「ねぇ、この海で1番素敵なところを知ってるかい?」
変なやつに声をかけられた。少しだけ、うとうとしていたので返事が遅れたが、やつは呑気なものだ。
波をちょろちょろとくすぐっている。
ずいぶんとぼってりしたやつだなとぼんやり思っていたら
「ねぇ、聞こえないのかい?」
懲りずにやつは絡んでくる。
「……知らないよ、僕は動けないからな」
ピタリと動きを止めて「そうなんだ」つぶやいた。
「…あのさ、きみのピンクの髪がキラキラゆれて、素敵だね。お土産話を持ってまたくるよ。待っててね」
やつは、こちらがうんともすんとも返す前から、重そうな体を振って陽気に去っていった。
次の日も、次の日も、やつは来なかった。もうやつから香った甘い匂いも、忘れてしまいそうだ。
海の底【たい焼きくんと桃色サンゴ】
キミに会いたくて
あの日別れたキミはもういない。
かといって僕ももう、魂になっている。
なんなら味噌汁になった。
それはもう適当な扱いだ。
わかめと豆腐になんとなく白い物体として。
どうせならメレンゲになりたかった。
キミは美味しいカルボナーラに。
いいな。いいなぁ。
来世は一緒に生まれたとしても
僕はキミになりたいよ。
美しいはつくられる
美しいはつくられる
美しいはつかえる
美しいはつかえる
美しいはつかれる
美しいはつかれる
美しいはつきる
美しいはつきる
美しいは
うつくしいは
うつくるしいは
うつくるしいは
この世界は
虚構と虚構とほんの少しの真実でできている。
好きが終わると嫌いが始まる
昨日までの好きは、途端、姿を変えて見えるが
その全てではない。
嫌いが始まれば好きは湧いてこない。
かと思いきや、嫌いの集合は執着の始まりであり
結果は好きと同様の時間を溶かしている。
真実は虚構、虚構は真実。
何を信じ何を選ぶか。
もっとうまくなりたい。
何をするにも不器用で
不完全なまま。
成したことがないから
挑戦もしなくなる。
だから
生きること
生き続けること
生き抜くこと
もっとうまくなりたい。
来世こそは
来世こそはと
今世を未練で生きている