君への愛に溢れてる俺は君のお願いはなんだって聞いてあげられる、……と言うほど俺は大人でもなく。約束の時間を過ぎても一向に訪れない君を待ちながらため息を吐く。
もう下校の人波も落ち着いて暫く経つ、人気のない玄関。下駄箱に背もたれて座っていたがだんだんと沈んでいく気持ちと共にズルズルと尻が滑っていく、寝そべっていてももう誰の邪魔にもならないだろうそう考えながらもはや仰向けに天井を見上げていた。
忙しいのは勿論分かっている。勝手に待っているのも俺の方。それでも、蔑ろにされているんじゃないかとか、迷惑なのかもしれないとか不安な発想が頭をよぎる。
何度待たされても、不安に思っても、それでも俺がここにいるのは、俺が君を好きだから……というのもほぼ正解なのだが、君を待っている俺を見つけたとき君が嬉しそうな顔をしてくれるのを見るのがとても好きだからだ。
慌てて走ってくる足音が遠くから聞こえてきた。
さて、今日も長い時間待たせたお詫びをどう取って貰おうか?背負って家まで帰ってって言ってみる?君だって案外俺のこと大好きだから、俺への愛があればなんでもできるよね?
なんて、そんな意地悪な発想をしながら目を瞑り寝たふりをするのだった。
目を開けたとき君はどんな表情をしているか楽しみだ。
【愛があればなんでもできる?】
今から行くわというメッセージを受け、自然と緩んだ自分の顔に気付きながらスマホを置いた。
久しぶりにお互いの休日が重なった日。俺もそれなりに忙しく過ごしているけれど、増して忙しい君は日々飛び回っているようだ。
君の好きな甘いお菓子と俺の好きな紅茶を出す準備をしながら君を待つ。
俺との時間を奪う君が抱えているそれらの存在は俺にとって大変腹立たしいものだけど、わきまえてます顔で忙しい君の側に寄り添うのです。
なんて俺って良妻賢母。
まあ、つまらない我が儘もつい言って君を困らせてしまうけれど。
今日は日々我慢していた分、たくさん構ってもらおう、構ってあげよう。そんなことを考えながら、君が来るまでの時間がゆっくりと過ぎていった。
【おうち時間でやりたいこと】
「子供のままで」
「忘れられない、いつまでも」
いきなり明日世界が終わるなんて言われたとして、多分実感なんてぜんぜん湧かなくて。
でも誰より大好きな君の元へ向かうと思う。
優しい君はきっと一緒に居たいという俺の最後の我が儘を聞いてくれるだろうし、いつもみたいにくっついてぬくいななんて思いながら本当に世界が終わるとしたらそれも悪くないんじゃないかな。
【明日世界がなくなるとしたら、何を願おう。】