彼はいつも1人部屋に引きこもって、私には想像もできない、多くの事に考えを巡らせている。
誰にも本心を明かさず、ただひたすらその天才とも言うべき采配を皆のために奮う。
彼は常日頃から皆に称賛される。あまりに人間離れした頭脳で多くの問題を解決する。
彼は誰のどんな言葉も静かに微笑んで受け止める。だから皆から慕われる。
彼は幼い頃、体が弱く内気で、周りの子達からよく虐められていた。私はその子らをいつも撃退していた。彼はとても情けなかった。言い返すことも仕返しもせず女の私に守られてばかりなんて、本当に情けない。
彼は今、皆に裏切られて1人になった。
彼はまたあの頃のように黙っていた。どんな顔をしてそこにいるのか、わからなかった。
駆け寄って肩を掴んだ。どうして怒ったり、泣いたりしないの?また黙っているの?立っているのもやっとなくらいあなたの心がもうボロボロなの、わかっているのに。私に言えばいいのに。私がどんな相手だって追っ払うのに。
「ねえ、もう泣かないで」
彼が静かに微笑んで、私を抱きしめた。
「僕の分まで泣かないでください」
少し揶揄うように、優しく囁かれた言葉に、息が詰まった。
私に守らせて。私がついてるのに。私が、何だって受け止めるのに。
息ができない程、情けなく溢れ出したものに、自分でも呆れてしまった。
この人がいないと強くなれないのはずっと私の方だった。
今夜 私のために用意されたステージ
真っ赤に色塗られた絨毯を歩くの
愛しいあなた 見てる?今まさに私が輝く瞬間
歓声が降り注ぐ 光の方へ今行くわ
極彩色の地獄を踏みしめて だからまだ終わらせないでね
これは私だけのステージ
鉄の砂漠を歩き続けて
血の海を飲み干して
絶望の霧の中を掻き分けて やっとここまで辿り着いたの
さあ階段をのぼって 花吹雪を仰いで
祝福のファンファーレが聞こえるでしょう
愛しいあなた 見てる?もうあなたのこと誰だかわからないけれど
次は私の番 勝手に終わらせないで
笑いたいの そんなに急がなくてもいいでしょう
白銀の銃も 黄金の剣も 全て捨てて
必要なのはこの身一つだけ
灰色の天国 誰もそんなものに興味ないの
私が綺麗に染めてあげるから ほらかわいいでしょう
もう終わらせないで
残ったのはこの身一つだけ