「揶揄わないで」
どうしたら分かってくれる?
「またまた」
何故伝わらない?
「気の迷いだよ。尊敬と恋慕を勘違いしてるだけ」
どうして...何故そんな事言うんだ。
「子供には分からないよ」
:
:
「お久しぶりです。元気でしたか。あれから何年も経ちました。給料も沢山もらえるようになりましたし、マンションも買いました。自分で言うのもアレですが体型もキープしています。他に何か要望があるならできる限り答えます。もう子供じゃない、俺にはずっと貴方だけだ。昔も今も、貴方のことがずっと好きです。付き合ってくれませんか」
#本気の恋
1.2.3.....と数えてみる。
ハートのマークまであと5日。
当日着る服も用意した。レストランの下見だってバッチリ。
今日は美容室に行って髪少しきって整えてもらった。
プレゼントも買った。彼女の好きな色で綺麗にラッピングしてもらった。
1.2....と数えてみる。
ハートのマーク、誕生日まであと2日。
喜んでくれるだろうか。
彼女の好きなブランドのネックレスと、それから指輪に。
#カレンダー
最初は耳を疑った。それから直ぐに喜び。
見た目には変わりはないが確かにそこにいるのだという証の写真を見つめる。
見た目にも分かるようになった頃、触れていた手のひらに振動。じっと澄ましていなければ分からない程度だが愛しさが湧き出してくる。
はっきりと突き出した腹を見ていると、もにょり、もにょりと四方八方が蠢く。一体どうなって、どこがどこを押し出しているのか。可愛くて堪らない。
まだか、まだか。立ち会いを断られうろうろと部屋の前を行き来する。断末魔のような聞いたこともない彼女の叫びに似た声だけが朝方の産院に響く。
瞬間、思ったよりも大きく生命が溢れた声と拍手の音。
初めて抱いた我が子に筆舌に尽くし難い程の気持ちが溢れ出る。
至福の至、天にも登る気持ち、歓喜の絶頂。彼女への感謝。それから絶対に守り抜いてみせるという確固たる決意。
世界に一つだけの、この宝物を。
#世界に一つだけ
耳を赤くして、眼鏡の奥に一瞬見えた瞳は誰かを思って弧を描いていた。
あんな風に目尻を下げる彼を、頬を染める彼を、見たことが無かった。
彼をあそこまで蕩けた顔にさせる女がいるのだと言う事実に胸が張り裂けんばかりの痛みを覚えた。
ドクドクドク。
不協和音のような、不安定な気持ち悪さが、不安や苛立ちを餌に全身にじんわりと侵食する。
初めて。
コレが嫉妬なんだ…
胸を締め付ける様な、
喉の奥から絞られる様な、
ぎゅぅぅっと息が詰まる苦しさを初めて感じて、
ポロっと涙が落ちた。
#胸の鼓動
窓を開けた数瞬、カーテンと、プリントと、金糸がブワっと舞った。
僕のハートがポンと跳ねて、君から目が離せない。
踊るように舞う君の髪を手で押さえてやると、近づく唇は可愛らしく弧を描いていた。
#踊るように