々々

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『やりたいこと』

「ねぇ、私君のやりたいことがしたい」
無邪気に笑いながら僕に話しかけてきた。
僕は少しふてぶてしく「別にいいからそういうの。」こう返事した。

僕のやりたいことってなんだよ。何も思いつかない。
僕は所謂痛い奴だろう。
この世界になんの希望も持ってない。何も期待していない。諦めに諦めて、「あぁつまらない」なんて悲観的になる。
そんな僕に飽きず話しかけてくる。それが彼女だった。
この世界全部がキラキラしてるみたいな、希望に満ち溢れてるような瞳の奥をガラス玉みたいに輝かせて近づいてくる。
僕は彼女が苦手だ。いいや、嫌いだ。

そう思わないと、僕も瞳に光を宿してしまうじゃないか。
ああ素晴らしい世界と思ってしまうじゃないか。
ばかみたいに無邪気に笑ってしまうじゃないか。
彼女を求めてしまうじゃないか。
期待したっていいことなんて無いはずなのに、だから僕は彼女を嫌う。フリをする。

それでもやっぱり今日も諦めず話しかけてくる彼女。
「ねぇ、私君のやりたいことがしたい」
そうか、じゃあ僕は「君のやりたいこと。」
少し照れながらそう流されてみた。

6/10/2023, 11:00:45 AM