『あなたとわたし』
「ねぇ、わたし達もう出会ってこんなに月日がたったよ。記念日だね!」
一緒にBBQにも行ったし、飲み会にも参加したよね
旅行にも行ったし、一緒に勉強もしたよね
楽しかったなぁ、幸せだったなぁ
それなのに最近あなたはわたしを避けてるね
ひどいなぁ、こんなに想いあってるのにさ
たしかにあなたは最初からみんなの前ではお調子者で人気者なのに
わたしの前では中々顔も見てくれなかったし、中々喋ってくれなかったよね
恥ずかしがり屋で可愛いなぁって嬉しいような寂しいような
でも好きだからいいやって
みんなにも応援されて、ほら良く相談乗ってもらってたじゃん?幼なじみの女の子とか、大学の男友達とかに
あ、わたしの話してくれてるって1人ではしゃいじゃった
それなのに、なんで避けてるの
帰りのルートも変えちゃって一緒に帰れないじゃん
最近はあの子を誘うから2人きりにもなれないし
酷いなぁ酷いなぁ、憎いなぁ憎いなぁ、辛いなぁ辛いなぁ
好きなのになぁ
でも今日は記念日だもんね、お祝いしようね。これからもあなたと。
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「おいまた、あのこ」
「そろそろ警察行った方がいいって」
「大学入学後すぐ目付けられてお前も大変だよな」
「ストーカーって警察動いてくれんの?」
「もう引っ越す?」
「無視してんのに意味ないんだよ」
「話したくないって言っても照れ隠しだなんだーって」
「お祝いってなんだよ」
「ルート変えても意味ないって」
「写真にも写り込むし、全部の行事着いてくるし、なんなんだよ」
「あんな女のせいで毎日家までごめんな」
『街の明かり』
夜にさ、2人で散歩するのが好きなんだ。
ゆっくり流れる時間と共に進んで。
高台なんかに登ったら夜景が綺麗でキラキラしてて
めいっぱいに眩しく広がるんだよ。
そんな街を眺めながら語るんだよ。
未来、夢、希望なんかを。
ほら、キラキラして街に負けてないでしょ。
嬉しい気持ちと一緒に家へ帰って
明かりが消える頃、静かに眠りにつくんだ。
『やりたいこと』
「ねぇ、私君のやりたいことがしたい」
無邪気に笑いながら僕に話しかけてきた。
僕は少しふてぶてしく「別にいいからそういうの。」こう返事した。
僕のやりたいことってなんだよ。何も思いつかない。
僕は所謂痛い奴だろう。
この世界になんの希望も持ってない。何も期待していない。諦めに諦めて、「あぁつまらない」なんて悲観的になる。
そんな僕に飽きず話しかけてくる。それが彼女だった。
この世界全部がキラキラしてるみたいな、希望に満ち溢れてるような瞳の奥をガラス玉みたいに輝かせて近づいてくる。
僕は彼女が苦手だ。いいや、嫌いだ。
そう思わないと、僕も瞳に光を宿してしまうじゃないか。
ああ素晴らしい世界と思ってしまうじゃないか。
ばかみたいに無邪気に笑ってしまうじゃないか。
彼女を求めてしまうじゃないか。
期待したっていいことなんて無いはずなのに、だから僕は彼女を嫌う。フリをする。
それでもやっぱり今日も諦めず話しかけてくる彼女。
「ねぇ、私君のやりたいことがしたい」
そうか、じゃあ僕は「君のやりたいこと。」
少し照れながらそう流されてみた。
『朝日の温もり』
カーテンの隙間から差し入る朝日で目が覚める。
今日という一日が始まる合図。
眠い目を擦りながら僕はベッドから立ち上がる。
電気ケトルで湯を沸かし、熱々のコーヒーの香りを嗜みながら
カーテンを開け、体いっぱいに太陽を浴びる。
そのあたたかさに包まれて癒され、思わず伸びをした。
今日は休日だが、朝日にちょっかいを出されるかのように起こされたので思いのほか早起きをしてしまった。まったく。
だが気分はいい。とてもいい。ずるい温もり。欲する温もり。
じゃあ今日はお出かけでもしようか。行ってきます。