
『どっちも、バカだなぁ』
半笑い、うすら笑い、呆れ顔、なんとも言えない表情と感情で自分で自分を見つめ直してみる。
同じバカなら、後悔したくない。
諦めて、ただ見てるだけなんて嫌だ。
やるべき事が何なのか、視界が晴れた気がした。
『クソっ、、僕って思ったよりもバカだな』
汗で冷たくなった僕の手が君の手を繋いで走る。
隣にいたはずの男は呆気を取られた顔をしてすぐに慌てた様子になっていた。
いま君はどんな顔をしてるだろうか。
いま僕はどんな顔をしてるだろうか。
僕も君も、笑っていたらいいな。
でも君の手は、確かに僕の手を強く握り返してくれている。
『ずっと・・・ 待ってたんだよ』
下を向きながら、息も絶え絶えに君が呟く。
あぁ・・・
この声を隣でまた聞けるなんて。
太く低い声で優しく笑っている。
僕の隣で彼が笑ってくれている。
僕と彼
男女のカップルではないんです。
無意識に男女だと思ってた人がいても、それも多様性です。