雪は白いと誰が決めたんだろう?
銀でも青でもなんなら赤でも良いはずなのに。
そう呟いた俺の横で半笑いを浮かべてパック牛乳を飲む悪友。
何が可笑しい、と、自分でも少し尖った声音で咎めると余計にニヤニヤしながらヂューッと牛乳を吸い上げた。
「だってこの牛乳も元をただせば牛のお母さんの血だろう?それだって赤じゃなく白くなってんのに雪が白だとかそれ以外だとか何もお前が悩まなくて良いんじゃないか」
チョンチョンと指先でストローを弾いてまた一口。
「雪が青だったら?それとも赤だったら?この牛乳が赤いままだったら?」
言われた景色を想像して思わず口元を抑えた。
赤や青の雪原は見たくないし牛乳が赤かったら飲もうとも思わない。
「慣れてないから気持ち悪いだろ?雪が白いってのはそう言うことさ」
どう言う事か聞かなくてもこいつの言いたいことは感覚で解る。
誰も決めてないけど雪は白、それで良い。
街中が浮かれているな…イルミネーションを見ながら笑う。
自分だってこの場所に出てくるぐらいには楽しんでいるのに。
去年は大勢で騒いでいたこの場所。
今年は明日、又同じメンツで揃う予定だと言うのに一日早く一人で来てみた。
大勢でいるのが嫌なわけじゃないし、そもそもこんな場所に一人でなんてどう考えても似合わない。
それでも世間が浮かれる夜にこのにぎやかな場所で一人静かに過ごすのも自分らしくて良いんじゃないかな。
明日、渡す予定の小さな包みにリボンをかけようと思い立ち何度も包み紙にリボンを充ててみる。
やっぱり赤いリボンは当たり前すぎる。
しかし、青いリボンも似合う気がしない。
緑、オレンジ、藍、なんなら銀。
どれが良い?
どのリボンを選べば喜んで受け取ってくれる?
店頭で悩むオレが何本も並べた内ふと目についた1本。
金地に緑の縁取りのリボン。
これならお互いの色が混ざっているし渡す為の取っかかりになる筈だ。
何度目かの聖夜に、オレのこれからの人生を捧げよう。
カランカランとドアベルが鳴る。
やっと来たかと読んでいた本から目を上げると入口で店内を探す姿が目に映った。
かなり以前の約束を忘れられていなかった事にホッとして本を閉じて軽く片手を上げる。
離れてから3ヶ月。
変わらない笑顔を浮かべて近付いてくる相手に自身も今日初めての笑みを浮かべる。
ああ、柄にもなく緊張していたんだと、この時気付いた。