〚眠れないほど〛
ひどく考える夜
私は1人真っ暗な部屋で泣いていた
闇や孤独に呑まれそうで、誰でもいいから助けてほしいと心の底から思った
泣いている私を誰かに見つけてほしい
そして今まで抱えてきた悩みをすべて受け止めてほしい
それだったらどれだけ楽だろうか
でも悩みや気持ちは言わないと分からない
こっちが黙ってても誰かが助けに来てくれるなんて都合のいい話はない
だから人と話すのが苦手な私は、1人で抱え込むしかない
こんな孤独を感じているのは私だけなんじゃないか
今暗い部屋で1人泣いているのは私だけなんじゃないか
こんな悩みを抱えているのは私だけなんじゃないか
不安だけが募っていく
でも実際はそんなわけない
人間は誰しも孤独を抱えているものだし、悩みがない人なんていない
自分は一人ぼっちじゃないと気づくだけのことがどうしてできないのだろう
〚夢と現実〛
「僕、大人になったら宇宙飛行士になるんだ!」
弟が無邪気に言う
私は「宇宙飛行士なんて絶対なれないよ」と言い聞かせようとしたが、大人に止められた
どうしてだろう
あまり現実に期待させすぎてしまうのもよくない気がする
〚さよならは言わないで〛
「今日は楽しかった。ありがとう。
また休みが合ったら一緒にどっか行こうね。」
デートの別れ際、彼女が名残惜しそうに僕に向かって手を振る
僕も彼女と同じように手を振る
「じゃあ、また。」
彼女は一歩後ろに下がり、最後の挨拶を口にする
「うん、さよなら。」
その瞬間、なんだか嫌な予感がした
冷や汗がどこからともなく噴き出し、本能的に嫌な予感の正体を突き止めようと五感が働く
よくよく目を凝らすと、彼女の口から出たさよならが、嘲笑うような表情でハサミを持っていた
僕は慌ててさよならからハサミを奪おうとするが間に合わなかった
さよならは僕と彼女の間にある赤い糸をチョキンと切り、突然の事態に当惑する僕を馬鹿にした目つきで見る
僕は驚きと怒りと悲しみで頭が混乱し、ただただその場に立ち尽くしていた
すると彼女が僕の方へ近づき、僕の肩に手を乗せ真っ直ぐな眼差しで言った
「赤い糸が切れても私達は心が繋がってる。
どんな困難も一緒に乗り越えていくのが真のパートナーでしょう?」
僕は彼女のたくましさに感動し、それと同時に自分の情けなさを恥じた
赤い糸は切れてしまったが、絆はより深まったように感じた
僕と彼女はほほえみ合い、「またね。」といつも通りの挨拶で別れた
その様子をさよならが悔しそうな表情で見ていた
〚光と闇の狭間で〛
右が光で、左が闇
僕は迷わず右に進んだ
だが、1年も経たないうちに闇へと引っ越した
「光は僕には合わない」と思ったからだ
それから約1年、やっぱり光へ戻ることにした
「闇は僕には合わない」と思ったからだ
1年後、また闇へ戻ろう
「光は僕には合わない」
「闇は僕には合わない」
「光は僕には合わない」
「闇は僕には合わない」
「光は僕には合わない」――――――
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〚距離〛
私と君との間にある距離は平行線のようなもので、近づくこともなければ離れることもない
離れることがないならまだいいか、と自己欺瞞にふける
でも、これ以上君に近づけないという事実は明らかに存在していて、切り離す事ができない
それに気がつく度にどうしようもなくやるせない気持ちになる